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投稿日:2025年09月04日

テーマ: 国語

中学受験国語 かくれ指示語問題の攻略④ 論説文大型記述編

みなさんこんにちは。受験Dr.の久米です。
今回は、前回・前々回に引き続き、「かくれ指示語問題」についてお話しします。

「設問や傍線部の前後にある指示語の内容を明らかにすることで解きやすくなる問題」のことを
「かくれ指示語問題」といいます。
「かくれ指示語問題」を解く手順は、
まずは指示語の内容を明らかにし、
その上で設問の文脈に沿って答える、ということになります。
前回は物語文の中型記述問題(30字~60字の記述)をやりました。
今回は論説文の大型記述問題(60字~90字の記述)を取り上げます。

例題
 言語が持つコミュニケーション機能、そして社会的知性仮説に着目すると、ヒトは音声言語に先だち、体の動きを体系化した身ぶり手ぶり、表情によるコミュニケーションによって進化適応してきたのではないかと考えられることができます。発声のための言語構造がヒトとは異なるチンパンジーでも、視覚的な伝達手段、図形文字などを用いれば、ヒトの言語的特徴をある程度満たした理解、使用が可能であることは先述のとおりです。ヒトの言語を特徴づける萌芽レベルの能力は、チンパンジーにも共有されている可能性は否定できません。そして、チンパンジーの祖先とヒトの祖先が進化の過程で分岐した後に、より効率のよい伝達手段として音声言語が誕生したと考えられないでしょうか。音声言語は暗闇でもやりとりができます。舌や喉を使うため両手が解放され、他者とコミュニケーションしながら物を操作することが同時にできます。これを「身ぶり言語起源説」と呼びましょう

問 傍線部①「これを『身ぶり言語起源説』と呼びましょう」とありますが、「身ぶり言語起源説」とはどのような考え方ですか。70字以内で説明しなさい。
(鷗友学園女子中2014 改題)

3分を目安に、この問題に挑戦してみましょう。

それでは解説です。
傍線部の最初に「これ」とありますので、この問題は「かくれ指示語問題」です。
解法にしたがって、まずは指示語の内容を明らかにしましょう。
「これ」とは何なのでしょうか。
今回の問題は、前回までと違って、この部分を探すのが少々難しくなっています。
指示語の内容なので、指示語の直前の部分を探します。
以下の4つを候補とします。
㋐「舌や喉を使うため両手が解放され、他者とコミュニケーションしながら物を操作することが同時にでき」ること
㋑「音声言語は暗闇でもやりとりができ」ること
㋒「チンパンジーの祖先とヒトの祖先が進化の過程で分岐した後に、より効率のよい伝達手段として音声言語が誕生した」こと
㋓「ヒトの言語を特徴づける萌芽レベルの能力は、チンパンジーにも共有されている可能性は否定でき」ないこと
小学生のお子さんは、とにかく直前の部分を指示語の内容とする傾向がありますので、㋐が指示後の内容だと考えるお子さんが多いと思います。
しかし、㋐が正解だとすると、「コミュニケーションと物の操作を同時にできること」=「身ぶり言語起源説」ということになります。
起源」というのは物事の起こり、物事が始まることです。
同時にできること=物事が始まることとは言えないので、㋐は不正解です。
起源」に近い意味のことばを他から探します。
似た言葉は、㋒の「誕生」しかありません。
よって、「これ」の内容は㋒の「チンパンジーの祖先とヒトの祖先が進化の過程で分岐した後に、より効率のよい伝達手段として音声言語が誕生した(52字)」という部分です。

答えが制限字数の70字のに大きく満たないので、他の部分から答えの材料を探します。
ここでヒントになるのは、㋒の「より効率のよい伝達手段として音声言語が誕生した」という部分です。
より」と書いてあるので、音声言語以前に何らかの伝達手段があったことが分かります。
伝達手段、または伝達手段と似た意味のことばを探すと、以下の2か所がヒットします。
㋔「チンパンジーでも、視覚的な伝達手段、図形文字などを用いれば、ヒトの言語的特徴をある程度満たした理解、使用が可能である」
㋕「ヒトは音声言語に先だち、体の動きを体系化した身ぶり手ぶり、表情によるコミュニケーションによって進化適応してきた」
ヒトの伝達手段について書いてあるのは㋕の方です。
㋒と㋕をまとめて答えとします。

「ヒトは音声言語に先だち、体の動きを体系化した身ぶり手ぶり、表情によるコミュニケーションによって進化適応してきたが、チンパンジーの祖先とヒトの祖先が進化の過程で分岐した後に、より効率のよい伝達手段として音声言語が誕生したという考え方。(116字)」

2か所ある音声言語を削ります。また、チンパンジーの祖先との分岐は本題ではないので、ここも削除します。

「ヒトは体の動きを体系化した身ぶり手ぶり、表情によるコミュニケーションによって進化適応してきた。その後に、より効率のよい伝達手段として音声言語が誕生したという考え方。(82字)」

ヒトの「進化適応」に関する表現をなくします。
また、「音声言語」に対比するものとして「視覚的」ということばを入れます。
「ヒトには身ぶり手ぶりや表情などの視覚的なコミュニケーションが先にあり、そこからより効率のよい伝達手段として音声言語が誕生したという考え方。(69字)」

指示語の内容がどこを指すのか迷ったときは、次の作業をして確かめを行いましょう。
①指示語の内容を指示語の代わりにあてはめて、本文を読んでみること
②指示語を短く言い換えたことばと同じ意味のことばを探すこと(今回は「身ぶり言語起源説」の中の「起源」ということば)

それではまた。
受験Dr.、久米でした。

国語ドクター