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投稿日:2016年09月20日

テーマ: 社会

社会が苦手な子への処方箋(歴史編)

受験ドクターで国語と社会を担当していますOです。

前回のブログの最後で予告しました通り、今回は「社会が苦手な子への処方箋(歴史編)」というお題で書きたいと思います。

 

国語に比べて社会は、「勉強の仕方がまったく分からない」というご相談を受けることは、めったにありません。生徒さん自身、おぼろげながらも「何を勉強したらよいのか」は自覚しているようです。「参考書の太字を中心に用語を覚えればいいんじゃないかなぁ…」というようなイメージを持っている子も多いと思います。

 

では、なぜ社会も「成績が良い・悪い」の差がつくのでしょうか。そのあたりを踏まえて、歴史の学習ポイントについてお話いたしましょう。

 

歴史に興味があるか、ないか

 

昔から「好きこそものの上手なれ」といいます。

塾で歴史の勉強に入るのは、5年後半からが一般的ですが、その前にNHKなどの大河ドラマや歴史まんが、歴史小説などで、歴史に興味を持ち、断片的にでも知識がある子は、概して歴史が強いようです。

 

保護者の方からのよくある質問で、「歴史まんがを読ませるのは有効でしょうか?」というのがあります。ここでポイントとなるのは「読むor読ませる」という点です。もし「強制的に」読ませるのであれば、あまり意味はありません。逆に、お子さんが自主的に読めば意味はあると思います。

歴史まんがは複数の出版社から出ていますが、個人的には「学習まんが少年少女日本の歴史(小学館)」がお薦めです(内容的にはさほど違いはないので、絵の好みで決めてもよいと思います)。

歴史1

点で覚えていないか

歴史は因果関係があります。なぜ、そのような事件が起こったのか(原因となる歴史的背景)、また、その結果どうなったのか(その後の影響)などを考えていくと、より深い勉強ができます。また、記述式の問題や図表問題にも対応できるようになります。

それとは対照的に、「点」で覚えてしまう典型例としては、「年号のマル暗記」があります。

歴史の年号の問題と言うと、みなさんはどういう出題形式を思い浮かべますか? 「応仁の乱は何年に起こったか」など、直接年号を問うてくるパターンを連想するかもしれませんね。でも、実際、入試問題レベルで聞かれるのは、「年号そのもの」ではなく、出来事の並び替えだったり、同じ時期に起こった出来事を選ばせる問題だったりするのです。出来事を年表に戻す問題もあります。年号を覚えるのは「歴史的事件の因果関係や時代背景を理解しているか」を理解する手段・道具と言っても良いのかもしれません。したがって、すべての歴史的事件の年号を正確に覚える必要はないのですね。

ここで、ちょっと例題を挙げてみましょう。

(例題)次の出来事を、古い順に並び替えましょう。

( 満州国の建国 / 日本が国際連盟から脱退 / 満州事変 / 柳条湖事件 / リットン調査団の派遣 / 五・一五事件 )

これらの出来事はわずか1931~33年の間に起こったものです。中学受験生が苦手とする近代史で、近代史は短い期間にいろいろな出来事が起こるため、すべての年号を暗記するのは大変ですよね。

そこで、それぞれの出来事の因果関係を軸に考えてみましょう。

柳条湖事件とは日本軍がみずから南満州鉄道を爆破し中国軍の仕業にした出来事で、満州事変のきっかけとなりました。1931年のことです(いくさ、いろいろ)。その後、日本(軍部)は満州国を強引に建国しようとします。しかし、時の首相であった犬養毅は満州国を認めたがらなかった。だから、五・一五事件で海軍将校に暗殺されるのですね(いくさにつながる)。そのあと、リットン調査団の報告を経て、それを不服とした日本が国際連盟から脱退する(いくぞ、さっさと)、という流れです。

