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投稿日:2020年11月05日

テーマ: 社会

『文化史』を苦手にしない3つのポイント

皆さんこんにちは!
社会科・国語科の清水栄太です。

今回は、中学受験・模試頻出の歴史の文化史についてお伝えします。

まずは、文化史の特徴について確認します。
文化史は男女の難関校、特に女子の難関校ではよく見かける単元です。
一般に政治史よりも、苦手とするお子さんも多いです。
模試での出題を見ても正答率が低くなる傾向にあります。

その理由として考えられる原因の一つは、触れる機会が圧倒的に少ないこと。
5年生では政治・外交史が中心となり、文化史は後回しになってしまうケースが多いです。
また、6年生では、5年生で触れる量が少なかったため、「やったはずなのにできないテーマだ…」という位置付けになりやすいです。

さらに、文化史が苦手になりやすい原因は、政治史や外交史などの分野に比べ、知識が用語として入っているだけの状態に陥りやすいテーマ史でもあることです。
例えば、『土佐日記』と紀貫之のように、「作品名」と「作者」を覚えたとします。
しかし、土佐日記の特徴である、「日記のような形式」で、紀貫之が「女性のふりをして『かな文字』で書いた」という部分まで一歩踏み込んで定着させないまま、次の内容へと入っていってしまう。

これは、他のテーマ史でも起こりうることですが、特に文化史では、この状態で知識の定着が止まっている状態になっていることが多いです。

ですから、いざテストや入試になると、いつの時代かわからず「おそらく、こうかな」というレベルで問題を解いて正解に結びつかないということになります。

今挙げた例のように、「作品名」と「作者」だけの知識ではなく、一歩踏み込んだ内容までインプットしていくことが苦手克服への一つのカギとなります。
社会が得意で進んで学習できるというお子さんは、このような知識のインプットを心がけることで、文化史の苦手は解消されていきます。
しかし、なかなか深くまで覚えるのが苦手、社会はあまり得意ではないという方もいると思います。そういった方のために、

実際に入っているだけの状態なっている文化史の知識を、
使える知識に変えていく3つのポイントをお伝えします。

今回は「飛鳥時代」と「奈良時代」についてみていきます。
まずは例題から。

[例題]以下のカードを見て次の問に答えなさい。
カード①この時代は、仏教を厚く信仰する豪族と、仏教に反対する豪族が争っていましたが、仏教を信仰する豪族が権力を握りました。その一族に推され、女性初の天皇の摂政として政治を行った人物が活躍しました。
カード②この時代は、不安定な時期であり、都では伝染病が蔓延し、政治は乱れていました。そこで当時の天皇は、仏教の力を借りて政治を行おうとしました。
カード③この時代は、日本で初となる元号が定められました。唐の政治制度を手本にしながら政治を進めました。
問1 カード①~③の時の文化の名前をそれぞれ答えなさい。
問2 カード①~③の時の文化の代表的な人物をA群から、代表的な作品名をB群からそれぞれ1つずつ選び記号で答えなさい。A群:聖徳太子 紀貫之  鑑真 空海 紫式部 天智天皇
B群:法隆寺 唐招提寺 高松塚古墳壁画 「源氏物語」 「土佐日記」

 

 

解説

問1
カード①は「女性初の天皇の摂政として政治を行った人物が活躍」という部分から聖徳太子だと判別できるので、聖徳太子の頃の文化=飛鳥文化とわかります。
カード②は「都では伝染病が蔓延…仏教の力を借りて政治を…」という部分から、聖武天皇の政治であることがわかるので、奈良時代。この頃の文化を天平文化と言います。
カード③は「日本で初となる元号…唐の政治制度を手本にしながら…」という部分から、中大兄皇子の頃、飛鳥時代の後半だとわかります。したがって、白鳳文化があてはまります。

