「日日是学日!」(⇒ 日々、これ学び!)」
受験Dr.の松西です。
今回は「入試国語・論説文」の読み方についてお話します!
さっそくですが、次のことわざをじっとご覧ください。
・急がば回れ
・損して得取れ
・かわいい子には旅をさせよ
いずれも「一見矛盾するが、社会経験を積むほど、それとなく納得のいく真理」を含みます。
「提示した内容が矛盾しつつも、一般的に正しいと認識される」状態を「逆説」と言います。
外来語では「パラドックス」ですね。
さて、この「逆説」ですが、論説文の展開に用いられることが多いのです。
論説文で迷子になりがちな受験生ほど、身に付けたい『型』です。
例を挙げましょう。
2016年の白百合学園「たたかう植物―仁義なき生存戦略」(稲垣栄洋・著)より引用します。
(問題が入手可能であれば、実際に見ていただくとより分かりやすいですよ)

朱記部分は「問題提起」にあたりますね。
短い紙面で説明するため、まずは上記の文を読んで、そして納得していただきたい。
「そうだよね、雑草ってしつこいし生命力があるよね」と。それをふまえた上で次の文です。

先にこのように結論を述べておき、続く文で具体的に説明されます。
「対人間との戦いに特化して自らを進化させた『人間から雑草と呼ばれる植物』たちは、
他の植物には簡単に負ける」という主張です。植物の戦い、とは「他の植物よりも
少しでも高く大きく成長し、太陽光を得ること」です。そういう立派に成長する植物は人間の
生活圏からほとんど駆逐されてしまい、跡地は「雑草の得意なエリア」になる。
しかし人の手が加わらなくなると、土地は(人間視点では)荒れてしまい、多様な植物種が生存競争を繰り広げるため、植物同士の競争では弱い部類の雑草は「そのエリアから排除」される、という訳です。そして結論が次の通り。

「草取りをするから雑草が生える。草取りをやめれば雑草はなくなる」
ユニークな結論ですね。ことわざ風に改造するなら『雑草取るなら雑草取るな』といった
ところでしょうか。たしかに「一見は矛盾するが、真理を含んでいる」と言えますね。
もっとも、現実的な解決策とは言えませんけれどもね。何十年もかけて植物たちの競争を
見守り、雑草が無くなるころには人も立ち入れない状況になっているでしょうから…。
ともあれ「人の生活範囲こそ、雑草の特性が活きる場である」とは言えそうです。
さて、この「逆説思考」ですが、なぜ重要かというと『入試作題者が出典文章を選ぶ上で
重視する』からです。たとえば白百合学園では次のような設問が出されています。

「これは、どういうことなのだろうか。」は先にも挙げた問題提起にあたる部分です。
「本文の論展開上、問題提起にあたる部分に線を引き、その展開を読ませてから、正しいものを選ばせる」という、きれいな問題です。もっと言うと読解力を素直に問う問題です。
正解の選択肢を見てみましょう。

この選択肢は、筆者の主張する「他の植物との競争」に触れていますね。難度を無理やり上げるのなら、ここにひっかけを含めて不正解にするのもあり得ますが、白百合の場合は選択肢も
素直です。これを選べなければ「本文を読めていない、逆説展開のカギを押さえられていない」と判定されても仕方がないでしょう。
では不正解の選択肢をいくつか見てみましょう。

いずれも「もっともらしいことを述べ」つつも「他の植物との生存競争」に雑草が勝てない
本質的な理由には触れないよう、細心の注意が払われています。

もっと難度を上げたければ次のような「誤った選択肢」を混ぜてくることでしょう。
この一文以降は気を引き締める必要があります。要約すると「最弱の被捕食者である植物は、
元の選択肢の文体にあわせて私が作ったものですが、「少しでも」という部分が本文と食い違います。本文では「やがて駆逐される」という時間経過表現を用いているので、不正解となります。大手塾の国語のテストに苦しんでいる生徒や保護者の方々は、こういう引っかけに「やられた!」となっているのではないでしょうか? 逆に、こういう引っかけに慣れすぎていると、白百合の今回のような「素直な問題」に対しては、変に裏読みして不正解を取ってくることもありますね。「学校ごとの論理の幅」というのは、わりと重要になります。
逆説的論展開を組み込む文章は「問題が作りやすい」という作題側のメリットがあります。
したがって受験生であれば、遭遇する確率が高いため、逆説的思考に慣れるべきです。
そして、設問に関しては「中学や塾によって癖がある」ため、単に読めるだけでは足りず、
「なぜその逆説が成立するのか」を解説できるレベルで読みこなすことが望ましい。
たとえば、

仮にこのような問題が出されれば、その学校は「筆者の論展開を要約できるか」を問うている
わけです。たとえ記述ではなく選択肢でも、例示したように「難度を上げようとすれば、重箱の隅をつつくような選択肢を作る」ことも出来ますから、やはり「逆説思考」を用いる文章に多く、そして深く触れたいですね。気を付けて良く見れば、大手塾の論説文は良質の「逆説的論展開構造」を含む文章がそろっているはずですよ。
そろそろまとめます。
なぜ逆説思考の論説文が大切か?
・一見、常識ではありえない結論へと読者を導く論説文は、入試の素材文に人気だから。
そして
・どのようなロジックで「結論」への説得力を持たせているか、展開の把握がカギ。
これから新たに受験年度が始まるわけですから、『期間が長めの目標設定』を提示します。
「逆説展開を単に読めるだけでは心もとない」です。昨今の国語文章の長文化をふまえても
「早く正確に読む」ことが大切。したがって「ああ、この文展開は逆説思考で進めてるね。
キーワードはこれだね、条件はこれだね」とテキパキ拾い集められる状態が望ましい。
そのためにも、最初は地道に「筆者の言う逆説的結論がなぜ成立するのか、論展開を書き起こす」などのトレーニングを取り入れることが望ましいですね。もしくは誰かに口頭でスラスラと説明する、というのでも構いません。得意な方で思考力を鍛えましょう。
良質な文章を多く読むことは、即効性には欠けるものの足腰の強い国語力の養成に最適。
まさに「急がば回れ」ですね。新たに出会う国語の文章との出会いを大切にしましょう。
「日日是学日!」(⇒ 日々、これ学び!)」