正解は、柳条湖事件→満州事変→満州国の建国→リットン調査団の派遣→五・一五事件→国連脱退、でした。

かりに正確な年号が分からなくても、因果関係を考えれば並び替えはできることがお分かりだと思います。まずは、年号は中学受験用の参考書に載っている年表レベルを、ある程度、頭に入れましょう。また、先ほどの例題のように、点で、つまり年号と出来事だけを暗記するのではなく、歴史の流れを線にして理解しましょう。

 

反復学習しているか

 

「うちの子、社会が苦手なんですけど…」とご相談されるケースを、よくよくうかがってみると、実は反復練習の不足が大きな原因である場合が少なくありません。

 

昨今、「社会の勉強は暗記だけではない」と声高に主張されることが多いですが、裏を返せば、知識事項の習得は社会科の土台作りに欠かせません。私はあえて社会の「いろはの『い』」は暗記であると言いたいです。

歴史2

ただし、たんに覚えるとはいっても、一度覚えたとしても、しばらく勉強しないと忘れてしまうのはよくあることです(特に小学生は)。例えば、公民の学習単元に入ると、歴史の初めのほうを忘れてしまうとか…。これはいたって「普通の現象」なのですね。ここで「何で勉強したことを忘れているの!」と叱(しか)ってはいけません。

月並みな言い方ですが、「忘れたら覚えなおす」、「定期的に反復して抜け落ちを確認する」ことが大切なのです。繰り返し勉強することで、必ず身についてきます。

 

地図や年表で確認しているか

 

かつての教え子で、授業の合間など時間があれば地図帳をず~っと眺めている子がいました。「地図帳って、そんなに面白い?」と聞くと、「うん。旅行をしている気分になれるから楽しい!」との答えが返ってきました。「なるほどなぁ…」と感心したものです。当然ながら、この子の社会の成績はとても良いものでした。

 

現在、出版されている中学受験用の地図帳(帝国書院のものがベースになっていることがほとんどです)は、歴史的な場所(史跡)までしっかりと記載されています。例えば、長篠の戦いがどこで行われたのか(愛知県)、壇ノ浦の戦いはどのあたりの合戦なのか(山口県下関市)など、主要な合戦の場所は地図帳でも確認しておきたいところです。歴史3

 

年表の上手な活用もぜひお薦めしたいところです。歴史が苦手だった子が、年表を常に見えるところに張って確認するようにしたところ、成績がアップしたという例もあります。ある程度まで歴史の学習が進んだら、これまでの時代の流れを年表で確認するとよいでしょう

 

漢字で覚えているか

 

中学入試における社会科の答えは「漢字指定」で出されることが多いです。たとえ、それが小学生で習う漢字ではなかったとしても、容赦(ようしゃ)なく「漢字で答えなさい」という指示が出されます。

とはいえ、塾のテストによっては5年生までは「漢字指定」で問われることが少ない場合もあります。おそらく漢字指定にしてしまうと平均点がかなり下がってしまうからでしょう。でも、入試では漢字で書かせることが多いのですから、初めから漢字で覚えるべきものとして取り組んだ方がよいと私は思います。

特に歴史は小学生にとって複雑な漢字があり、何度も練習する必要があります。例えば、以下の用語に使われている漢字です。

 

墾田永年私財法の「墾」

藤原頼通→「頼道」ではありません!

元寇の「寇」→倭寇の「寇」と同じです!

御成敗式目の「御」→「御家人」の「御」と同じです!

壇ノ浦の戦いの「壇」

大隈重信の「隈」→阿武隈川の「隈」と同じです!

 

これらはかなりていねいに採点されます。小学生がよく間違えるものだからですね。是非、お子様に書けるかどうかのチェックをしてみてください。ただし、書けなくても怒ってはいけませんよ~。にこやかに数回ずつ練習させましょう!

 

以上のことを意識しながら、歴史の勉強に取り組んでもらえればと思います。

 

次回のブログでは「社会が苦手な人への処方箋(地理編)」というお題で書きたいと思います。どうぞご期待ください!

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