こんにちは。
受験Dr.の科学大好き講師、澤田重治です。
10月も後半になり、日中は過ごしやすく、
朝夕にはひんやりとした風を感じるようになりました。
空を見上げてみると、夏とはちがって、空の青さがどこまでも広がり、
雲が高い位置に浮かんでいるように感じられます。
「天高く馬肥える秋」と言われますが、
秋に空が高く見えるのは単なる気のせいではなく、
ちゃんとした科学的な理由があるのです。
「空が高く澄んで見える」のはなぜ?
夏の空は、同じ青でもなんとなく白っぽく、
もやがかかったように見えることがあります。
これは、湿気が多く、空気中に水蒸気やちり、
ほこりがたくさん含まれているからです。
それに対して、秋になると空気が乾いてきて、
水蒸気やちりが減るため、空が澄んで見えるのです。

また、秋の雲は「すじ雲(巻雲)」や「うろこ雲(巻積雲)」など
雲としては一番高いところにできるものが多いため、
空がより高く見えるというわけです。
これは視覚的な錯覚ではありますが、
実際に空気が澄んでいるため、
より遠くまで見渡せて、空の奥行き感も増すのです。
その空気を運んできたのは「移動性高気圧」
では、どうして秋になると空気が乾燥して澄んでくるのでしょう?
そのカギをにぎっているのが「移動性高気圧」です。
秋の日本付近では、晴れた日が数日続いたかと思うと、
急に雨が降ったり気温が下がったりすることがあります。
これは、高気圧と低気圧が交互にやってくるためです。
このうち、秋晴れをもたらすのが「移動性高気圧」です。
もとになっているのは「揚子江気団」
この「移動性高気圧」は、中国の内陸部で発生する
「揚子江気団(長江気団ともいう)」がもとになっています。
揚子江気団は、温暖で乾燥した空気のかたまりで、
夏の「小笠原気団(高温多湿)」や冬の「シベリア気団(寒冷乾燥)」と
は性質が異なります。
この揚子江気団が高気圧となって日本付近にやってくると、
カラッと晴れて空気が澄み、空が青く高く感じられるというわけです。
同じ移動性高気圧の晴天は春にも見られますが、
春は黄砂や花粉、PM2.5などの影響を受けやすく、
空が少しかすんで見えることがあります。
そのため、秋のような“抜けるような青空”とは少し印象が異なります。
さらに、夏の入道雲などが空を覆っていた状態から、
秋のすじ雲やうろこ雲に変わることで、空の見え方に大きなギャップが生まれます。
これにより、視覚的にも心理的にも「空が高い」と感じやすくなるのです。
青くて高い空に出会ったら、
ぜひ「揚子江気団」のことを思い出してください。
次回もまた、楽しくて中学受験の役に立つ、身近な科学の話をお届けします。
どうぞお楽しみに!