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投稿日:2025年12月18日

テーマ: 理科

<中学入試・理科> アーバンベア問題~2025年入試問題より~

今回は、2025年に、各地で発生したクマの被害に関する問題を扱います。
【問題】(2025 城北埼玉中より抜粋)

Aさん:春になって、だんだんと暖かい日が増えてきたね。動物も長い冬眠から目覚めるころかな。
Bさん:冬眠する動物といったら、クマがいるね。
Bさん:一般的にクマが冬眠から目覚めるのは4月だけど、近年では3月中に目覚めることも多いんだって。もうすでに活動しているんじゃないかな。
Aさん:最近だと、山の中だけじゃなくて、街中にあらわれるクマもいるって聞いたよ。
Bさん:たしか、街中にあらわれるクマのことを「アーバンベア」って呼ぶんだ。そもそも、なんで本来は山の中にいるはずのクマが街中にあらわれるようになったのかな。理由が気になるね。
Aさん:いろいろなニュース記事を見て調べてみたんだけど、原因については( A  )と書いてあるね。
Bさん:社会のあり方や人間の価値観が変化するにしたがって、人間とクマの距離感も変化してきたことが原因なんだね。何か自分たちにできることはあるかな。
Aさん:クマに対してだけではなく、私たちは、人間と野生生物の距離が適切に保たれることを意識して生活していかないといけないんじゃないかな。一度人間に慣れてしまった生物は、何度もやってくる場合もあるからとても危険だし、どうしても駆除するしかないと思う。同じ地球に生きる生物として、私たちもしっかりと考えていかなくちゃね。

父:さて、ここから問題じゃ。

問2 クマは次のⅠⅡⅢの体の特徴をもちます。これらの体の特徴から想定される、クマの行動の特徴として正しいものを、次のア~オの中からすべて選び、記号で答えなさい。
<体の特徴>
Ⅰ 大きな犬歯をもつ。一方、大臼歯(一番後方の歯)は食べ物をすりつぶしやすい形になっている。
Ⅱ 上腕の筋肉が発達しており、関節の可動域が広い。また、鋭い爪をもつ。
Ⅲ 春から夏にかけて体重が減少する。一方、秋は脂肪を蓄積し、体重が急増する。
<行動の特徴>
ア 木登りが得意である。
イ 硬い木の実をすりつぶして食べる。
ウ 高いジャンプ力を持つ。
エ 他の生物を捕食することに特化しており、完全に肉食である。
オ ブナやミズナラが不作の年の秋には、ヒトの生活圏へクリやカキなどを求めてあらわれることがある。

良夫:まず、アの木登りについては、特徴IIの上腕の筋肉が発達して関節の可動域が広い、というところからわかるね。
父:うむ。
良夫:イの硬い木の実をすりつぶして食べる、も特徴Iに臼歯がすりつぶしやすい形とあるから、正しいとわかる。
オのクヌギやミズナラは、ドングリがなる木だね。特徴Ⅲに秋に体重を増やすとあるから、ドングリが不作だと、餌不足になるね。
だからこれも正しい。エの「完全に肉食」、は木の実を食べることに反するから、除外。
ウのジャンプ力は、特徴の説明中に根拠がないから、除外かな。
父:いい読みだ。次はこの問いを考えてみよう。

問4 (  A  )に適する、「アーバンベア」が増えている原因として適切ではないものを、次のア~ウの中から1つ選び、記号で答えなさい。
ア 近年、イノシシの個体数が急激に減少した。クマはイノシシを主食とするため、頻繁に食料不足に陥るようになり、食料を求めて街中にあらわれるようになった。
イ 里山の周辺地域において過疎化が進み、里山が管理不足となった。こうして、里山の草や木が生い茂り、里山が森林と街の境界としての役割を果たせなくなった。
ウ 狩猟者の数が少なくなり、狩猟によるクマの個体数減少の機会が少なくなった。

良夫:クマは雑食性だから、イノシシだけを食べるわけじゃないね。だから適切でない選択肢は、アだ。
父:うむ。ウにあるように、最大の原因は個体数の増加だ。
良夫:じゃあ駆除して適正な個体数を保てばいいの。
父:アの選択肢に書かれているように、地方の過疎化、高齢化で里山が荒れ、クマと人の生活域の境界としての役割が果たせなくなったことも大きいんだ。
人間とクマの距離について問われた次の問題も見てみよう。

問5 下線部について、人間とクマの距離を適切に保つことを目的とした人間の行動として適切ではないものを、次のア~オの中から1つ選び、記号で答えなさい。
ア クマの生息地やその周辺には特に、クマの食物になるようなごみを放置しない。
イ クマが出現する可能性のある場所に行く際には、音が出るものを身につける。
ウ 傷ついたクマがいたら、積極的に手当てをし、餌付けする。
エ 早朝や夕方はクマの行動が活発なため、なるべく生息地域に近づかないようにする。
オ 里山地域の自然を適切に管理し、多様な生物が生息できる環境を維持する。

良夫:ウは餌付けするというのが、無理がある。
父:餌付けをすると、人間は怖がらなくてもよいという間違った情報をクマに与えてしまうことになる。
良夫:それで次の被害者が出るわけか。問題文中で、私たちも地球に生きる生物としてしっかり考えようとあったね。
父:いいところに目をつけているな。問題を解いてマル付けするだけで終わらせず、問題文中や、選択肢の文で触れられている「押さえておきたい重要項目」をチェックすると、入試の対策として問題を解く効果は倍増する。
今回の問題では
・クマの身体的特徴と行動の特徴
・クマの被害が増大している原因
に関して、押さえるべき要点がまとまっていたね。
良夫:今回の問題は、人間も自然界の一員だと実感させてくれたわ。

いかがでしたか。
過去問を解いた後は、マル付けで終わらせず、自分の知識を積み上げていくことが大切です。今回の内容を参考にしていただければ幸いです。
次回もお楽しみに。

問題の解答   問2 ア、イ、オ  問4 ア  問5 ウ

理科ドクター