今回は、地球温暖化をテーマとした問題を使います。
今や、「環境問題=温暖化対策」と言えるほど重要なテーマです。この機会に押さえておくべきポイントを確認しましょう。
【問題】(2025 法政二中より抜粋)
・国連の気候変動に関する政府間パネル(ア)は、平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5℃以内に抑えるために、2035年までに世界の温室効果ガス排出量を2019年比で60%減らす必要があるとした。
・英エクセター大などのチームは、2023年中東ドバイで開催された国連の気候変動枠組条約締約国会議(イ)にて、温暖化によって、人類は地球にとって後戻りできない変化を起こす「ティッピングポイント(転換点)」に、間もなく到達する恐れがあるとの報告書を発表した。
・緩やかに見えた温暖化の影響は転換点に達すると、突然激化し、後戻りできない変化を引き起こすと言われる。一方、改善に向かうための転換点にも近づいているという。電気自動車(ウ)や再生可能エネルギーなどの技術革新だ。
(1)下線部ア、イ、ウの語句について、アルファベットを用いた名称を答えなさい。
良夫:(ア)国連の気候変動に関する政府間パネル、か。
温暖化対策に関係していることはわかるけど…
父:正解はIPCC。
良夫:初めて聞いた。
父:IPCCは国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)によって1988年に設立された。直接問われたら、ほぼ答えられないと思う。
良夫:よかった。ところで、UNEPは、ストックホルムの国連人間環境会議のあと設立されたんだよね。
父:ああ。IPCCは気候変動に関する科学的な評価報告書を作っている。2007年にはアメリカ元副大統領のアル・ゴアとともにノーベル平和賞を受賞しているんだ。
良夫:すごい。でも、平和賞ってどういうこと?
父:温暖化問題の人々への認知度を高めた功績が授賞理由だな。
良夫:そうなんだ。温暖化が今ほど深刻にとらえられていなかったってこと?
父:そう言えるだろう。当時は「京都議定書」はあったが、「パリ協定」はまだなかった。
良夫:(イ)気候変動枠組条約締約国会議 これは、わかる!COPだ。
父:正解。COPは毎年行われているので、注目度も高い。2023年はアラブ首長国連邦のドバイ、2024年はアゼルバイジャンのバクーで行われた。2025年はブラジルのベレンで開催される。
過去のCOPで採択されたもののうち、京都議定書(COP3/1997年)とパリ協定(COP21/2015年)は、押さえておきたい。
良夫:名前は知っているけど、中身はまだあやふやだ。
(ウ)はEVだね。
父:そのとおり。では続けよう。
自動車の環境規制で世界をリードしてきた欧州で、ガソリン車に対する規制を見直す動きが出ている。2022年、一度はエンジン車の新車販売を2035年に禁止すると決めた。そうした中でEUは2023年3月、合成燃料「e-fuel(イーフューエル)」を使うエンジン車は2035年以降も新車販売を認めることで合意した。イーフューエルは( A )と( B )から作られる合成燃料で、「人工的な原油」とも呼ばれる。燃焼時に( A )を排出するが、生産時には消費するためトータルで排出ゼロとみなされる。(エ)( B )も再生可能エネルギー由来の電気を使い、水を分解することで得られ、環境負荷はかからない。ガソリンなどに変わる脱炭素燃料として、自動車や航空機への活用が期待されている。
(2) 空欄A,Bに入る語を答えなさい。
(3) 下線部エの状態を何というか答えなさい。
(2)だけど、Aは二酸化炭素、Bは何だろう。
父:水を電気分解とある。
良夫:水は酸素と水素からできていたから、Bは水素か。
父:そうだ。(3)はどうだろうか。
良夫:カーボンニュートラルだね。
父:OK。
良夫:イーフューエルって聞きなれないんだけど、欧州ではもう使っているの?
父:まだ実用段階ではない。もしうまくいけば環境負荷のない燃料になるから、脱炭素につながると言える。ただし、目論見通りいくかどうかは…。
良夫:今後の動向を見守るとしよう。
いかがでしたか。国際機関の名称やその略称は、知らないと答えようがないので、どこかのタイミングで整理しておきたいところです。
今回の問題に関連する部分をまとめてみました。参考にしてください。
次回をお楽しみに。
<まとめ>
・1972 国連人間環境会議 ストックホルムで開催された初の環境国際会議。人間活動と環境の関係を世界規模で議論し、環境意識を広めた。
・1972 UNEP(国連環境計画) 国連人間環境会議を受けて設立された環境保全のための国連機関。
COP 国連気候変動枠組条約の締約国会議。温暖化対策を国際的に議論・調整する。
・1997 京都議定書 京都で開催されたCOP3にて採択。先進国のみに温室効果ガス削減の数値目標を義務付けた。
・2015 パリ協定 パリで開催されたCOP24にて採択。世界平均気温上昇を2℃未満、可能なら1.5℃以内に抑える目標を定めた。先進国も途上国も含む全ての国が対象となり、削減目標を自主的に設定・報告する仕組みを作った。