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投稿日:2024年03月19日

テーマ: 算数

【よくあるお悩み】中学受験で優先すべき科目は?④《算数の難しさを分析》

皆さま、こんにちは!

3回にわたって、ご家庭からの「優先すべき科目は?」という、よくあるご相談についてご説明してきました。
今回はその第4弾で、このテーマの最終回になります。

中学受験で優先すべき科目は算数で、理由は入試本番で圧倒的に差がつく科目だからです。
考えられる原因は3つあります。
①問題数が少なく、1問あたりの配点が大きい
➁小問ごとのつながりが強く、続けて失点するリスクが高い
③他科目に比べて特殊性があり、専門的なトレーニングが必要
前々回、前回は、①と②について、データを見ながらご説明しました。
詳しくは、12/151/12のブログをお読みください。

なお、ここで書いている算数というのは、当然ながら「中学受験の算数」です。
「小学校で習う算数」ではありません。
もちろん、このふたつは地続きのものではありますが、目指すレベルが根本的に違います。
近所の丘に登るのと、富士山に登るくらいの違いがあります。
今回はっきりさせたいのは、中学受験の算数の何がそんなに難しいのかということです。
その難しさに対して、どう攻略していけばいいのかは、またの機会に扱います。
まずは、中学受験算数の難しさの本質を考えてみます。

 

算数はとにかく難しい

今回は最終回として、算数で差がつく理由の③について、考えてみます。
「他科目に比べて特殊性があり、専門的なトレーニングが必要」とは、どういう意味でしょうか?
端的に言うと、「算数はとにかく難しい」ということです。
私は、算数も国語も理科も指導できますが、国語や理科と比べても、算数は圧倒的に難しいと感じます。

ただ、ここでいう「難しさ」というのは、問題の難易度という意味ではありません
「解くのが難しい」という意味でなら、国語や理科にも難問はあります。
特に国語は、設問がそもそも何を求めているのかがよくわからない、と感じることがあります。
素材文だけではなく、設問文にもある程度の解釈が必要で、そこが国語の難しさのひとつのポイントです。
しかし、算数にそういう難しさはないのです。
設問が求めていることは、ほとんどの場合は明確です。
「速さを求めろ」とか「長さを求めろ」とか、答えが何になるのかははっきりと示されます。
また、その答えに至るための設定や条件というのも、誰にでもわかるようにもれなく述べられます。
設問にある程度の解釈が必要になる場合は、それは算数では一般的に出題ミスとなるからです。

では、算数の何が難しいのでしょうか?
それは、理解し身につけ、身につけたものを応用も含めて実際に運用できるようにするまで、が難しいのです。
マスターするまでに、ひたすら反復練習が必要で、本当に時間がかかるのです。
しかし、ひとたびマスターしてしまえば、そこまで難しいことをしているかというと、そうでもないです。
むしろ、マスターしてしまった人にとっては、当たり前のことをやっているだけです。
似ているのは、楽器の練習だと思います。
あるいは、囲碁や将棋などの高度なボードゲームも近いです。
最近だったら、コンピューターのプログラミングも同じような部分があります。
詳しいことはここでは省略しますが、知っておいて頂きたいのは「難しさの質が違う」ということです。
算数をマスターするということは、プロのミュージシャンや棋士、プログラマーを目指すということに近いのです。

 

覚えるべき解法や知識は膨大にある

では、算数の難しさはどこからくるのでしょうか?
まず、算数には、国語・理科・社会の他の3科目に比べて、身につけるべき知識や解法が膨大にあります。
国語や理科や社会だって覚えることはたくさんあるじゃないか?と思われるかもしれません。
もちろんあります。
しかし、それと比べても、算数で覚えるべきことの方が圧倒的に多いです。
しかも、覚えるだけではダメで、きちんと問題に対して使いこなせるようにしないとダメなのです。
理科や社会などの用語や年号は覚えただけで点数になります。
国語の漢字などもそうですね。
一方で、算数では覚えただけで点数になるというものはほとんどありません。
問題を見て、自分の覚えている知識の何が使えるかを判断し、そしてそれを実際に使って数値を求める。
そこまでを完璧にやって初めて点数になります。
つまり、「覚える」ではなく、「使いこなせる」必要があるのです。

そして、この「使いこなせる」レベルまでもっていかなくてはならないことの数がとても多いのです。
たとえば、受験Dr.が販売している「根本原理365」というテキストがあります。
これは、中学受験の算数で身につけるべき基本的な解法・知識・テクニックを抽出してまとめたものです。
基礎編100と実践編265がありますが、実践編265ですら、内容としてはかなり基礎的です。
基礎は言い過ぎかもしれないですが、少なくとも、算数を本気でやるなら常識、と言って間違いないです。
このテキストを隅から隅までスラスラと解けないなら、反復練習が足らない部分があるということです。
それでも365個あるのですよ!
一日ひとつマスターしたとしても、1年かかります。
しかもここで言っているマスターというのは、「使いこなせる」レベルまでもっていくという意味です。
さらにこれらをいくつも組み合わせて、より複雑な問題を解くということを目指さないといけません。

