今回は、シジュウカラの研究に関する問題をあつかいます。
シジュウカラが単語を使い、単語の組み合わせで文を作ることを示したこの研究は、大きなインパクトを与えました。
いったいどうやってその能力を証明したか、ということが、今回の出題のポイントになっています。
【問題】(2026 早稲田実業中より抜粋)
動物行動学者の鈴木俊貴さんは、長年、軽井沢の山中で、シジュウカラの鳴き声やジェスチャーを研究し、シジュウカラに言葉を操る能力があることを科学的に証明した。これまで、言葉を使うことはヒトだけの特別な能力と考えられてきたが、ヒト以外の動物が言葉を使ってコミュニケーションをとることが分かり、世界に大きな衝撃を与えた。
鈴木さんは、シジュウカラが天敵のヘビに対して「ジャージャー」という鳴き声をあがる場面を多く目撃しており、「ジャージャー」は「ヘビ」という言葉なのではないかと考えた。この仮説を確かめるために、(b)シジュウカラの巣の近くに天敵の一つであるアオダイショウを入れたアクリルケースを置き、シジュウカラの行動を観察した。すると、これを見たシジュウカラは、けたたましく「ジャージャー」と鳴き、威嚇するようにアオダイショウへ接近した。
また、録音した「ジャージャー」の鳴き声をスピーカーから流すと、シジュウカラはヘビを探すかのように巣の近くや地面に目を向ける確認行動をとることが分かった。これらの実験から「ジャージャー」という鳴き声が「ヘビ」を表わす言葉だと考えられるが、ヘビを怖がっている感情的な反応である可能性も捨てきれない。
そもそも、私たちが言葉を使うとき、私たちはその言葉のイメージを頭に思い浮かべる。たとえば、リンゴという言葉を聞くと、リンゴの赤い色や丸い形をイメージする。このように、イメージを伴いながら言葉を使うことが、真の意味で言葉を使うということである。そこで、(c)鈴木さんは、シジュウカラが「ジャージャー」という鳴き声によって、脳裏にヘビのイメージを思い浮かべるかどうかを調べるための実験をおこない、シジュウカラが真の意味で言葉を使っていることを明らかにした。鈴木さんは、その後の研究でシジュウカラが言葉だけでなく、言葉を使って文を作っていることも明らかにした。鈴木さんの研究によって、「動物言語学」という新しい研究分野が拓かれ、多くの研究者が動物の言語の解明に乗り出している。
父:まずはこの問題から考えよう。
問2 下線部(b)について、「ジャージャー」が「ヘビ」を意味する言葉であるとする仮説を確かめるために、さらに、どのような実験を行えばよいか。最も適切なものを、次のア〜エから選びなさい。
また、その実験で、どのような結果を得ることができれば仮説が支持されるか。30字以内で説明しなさい。ただし、句読点も字数に含みます。
ア.巣の近くに天敵の一つであるシマヘビを置いてみる
イ.巣の近くに天敵の一つであるハシブトガラスを置いてみる
ウ.シジュウカラ以外の鳥の巣の近くにアオダイショウを置いてみる
エ.シジュウカラ以外の鳥の巣の近くにハシブトガラスを置いてみる
父:アはどうかな。もしシマヘビを置いたら…
良夫:問題文には「ジャージャー」と鳴いて、威嚇するように接近するとあるから、そうなるのではないかな。
父:それでは「ジャージャー」がヘビを表すのか、怖いという感情を表すのかはっきりしない、とあるね。
良夫:すでに観察された情報だから、何も確かめられない。
ここでいう「ヘビを意味する」ことを確かめるっていうのは、怖さの感情から「ジャージャー」と鳴いているわけじゃないってことを確かめるってことだよね。
父:ああ。
良夫:じゃあ、ヘビでない天敵で、怖さを与えたときの反応を考える?
父:ああ。もしイのハシブトガラスを置いて、反応が「ジャージャー」だったら…?
良夫:「ジャージャー」がヘビを表す言葉とは言えないとわかる!
父:じゃあどんな結果になればよいかな。
良夫:ヘビと異なる天敵なんだから、「ヘビ」以外の言葉になればよい。すなわち、「ジャージャー」と鳴かなければいい!
父:素晴らしい。
父:次はこの問題だ。
問3 下線部(c)について、シジュウカラが真の意味で言葉を使うという仮説を確かめるためにどのような実験を行えばよいか。最も適切なものを、次のア〜カから選びなさい。
また、その実験で、どのような結果を得ることができれば仮説が支持されるか。35字以内で説明しなさい。ただし、句読点も字数に含みます。
ア シマヘビを見せて、「ジャージャー」という音声を聞かせてみる
イ 「ジャージャー」という音声を聞かせ、シマヘビを見せてみる
ウ ハシブトガラスを見せて、「ジャージャー」という音声を聞かせてみる
エ 「ジャージャー」という音声を聞かせ、ハシブトガラスを見せてみる
オ ヘビに似た細長い棒を動かして、「ジャージャー」という音声を聞かせてみる
カ 「ジャージャー」という音声を聞かせ、ヘビに似た細長い棒を動かしてみる
良夫:「ジャージャー」という音声を聞いたシジュウカラがヘビのイメージを思い浮かべることを確かめればいいんだね。
父:その通り。
良夫:それじゃあ、もし頭の中でヘビがイメージできたらどんなリアクションになるか考えればいいね。
父:やってみよう
良夫:ア…ヘビを見せられて、ヘビだって言われたら「そうだね」って言う。
イ…ヘビをイメージしてヘビを見せられたから、「やっぱりな」って言う。
ウ…カラスを見せられてヘビだよと言われたら→「違うよ」、っていう。
エ…棒を動かして、ヘビだと言われる→「違うよ」と思うかもしれないけど、微妙かな。
オ…ヘビだと言われて動く棒を見たら→「びっくりしたな、もう」と叫ぶ。
父:面白いな。なんでビックリしたの。
良夫:そっか!!棒がヘビに見えたからだ。ヘビをイメージしたから、ヘビでないものに対してヘビに対するのと同じ反応をしてしまえば、ヘビをイメージしたことが確かめられるね。
父:ほかのリアクションは。
良夫:うーん、確かめるのは難しそうだなあ。
答えはオで、結果は
「ジャージャー」と鳴き、威嚇するように棒に接近した、でどうでしょうか。
父:シジュウカラの立場に立った甲斐があったな。
いかがでしたか。
前回のブログでも扱いましたが、最近の中学入試では、このように「仮説を立て、それを確かめる実験を考える」という科学的思考を問う問題が増えています。知識だけでなく、「どんな実験をすれば確かめられるか」を考える練習をしておくことが大切です。
次回もお楽しみに。
問題の解答例
問2
(実験)イ
(結果)ハシブトカラスを見せても「ジャージャー」と鳴かない。
問3
(実験)オ
(結果)「ジャージャー」と鳴き、ヘビに対するときと同じように棒を威嚇した。