問2

カード①は飛鳥文化なので、A群が聖徳太子、B群が法隆寺です。

カード②は天平文化なので、A群が鑑真、B群が唐招提寺です。

カード③は白鳳文化なので、A群が天智天皇(中大兄皇子)、B群が高松塚古墳壁画です。
まず、文化の種類を確認していきましょう。

この2つの時代には、3つの文化が存在します。「飛鳥文化」「白鳳文化」「天平文化」です。
さて、ここでポイント。

【ポイント①文化の内容把握】

それぞれがどのような文化なのかを確認してきます。

「飛鳥文化」:インド・ギリシャの影響を受けた、最初の仏教文化
「白鳳文化」:生気ある若々しい文化、唐初期の文化の影響を受けた文化
「天平文化」:唐の影響を強く受けた国際色豊かな文化

このように並べて見るとその違いは、一目瞭然ですね。
この赤字の部分が文化史を考える上で必要な背景知識になります。
例えば、飛鳥文化であれば、
「インド・ギリシャの影響を受けているから、代表的な建造物である法隆寺の柱はエンタシスという特性をしているのか…」といったように知識をつなげることができますね。
では、次のポイントです。

【ポイント②各文化がさかんだった時代の中心人物が誰なのかをおさえる】

各文化がさかんになった時の、中心人物をみていきます。

「飛鳥文化」:聖徳太子のころ
「白鳳文化」:天智天皇・天武天皇・持統天皇のころ
「天平文化」:聖武天皇のころ

各時代の文化とその時に活躍した主要な人物をおさえることで、文化の知識に時代を一致させることができ、これもまた使える知識へと変わっていきます。
最後に3つ目のポイントです。

【ポイント③文化の特色と政治の中心人物から共通性を考える】

作品・作者の組み合わせに入る前にもう一歩踏み込んで考えてみます。
ポイント①とポイント②を重ね合わせてみましょう。

「飛鳥文化」:①インド・ギリシャの影響を受けた、最初の仏教文化。②聖徳太子のころ。
→聖徳太子は政治でも厚く仏教を信仰していました。

「白鳳文化」:①生気ある若々しい文化、唐初期の文化の影響を受けた文化。②天智天皇・天武天皇・持統天皇のころ
→唐の政治を手本として、律令制度などの仕組みを取り入れていました。

「天平文化」:①唐の影響を強く受けた国際色豊かな仏教文化 。②聖武天皇のころ。
→聖武天皇といえば、奈良の大仏で有名ですね。この他にも、宝物庫としても有名な正倉院があります。この正倉院はシルクロードの終着点とも呼ばれていました。

こうして見ると、政治と文化には大きな共通性があることが分かります。

この時期の文化は、政治を動かしていた天皇や貴族を中心としたものだったので、こうした共通性が見られるのです。
ここまで、3つのポイントを確認してきました。
この状態で、作品と作者を簡単にチェックしていきます。

「飛鳥文化」:四天王寺/法隆寺(聖徳太子)/:法隆寺釈迦三尊像(鞍作止利)
この文化を象徴する代表的な作品・建築は「法隆寺」です。
法隆寺の柱にはエンタシスと呼ばれるギリシャ様式の特徴を持った柱が見受けられます。

「白鳳文化」:興福寺頭/高松塚古墳壁画
この文化の代表的な作品は、高松塚古墳の壁画です。

「天平文化」:『万葉集』(大伴家持.日本最古の和歌集)/『風土記』:地理書/『古事記』(稗田阿礼.大安方伯:推古天皇にいたるまでの物語 )/『日本書紀』(舎人親王:神代から持統天皇までの歴史書)正倉院(聖武天皇の宝を納めた宝物庫。校倉造。)/唐招提寺(鑑真)

 

天平文化からは、これまでの建築や絵画に加えて、天皇貴族を中心に読み書きの能力が向上したことにより、歴史書や物語等などの作品が新たに登場します。
ここでおさえておくことは、奈良時代は短歌を中心とした歌集や歴史書が中心で、平安時代のような物語は多く発達してはいないということです。

この3つの文化をふりかえると、主に「仏教」「天皇」に深い関わりがあることが見えてきますね。

 

それでは、ここまでの文化史ポイントをおさらいします。
■【ポイント①文化の内容把握】
■【ポイント②各文化がさかんだった時代の中心人物が誰なのかをおさえる】
■【ポイント③文化の特色と政治の中心人物から共通性を考える】
ぜひ、上記の3つのポイントを意識し、活用して学習を進めてくださいね。

それではまた次回お会いしましょう。
応援しています!

 

 

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