こんにちは。
受験Dr.算数科講師の千葉 誠と申します。
算数を学習するうえで「思考力」が重要とよく言われますが、この「思考力」にあてはまる能力は多種多様です。
今回は「条件整理」の分野に含まれる「投票の問題」を題材に、「思考力」の1つである「条件を言い換える力」について説明します。
【問題】 慶應義塾中等部2025年度入試問題より抜粋
A君、B君、C君、Dさん、Eさんの5人の立候補者の中から、2人の代表を選挙で選びます。5人の立候補者を除く300人の生徒が、必ず一人一票ずつ投票します。
(1)A君が確実に当選するためには、最も少ない場合で何票必要ですか。
(2)80票を開票したところ、5人それぞれの得票数は下の[表1]のようになりました。A君が確実に当選するためには最も少ない場合であと何票必要ですか。
[表1]
(3)193票を開票したところ、5人それぞれの得票数は下の[表2]のようになりました。C君が確実に当選するためには最も少ない場合であと何票必要ですか。
[表2]
解説
(1)「当選するための最小得票数」という条件は、「1票でも少なければ当選できない可能性がある得票数」と言い換えられ、さらに、「当選できない場合の最大得票数より1票多い得票数」と言い換えられます。
2人を選ぶ選挙で「A君が当選できない」というのは、「得票数がA君以上になる人が2人以上いる」と言い換えられるので、この場合の最大得票数は、「A君」と「A君以上になる2人」の計3人の得票数が等しくなる場合の得票数ということになります。
300÷3=100
A君を含む3人が100票ずつ得票した場合、1位が3人いるので当選する2人を確定させることができないので、「A君が確実に当選する」とは言えません。
つまり、100票が「当選できない場合の最大得票数」ということになります。
これより1票多いのが「当選するための最小得票数」なので、
100+1=101(票)
「当選できない場合の最大得票数」=「当選人数+1の人数で均等に票を分けたときの得票数」について調べることが「投票の問題」を解くためのポイントであるとわかりました。
(2)(3)も同様の考え方で解いていきます。
(2)300-80=220
残った220票を、「A君」と「A君以上になる2人」の計3人で得票数が等しくなるように分け合いますが、この時の得票数が最大になるのは、「A君以上になる2人」を途中開票時の得票数が多い人から選んだ場合なので、「A君以上になる2人」としてC君(31票)とB君(16票)を選びます。
(220+23+16+31)÷3=96・・・1
96票が「当選できない場合の最大得票数」なので、「当選するための最小得票数」は、
96+1=97
A君は途中開票時で23票あり、「あと何票必要か」を聞かれているので、
97-23=74(票)
(3)A君がすでに121票あるので、1位が3人という場合はありえません。
(1)より101票以上あれば当選確実なので、A君はすでに当選が確定しています。
なので、「C君が当選する」という条件は、「A君以外の4人の中で1位になる」という条件に言い換えられます。
300-193=107
残りの107票を「C君」と「C君以上になる1人」の計2人で得票数が等しくなるように分け合いますが、(2)と同様に、 A君とC君を除いて途中開票時の得票数が最も多いB君(23票)を「C君以上になる1人」に選びます。
(107+35+23)÷2=82・・・1
82票が「当選できない場合の最大得票数」なので、「当選するための最小得票数」は、
82+1=83
C君は途中開票時で35票あり、「あと何票必要か」を聞かれているので、
83-35=48(票)
得票数がどのような状態になれば当選できるのかを考えることで、当選するという条件を得票数についての具体的な条件に言い換えることができ、「当選できない場合の最大得票数」を調べるという方針を立てることができました。
このように、問題の条件をより具体的にしていく力が「条件を言い換える力」と言えます。
「条件整理」の分野が苦手な方は、解法の前提にどのような「条件の言い換え」があるのかを意識しながら学習することで理解を深めていきましょう。
それでは、失礼します。