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投稿日:2025年12月05日

テーマ: 理科

【中学受験理科】環境問題 地球温暖化

みなさん、こんにちは。
受験Dr.算数・理科科の川上です。

中学入試の理科で毎年出題されるテーマのひとつが「環境問題」です。
地球温暖化、オゾン層の破壊、酸性雨、森林破壊──いずれも子どもたちが社会科やニュースで耳にする話題ですが、理科で大切なのは「そのしくみを説明できるかどうか」です。
今回は、地球温暖化を少し深く掘り下げてみます。

 

●温室効果とは何か

地球が生きものにとってちょうどよい温度を保っているのは、大気中の温室効果ガスのおかげです。
太陽の光は地表を温め、その地表から出る赤外線(熱)を二酸化炭素やメタンなどが吸収し、再び地表に戻すことで地球全体が冷えすぎないようになっています。
このはたらきが「温室効果」です。
しかし、人間が化石燃料(石炭・石油・天然ガスなど)を大量に使うことで、二酸化炭素の量が急増しました。
温室効果が強まりすぎ、地球全体が『保温しすぎ』の状態になっているのが、いわゆる「地球温暖化」です。

 

●温室効果ガスはいろいろある

温暖化といえば二酸化炭素が有名ですが、実際にはほかにも多くのガスが関わっています。
メタンは1分子あたりの温室効果が二酸化炭素の約20倍、亜酸化窒素は約300倍と、強い効果を持つものもあります。
冷媒などに使われるフロン類はさらに強力です。
一方で、空気中の水蒸気も大きな役割を果たしており、気温が上がって水蒸気が増えると、さらに温暖化が進む「増幅(フィードバック)」が起こります。

 

●温暖化が進むと何が起こるのか

地球の平均気温はこの100年で約1℃上がりました。
「たった1℃」と思うかもしれませんが、これは氷河の後退、北極の氷の減少、海面上昇、異常気象の増加など、地球規模の変化をもたらしています。
特に北極の氷が溶けると、太陽光を反射する白い面が減って地表がさらに熱を吸収し、温暖化が加速する悪循環が起こります。

生態系への影響も深刻です。植物の花が咲く時期のずれ、昆虫や鳥の繁殖のタイミングの変化、魚の生息域の移動など、自然界のバランスが少しずつ崩れ始めています。
こうした変化は農業や漁業にも影響し、わたしたちの生活とも無関係ではありません。

 

●入試では「なぜ?」を問われる

中学入試では、「なぜ温室効果ガスが増えると地球が温まるのか」「氷が解けるとなぜさらに温暖化が進むのか」といった因果の説明がよく出題されます。
たとえば、次のような問題です。

問:化石燃料を燃やすと地球温暖化が進むのはなぜか。

答:化石燃料にふくまれる炭素が二酸化炭素として大気に出て、赤外線を吸収し、地表の温度を上げるから。

また、「氷が解けると海面が上がるのはどんなときか」「海氷と氷河の違い」など、理科的な思考力・分析力が求められる問題も多く見られます。

 

●数字よりしくみを意識すること

地球温暖化の学習で大切なのは、数字や名前を丸暗記することではありません。
「何が増えて」「どんな性質があり」「それがどう作用して地球を温めるのか」──
この『流れ』を理解することが、どの学校でも共通して求められる力です。
入試問題では、図やグラフの読み取りも出題が見られます。
たとえば「二酸化炭素の濃度と気温の関係」などを、理屈を図から読み取る力が問われます。

 

●身近な生活とつなげて考える

子どもたちが身近にできることもあります。
電気を大切に使う、リサイクルを意識する、木を植える──どれも理科の学習内容と結びついています。
「なぜ省エネが温暖化対策になるの?」「木を植えるとどうして二酸化炭素が減るの?」
と問いかけることで、科学的な考え方が自然に身につきます。
地球温暖化は、ニュースで聞く社会問題であると同時に、「理科の基本的な法則が働くリアルな教材」でもあります。
暗記ではなく「しくみで理解する」──それこそが中学入試理科のポイントのひとつです。

それでは、今回はこれで失礼します。

受験Dr.川上亮

理科ドクター