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投稿日:2026年01月22日

テーマ: 理科

<中学入試・理科> 破傷風菌の純粋培養~2025年入試問題より~

北里柴三郎は、破傷風菌を純粋培養するために、シャーレを水素で満たして密封する方法を考え出しました。今回は北里柴三郎をテーマにした問題を紹介します。
【問題】(2025 ドルトン東京学園中より抜粋)

野口さん:1000円札の肖像となった北里柴三郎さんはどんな人なのかな。
先生:細菌学者で日本近代医学の父とも言われていますよ。
野口さん:具体的に何をしたんだろう。
夏目さん:気になって調べてみたよ。例えば、世界で初めて破傷風の原因となる破傷風菌だけを増やす純粋培養に成功したんだ。当時、破傷風患者の膿をネズミに注射すると破傷風を発症することはわかっていたし、患者から共通して検出する細菌は知られていたみたいだよ。ただその菌を培養すると他の菌が一緒に増えて単独では培養できなかったことから「破傷風菌は単独では存在できない」と言われていたんだ。
野口さん:どうやって純粋培養に成功したのかな。
夏目さん:破傷風菌は単独では存在できないのではなく、酸素を嫌う細菌であるということに気づいたことから、酸素が少ない環境で培養する装置(ア)を作ったみたいだよ。
野口さん:すごいですね。どうしてそんなに純粋培養することにこだわったんだろう。
夏目さん:そうだよね。患者から共通して検出されているだけじゃダメだったのかな。
先生:その菌が破傷風の原因となることの確証を得るため(イ)でしょうね。
夏目さん:共通して検出されるだけでは原因として確証が持てないということですか。
先生:そうですね。次の授業までにどんな実験をすればいいか、考えてみてください。

父:まずはこの問題から考えよう。

問1
下線部イについて、純粋培養された菌が本当に破傷風の原因の菌なのかを調べるためにはどのような実験をして、どのような結果を得られればよいですか。

良夫:デンプンを別の物質に変えたのは、だ液のはたらきによるかどうかを調べるときと、同じように考えればいいかな。
父:すばらしい。
良夫:デンプンの時は、唾液を加えたものと、唾液を加えないものを試験管に入れて比較することによって、原因が唾液だということを確かめたね。
父:それに倣うと。
良夫:人間を2人用意し、一方には純粋培養した破傷風菌が入っていた溶液を、もう一方には菌が入っていない溶液をそれぞれ注射して、菌が入っていたほうが発症すれば…
父:確かにその菌が破傷風の原因だと特定できる。問いに対する答えとしては成り立っている。ただ微妙なラインだ…
良夫:なんで。
父:現代の医療倫理からすると、うかつに人体実験するわけにはいかないだろう。
良夫:ああ、そうだった。ジェンナーの時代とは違うんだよな。何で実験使用かな。
父:そんな時は、本文に注目しよう。
「破傷風患者の膿をネズミに注射すると破傷風を発症することはわかっていた」
とある。
良夫:そっか。ネズミで実験すればいいね。それでも、何か心に引っ掛かるな。
父:その感覚は正しい。現在では、動物福祉という観点から、動物実験も動物に苦痛を与えず最小限にとどめるのが基本になっているんだ。
良夫:少し安心したよ。

次はこの問いを考えよう

下線部アについて、図1(※省略)は北里柴三郎が作製した装置の模式図です。Aはふたと培養皿が一体化した特殊なシャーレで、ここには破傷風菌と栄養素を含んだゼリー(培地)を入れて培養します。Bには液体cと固体dを入れて、水素を発生させます。Bから発生した水素をAに送り込み、中の酸素を追い出した後、バーナーでガラスを溶接密閉することで酸素がない環境で培養することを可能にしました。
問2
なぜ、シャーレ内の酸素を追い出すために水素を使ったのでしょうか。アンモニアと水素の性質を比較して、水素を使う利点を1つ推察し、簡潔に説明しなさい。

良夫:水素の性質は、①軽い ②燃えると酸素と結びついて水になる
までは浮かんでくるけど…どちらもここではぴんと来ない。
父:ほかに手掛かりは。
良夫:アンモニアと比較して、とあるね…
ここから、水に溶けにくいという性質までは出てくる。
父:酸素を追い出す目的は、破傷風菌だけを増殖させることだったわけだから…
良夫:培地に影響を与えない方がいいね。
父:培地は水分を含んでいるから、アンモニアはよく浸透すると考えればよい。
最後にこの問題を考えよう。

問3
北里柴三郎はこの実験中に何度か失敗し、爆発を起こしてしまっています。問題文を参考に、どのようにして爆発が起きたのかを考え、簡潔に説明しなさい

良夫:水素、溶接密閉とあるから、
「溶接中に水素が引火して爆発した」までは行けそうだ。
父:それでよい。

今回のまとめ

与えられた素材で考える問題
①本文の情報をよく確認する
・アンモニアと比較するなどのヒントを生かしました。
・人間で実験するよりは、ネズミで実験した方がよさそうです
②既知の内容と照らし合わせて答える
・唾液の働きの実験方法を応用しています。

試験時間は限られています。手際よく解答するために、今回の内容をヒントにしてみてください。

【問題の解答例】
問1 水素は培地にほとんど溶けず、影響を与えない。
問2 (実験)純粋培養した破傷風菌の入った液と、何も入っていない液を別のネズミに接種する。
(結果)破傷風菌の入った液を接種したネズミにだけが破傷風を発症する。
問3 溶接時に水素が引火したから。

理科ドクター