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投稿日:2025年10月23日

テーマ: 理科

秋の空が高く見えるのはなぜ?(中学入試理科「気象」の話)

こんにちは。
受験Dr.の科学大好き講師、澤田重治です。

10月も後半になり、日中は過ごしやすく、
朝夕にはひんやりとした風を感じるようになりました。

空を見上げてみると、夏とはちがって、空の青さがどこまでも広がり、
雲が高い位置に浮かんでいるように感じられます。

「天高く馬肥える秋」と言われますが、
秋に空が高く見えるのは単なる気のせいではなく、
ちゃんとした科学的な理由があるのです。

 

「空が高く澄んで見える」のはなぜ?

夏の空は、同じ青でもなんとなく白っぽく、
もやがかかったように見えることがあります。

これは、湿気が多く、空気中に水蒸気やちり、
ほこりがたくさん含まれているからです。
それに対して、秋になると空気が乾いてきて、
水蒸気やちりが減るため、空が澄んで見えるのです。

雲のイメージ画像

また、秋の雲は「すじ雲(巻雲)」や「うろこ雲(巻積雲)」など
雲としては一番高いところにできるものが多いため、
空がより高く見えるというわけです。

これは視覚的な錯覚ではありますが、
実際に空気が澄んでいるため、
より遠くまで見渡せて、空の奥行き感も増すのです。

 

その空気を運んできたのは「移動性高気圧」

では、どうして秋になると空気が乾燥して澄んでくるのでしょう?
そのカギをにぎっているのが「移動性高気圧」です。

秋の日本付近では、晴れた日が数日続いたかと思うと、
急に雨が降ったり気温が下がったりすることがあります。
これは、高気圧と低気圧が交互にやってくるためです。

このうち、秋晴れをもたらすのが「移動性高気圧」です。

 

もとになっているのは「揚子江気団」

この「移動性高気圧」は、中国の内陸部で発生する
「揚子江気団(長江気団ともいう)」がもとになっています。

揚子江気団は、温暖で乾燥した空気のかたまりで、
夏の「小笠原気団(高温多湿)」や冬の「シベリア気団(寒冷乾燥)」と
は性質が異なります。

この揚子江気団が高気圧となって日本付近にやってくると、
カラッと晴れて空気が澄み、空が青く高く感じられるというわけです。

同じ移動性高気圧の晴天は春にも見られますが、
春は黄砂や花粉、PM2.5などの影響を受けやすく、
空が少しかすんで見えることがあります。
そのため、秋のような“抜けるような青空”とは少し印象が異なります。

さらに、夏の入道雲などが空を覆っていた状態から、
秋のすじ雲やうろこ雲に変わることで、空の見え方に大きなギャップが生まれます。
これにより、視覚的にも心理的にも「空が高い」と感じやすくなるのです。

青くて高い空に出会ったら、
ぜひ「揚子江気団」のことを思い出してください。

次回もまた、楽しくて中学受験の役に立つ、身近な科学の話をお届けします。
どうぞお楽しみに!

理科ドクター