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投稿日:2025年06月09日

テーマ: 社会

差がつく中学受験の公民~衆議院の優越②

みなさんこんにちは。受験Dr.国語・社会科の天野です。

今回は前回に引き続き、公民で頻出の三権(国会・内閣・裁判所)分野から、「衆議院の優越」についての整理法です。前回は「衆議院の優越」が認められる3種類【①そもそも衆議院にしかないもの、②参議院と意見が対立した時に衆議院で再可決すれば成立するもの、③両院協議会で解決しない時は再可決も必要なく衆議院の議決のまま成立するもの】のうち①について書きましたので、今回は②と③を見ていきましょう。

いつものように、先生と生徒2人の会話形式でお届けします。

 

衆議院で再可決すれば成立するもの

太郎 「②の衆議院で再可決すれば成立するものって、確か法律案だけでしたよね?」

先生 「その通り。再可決に必要な人数は覚えている?」

太郎 「3分の2!」

先生 「残念!!」

太郎 「え?!」

花子 「3分の2の前に「出席議員の」っていう言葉をつけろってことですよね?」

先生 「そういうこと。「総議員」か「出席議員」かでひっかけてくる選択肢問題も多いからね。」

太郎 「ぐぬぬ。確かに憲法改正の場合は「各議員の」「総議員の」の部分も強調して覚えましたね…」

花子 「憲法は一番厳しい基準よね。ちなみに再可決できなかった時はどうなるんですか?」

先生 「廃案になる。」

花子 「廃案?!なんか怖い響き…」

先生 「衆議院の過半数で可決したこともなかったことになるので、もし次回の国会で同じ法案を通したければ、また一回目に過半数を取るところからやり直しということになる。」

太郎 「うげえ、めんどくさい。法律案ってこの前の予算に比べてだいぶ慎重に扱うんですね。」

先生 「そりゃあ、法律は決まったらその後長きにわたって全国民を縛るものになるからね。」

花子 「予算は大事と言ってもその年だけの話ですもんね。」

 

再可決も必要なく衆議院の議決のまま成立するもの

太郎 「そしたら、その予算の議決を含む③「両院協議会で解決しない時は再可決も必要なく衆議院の議決のまま成立するもの」の整理法を教えて下さい。これが確か3つもあったはずで、覚えにくいので。」

先生 「まず予算については、前回予算の先議権のところで話した通り、4月までに急いで決めなければいけないので③のルールになるというのはわかるね?」

太郎 「はい、さっき花子さんが言ってたみたいにその年だけの予算ですし、スピード重視なら、直近(一番最近)の民意を反映しやすい衆議院を最大限に優先して決めるしかないですよね。」

先生 「そうそう…って、なんで少しドヤ顔してるんだ?」

太郎 「なんか「直近の民意」って言葉の響きがかっこいいので、自然とこの顔になっちゃうんです。」

花子 「なにそれ(笑)どうせ「チョッキンの民意だぞ!チャッキーン☆」みたいな感覚なんでしょ。それはさておき、もしや今太郎君が言ったスピード重視ってことが、他の2つにも共通してるんですかね?」

太郎 「花子さんの俺に対するイメージっていったい…」

先生 「笑。まさに他の2つも急いだ方がよいものであることは共通しているよ。あと二つはなんだったけ?」

太郎 「えーっと、内閣総理大臣の指名と、あともう一つは…」

花子 「…なんだったっけね…ん?…あ!! 思い出した!けど、太郎君には教えない。」

先生 「情無いよ。」

花子 「なんですか急に?!私が、太郎君に対して無情だってことですか?」

太郎 「いや、まてよ、情…無い…ジョウ…あ! 条約の承認だ!!語呂合わせだったんですね(笑)」

先生 「うん、花子さんのことではなく、憲法が参議院に対してちょっと無情ではないか、というイメージで。」

語呂合わせ

太郎 「ありがとうございます!では、さようなら!!」

 

内閣総理大臣の指名

先生 「待て待て(笑)。理屈の確認が終わってないぞ。なぜ総理大臣の指名は急がないといけないの?」

太郎 「それは、一国のリーダーの空白期間が長引いたらまずいからですよね?」

先生 「そうだね。内閣が総辞職してしまっている状態で総理を選ぶからね。衆議院の議決後、一定の期限内に参議院が議決しないと衆議院の議決がそのまま国会の議決になるってルールについても、予算と条約は30日以内が期限だけど、総理大臣の指名の場合は10日以内。」

花子 「あれ?内閣不信任案が出された時の場合、10日以内に総辞職をするか衆議院を解散するかを内閣が選ぶから、解散を選んだ場合は総辞職していないんじゃないんですか?」

先生 「そこが誤解しやすいところなんだけど、解散を選んだ場合も、総選挙の後30日以内に特別国会を開いたら、その最初の時点でいったん総辞職するんだよ。もちろん与党が勝ったら総理大臣は同じ人が選ばれる可能性が高いけれど。」

花子 「そうだったんですね。特別国会ではだいだいは何日くらいで総理大臣って決まるんですか?」

先生 「最近だとだいたい3~4日が多いかな。かつては40日抗争という自民党内で首相候補が二人も出てしまう異常事態では、かなり長引いたこともなどもあったけれど…」

 

条約の承認

花子 「条約の締結について急がなくてはいけない理由は、相手の国をあまり待たせるわけにはいかないからですか?」

先生 「国会の仕事は条約の締結じゃなくて承認ね。実際に外国と交渉して条約を結んでくる(締結する)のは、外務省などが中心になってやる内閣の仕事。国会議員が皆でぞろぞろ行って交渉したりはしないよ(笑)ここもよく引っ掛けで出るね。理由は正解で、内閣が外国と締結してきた条約は、国会が承認しなければ正式な効力をもたないので、なかなか承認しなければ相手国を待たせて迷惑かけることにもなりかねない。」

太郎 「なるほど。でも、相手国も議会の承認は必要なんですよね?」

先生 「実は、国によっても条約の種類によっても議会の承認が必要かどうかはそれぞれ違うので、一概には言えないんだ。例えば、2019年に結んだ日米貿易協定については、アメリカでは議会の承認が必要なかった。」

花子 「へー!じゃあ、ひたすら日本の国会の承認待ちだったってことですね。逆に日本の国会の承認が必要ない条約もあるんですか?」

先生 「うん。国会の承認が必要かどうかは内閣が判断するので、例えば日中共同声明の場合、内閣としては国会の承認なしで良いと考えたけれど、国会では承認すべきという意見もあり、議論になったんだよ。」

太郎 「知らなかった。今後は締結されたあとにも注目してニュースを見るようにしてみますね。」

先生 「優等生的にまとめたな(笑)」

いかがでしたか。衆議院の優越について2回にわたって整理してきましたが、中学受験では衆議院の優越が適用されないものについてもセットでおさえる必要があるので、次回はそれについて整理し、三回のまとめをしたいと思います。それではまた、お会いしましょう。

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