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投稿日:2025年07月28日

テーマ: 国語

中学受験国語 かくれ指示語問題の攻略③ 物語文中型記述編

みなさんこんにちは。受験Dr.の久米です。
今回は、前回・前々回に引き続き、「かくれ指示語問題」についてお話しします。

「設問や傍線部の前後にある指示語の内容を明らかにすることで解きやすくなる問題」のことを
「かくれ指示語問題」といいます。
「かくれ指示語問題」を解く手順は、
まずは指示語の内容を明らかにし、
その上で設問の文脈に沿って答える、ということになります。
前回は論説文の中型記述問題(30字~60字の記述)をやりました。
今回は物語文の中型記述問題を取り上げます。

例題
先生も小学校のときのタケシ先生が、生徒といっしょに中学の先生になったのだから、みんなの意気は天をつくようだった。先生は、もったいないほどのきれいな黒板に字を書いて、中学生たる心得、新しい教室の掃除の仕方を言って聞かせたあとで、「さあ、何かまだ聞きたいことあるか」と聞いた。
「ハイ!」勉強のときには手をあげたことのない、のトキオが言った。
「おい」と先生が指すと、
「先生、今度の遠足、どこっしや?」
シンサクを抜かして、みんなが笑った。
「おめえ、遊ぶことばかり考えてるな」先生も笑いながらったあとで、少しまじめな顔になり、「今度の春の遠足は、金のかからないように近いところにする。そのかわり、夏はハツコマ山登山だ。人生には、たのしいことも、苦しいこともある。おめえたちも、これから、人生の坂をのぼりはじめるところだ。それで、先生、考えて、記念のために登山を計画したんだ。みんな、夏までよく家の手つだいしろ」
教室の中は、ちょっとま、息をのんだように静かになって、それから、まえより大きくわア……という声があがった。
問 傍線部とありますが、先生はなぜ登山が記念になると考えたのでしょうか。文中の語を使って「~と考えたから」につながるように50字以上60字以内で答えなさい。
(女子学院 2008 改題)

3分を目安にこの記述問題に挑戦してしてみましょう。

どうでしょう、記述問題の答案、書けましたか?
今回は下に4つの答案を挙げます。それぞれの良いところ・良くないところを考え、最も高得点になりそうなものを選んでください。
答案A 人生には、たのしいことも苦しいこともあり、おめえたちも、これから人生の坂をのぼりはじめるところである(と考えたから)(50字)
答案B たのしいことも苦しいこともある人生の坂をのぼりはじめるときに、登山によって、困難を克服する強さを身につけてほしい(と考えたから)(56字)
答案C たのしいことも苦しいこともある人生の坂をのぼりはじめるみんなにとって、たのしいことも苦しいこともある登山が記念となる(と考えたから)(58字)
答案D 人生と似ている登山を経験させることが、たのしいことも苦しいこともある人生の坂をこれからのぼりはじめる中学生のためになる(と考えたから)(59字)

それぞれの答案を見ていきましょう。
この問題は「かくれ指示語問題」なので、傍線部の「それ」の内容を把握しなければいけません。
すべての答案で、傍線部の直前にある「人生には、たのしいことも、苦しいこともある。おめえたちも、これから、人生の坂をのぼりはじめるところ」という表現を使っているので、この部分はOKです。
答案Aは、傍線部の前をそのまま書き写し、読点で字数を調整したものです。
①話しかけている対象について、「おめえたち」がだれか分からないこと、
②記念になる理由について、どうして記念になるのか答案にはっきり書かれていないこと、
以上2点が減点対象です。
答案Bは、
①話しかけている対象について、傍線部と問いからはっきり分からないこと、
②記念になる理由として「困難」=「苦しいこと」についてしか書かれていないこと、
以上2点が減点対象です。
答案Cは、記念となる理由がはっきり書かれているので、そこは合格です。ただし、
①話しかけている対象について、「みんな」では誰が対象かはっきりしないこと
②「なぜ記念になると考えたのでしょうか」という設問に「記念になる(から)」と答えたこと
以上2点が減点対象です。
答案Dは、先生が話しかけている対象が「中学生」と分かります。
また、記念になる理由について「人生と似ている登山を経験させる」と書けています。、
よって、この答案が正解となります。

記述の答案を書くときには、
「本文を読んでいない人でも設問と記述答案を見ただけで状況が分かる」ように書くことを心がけましょう。

それではまた。
受験Dr.、久米でした。

国語ドクター