「日日是学日!」(⇒ 日々、これ学び!)」
受験Dr.の松西です。
8月も終盤が見えてきたこの時期、各塾の「夏期・公開模試」も迫ってきましたね。
今回は公開模試にありがちな「国語150点、算数150点、理科100点、社会100点」の配点や
時間配分について、実際の入試データと比較しながらお話したいと思います。
中学入試で先の配点をとる学校と言えば、聖光を筆頭に中央大横浜、法政、逗子開成…と
神奈川の中学が続きます。これを「30%/30%/20%/20%(小数点以下四捨五入)」と割合で示してみると、また違った様相が見えてきますよ。それを示したのが次の表です。
地域の有力校に引っ張られる形で、配点等に地域色が出ているのが興味深いです。ちなみに栄光学園は
「29%/29%/21%/21%」です。ついでに「31%/31%/19%/19%」も併せて一つのグループとして、とらえた上で、首都圏男子校を一覧にするとこのようになります。
こうなると人気男子中学校の大半がそろう形になりますね。
多くの塾で採用されている「国語150点、算数150点、理科100点、社会100点」の配点は、
出来る限り多くの受験校で違和感なく参考になるよう配慮された配点である、と言えるでしょう。
ちなみにもう一つの「最大派閥」は「33%/33%/17%/17%」ですが、今回は省略します。
さて、このタイプの受験校の特徴ですが、やはり「国・算の得点ウェイトが大きい」という
ことが挙げられます。そして「時間配分」。海城中学をのぞき、「国・算」と「理・社」の間で
10分~20分の差が生じています。このことが「問題作成」に影響を与えないわけがありません。
さて、次の表をご覧ください。
※以降、すべての欄において「国/算/理/社」の並びです。
これは「首都圏中学入試」を、4科合計時間が長い順にランキング化したものです。
このランキングに載っていないものは「合計が180分かそれ未満」であり、中学受験の多数派です。
逆に言えば、ここに載っている学校は「試験時間が長い学校」ということになります。
午後入試受験が一般化している首都圏においては、戦略を練るうえでネックになるポイントです。
とくに、麻布などは休憩時間も長いことで有名ですね。
ここで一つお知らせです。前回の均分配点の解説時にお伝えした清泉女学院ですが、最新の入試情報で
「理・社の時間をそれぞれ40分に減らす」と発表がありました。つまり上の表から清泉は外れます。
女子のお子様であれば体力面を気にかけるご家庭もあるかもしれません。ほんの10分といえども
入試初日ですし、大多数の学校が採用している合計180分の入試となり、午後受験戦略も含めて、
より受けやすい学校になったのではないでしょうか。第一志望での受験をお考えの方は、学校説明会などで「試験時間が短縮されるが、理・社の問題量はどれくらい変化するのか」については確認しておいた方がよいでしょう。
これで、190分を超える入試は「30%/30%/20%/20%とその前後の学校+開成中学」が占めることになりました。
もう少し細分化して、私の担当科目である国語の時間の長さ(4科入試のみ)をチェックしてみましょう。
「国語50分」の入試は枚挙にいとまがない(←入試頻出慣用句!)ため、60分以上に絞ります。
すると4校ありました。普連土中学は長丁場に見えますが「合計180分の学校」は女子の学校でも
数多くあります。その他の男子校は、長時間の入試といえます。これらの学校は「1時間目、2時間目で長丁場になり頭のスタミナを使わされる」のでバランス配分に注意したいですね。
続きまして、おそらく最も需要があるであろう「算数の時間配分の長い中学(4科入試のみ)」一覧です。
いずれも「あそこの算数はねぇ…」と一家言、語りたくなる学校がそろったように思います。
(特色については私ではなく、ぜひぜひ算数の先生におたずねください…)
4科で国・算の間に得点傾斜がつく学校は数が少ないですが、「時間の傾斜」を付けている学校は上の
「算数60分以上」に絞った一覧表にもちらほらと登場していますね。
その中でも開智中学は得点にもきっちりと傾斜を付けています。
昨年の埼玉入試で台風の目となった開智・開智所沢の二校ですが、栄東との違いが配点にも出ています。
難度が急激に上がった両校ですが、算数が得意ならば傾斜のついている開智系を受けた方が有利、という判断ももちろん可能でしょう。
そろそろまとめます。
均分配点に比べると、傾斜型は今みなさんが塾のテストで経験しているように「国・算=読解や計算が
続き、頭の体力を消耗させられる教科が、比較的長時間で二限続く(栄光中など、国・算を離して実施する中学もあります)」ことがポイントですね。
とくに60分のテストがある学校は要チェックです。単に長いだけではなく、国語であれば長文記述が
あったり長文文章が課されたり、といった特徴があります。配点も大事ですが、学校の先生は「試験時間」から逆算して問題を作成されますので「60分で出題する学校の問題」には、単に10分長いだけではなく学校側のこだわり、と言いますか「問題作成意図」があると考えましょう。
また、理・社についてですが、「え? こんな短時間でこんなにたくさんの問題を解くの?」という学校が
志望校の中にないか、調べておくべきです。傾斜がつくため国・算の時間配分が長くなりがちですが、
「短い時間で遠慮なく問題量の多い理・社入試問題」というのもけっしてめずらしくはありません。
その場合は処理能力を問うているわけです。この辺りの調査は手間と時間をかけてしらみつぶしに調べるよりも、プロの分析に耳を傾けることをおすすめします。
いかがでしたでしょうか。今回扱った「30%/30%/20%/20%」型と、その前後を合わせた配点は
皆さんがこれまで受けてきた模試のモデルになっているパターンです。今まで漫然と受けてきたので
あれば、意識をあらためて、この夏の総仕上げ模試から「時間配分」を意識してみるのも良いでしょう。
制限時間の中で、自分の得点を最大限にするためには攻めやすい問題から攻めるべきであり、その繰り返しが「本番で活かされやすい」のが、今回紹介した学校群の入試です。その特徴を意識しつつ毎月の
模試に臨みましょう。
夏を締めくくる公開模試は、見方を変えれば「来年の入試に向け本格的な受験期を迎える一里塚」でもあります。「ポイント」に気づけるか、気づけないか。その差を生み出すのは「意識の高さ」です。
模試の受験機会を有意義なものにするためにも…
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