 

専門的なトレーニングが必要

先ほど、算数を本気でやるなら常識、と書きましたが、もちろんこれは一般的な意味での常識ではないです。
中学受験の算数はとても特殊で、公立の小学校のカリキュラムで扱われるようなものではないです。
基本的な部分は重なりますが、それは本当に入口の部分だけです。
また、一部は公立の中学や高校の数学で扱われるようなものもありますが、受験算数の方がより高度です。
実際に、私自身は小学校から大学まで、すべて国公立の学校だったので、中学受験算数には触れていません。
ですから、いま持っている受験算数の知識というのは、ほぼすべて大人になってから身につけたものです。
一から勉強し直したのですが、その過程では驚きがたくさんありました。
「これって高校で勉強したよな?」「こんな難しいことを小学生がやるのか!」といった驚きです。
だからこそ、やっていることの難しさもわかりますし、習得するための手順やトレーニングもわかるのです。
ここが算数の難しさのもうひとつのポイントです。

つまり、私自身がそうだったように、中学受験の算数は日常的に触れるようなものではないのです。
だから、気がつかないうちにできるようになっていた、なんてこともないのです。
これが、国語や理科や社会なら話はちょっと違います。
たとえば、地図を好きで眺めているうちに、自然と地名を覚えてしまったということはありえます。
また、昆虫図鑑を読むのが好きで、気がついたら昆虫博士になっていたということもありえます。
あるいは、小説が好きで、片っ端から読み耽っているうちに漢字や言葉に詳しくなったということもありえます。
日常的に触れる機会というのが、算数に比べたら圧倒的に多いです。
もちろん、算数だって数には触れるし、お買い物の際にちょっとした計算をするということはあります。
でもそれは、中学受験の算数から見たら、本当に入口の入り口なのです。
やっていることが、日常的なレベルからかけ離れているということです。

そうなると、これは意識して触れて、毎日のようにトレーニングを繰り返すしかありません。
触れるためには、専門的なテキストや問題集にあたるしかないです。
可能であれば、算数の体系や全体像、各単元の関連度なども知って練習したいです。
もし、わからない・できないとなったら、きちんとわかっている専門家の指導を受ける必要があります。
専門家に効率の良いトレーニングを指導してもらうことが重要なのです。
ちょっと教えてもらうというくらいなら、問題を解ける人ならある程度は可能です。
しかし、問題点を把握して、それを改善するトレーニングを提案してもらうことは、専門家にしかできません。
受験Dr.にはそういうことができるプロの先生たちがいますので、必要があればぜひ頼っていただきたいです。

なお、中学受験の集団塾というのは、こういったトレーニングを行う場ではないということも知っておいてください。
塾なのだから、できるようにしてくれると考えたくなりますが、少なくとも中学受験の集団塾はそうではないです。
集団塾がしてくれることは、テキストなどの教材をもらえるということと、ポイントは何かを教えてくれることです。
こういうことを身につけておくことが、中学受験では必要ですよ、と教えてくれるのです。
これは特定の塾を悪く言っているわけではけっしてありません。
私も集団指導の経験がありますが、集団塾の指導というのは大なり小なりそういうものです。
「身につける」ためのトレーニングは、集団塾の外、主にご家庭でやることになります。
なぜそうなるかというと、身につけなければならないことに対して、授業時間が足りなさすぎるからです。
だから、身につけて欲しいポイントを伝え、基本的な解法をみせて、あとは宿題として練習してもらうのです。
腕のある先生ならば、それでも授業時間内である程度はできるようにさせられます。
それでも、生徒一人ひとりに対して適切なトレーニングを課すということはさすがにできません。
中学受験をされるご家庭の多くが、宿題や家での取り組みに悩まれるのも当たり前のことなのです。

 

あきらめずに取り組もう

書き足りない部分はまだまだありますが、受験算数の難しさのポイントはお分かりいただけましたでしょうか?
これだけ大変なことをやっているのだから、受験においても差がついて当然だよね、ということなのです。
ただし、中学受験生やそのご家庭を不安にさせるつもりでこれを書いているわけではありません。
強調したいのは、中学受験を目指す小学生たちが取り組んでいることの難しさ・大変さです。
それを正しく知って欲しいのです。
あきらめずにコツコツと取り組んでいくためにも、その道のりの大変さを知っておいて頂ければと思います。
算数の習得にはとにかく時間がかかります。
その長い時間を、少しでも楽しく前向きに乗り越えていくためにも、道の険しさは知っておいた方がいいです。
算数を苦手に感じているお子さんなら、なおのことです。
そう簡単にはできるようにはならないから、あきらめずにコツコツ頑張ろう!と励ましてあげてください。

ということで、今回のテーマはここまでになります。
中学受験において、算数が最優先とされるべき理由がお分かりいただければ幸いです。
次回からは、ではそんな大変な算数をどうトレーニングしていくべきなのかを、具体的に書いていきます。
では、また次回お会いしましょう。

算数ドクター