最新記事 2022年06月09日

テーマ: 算数

【文章題】「差集め算」か「速さと比」か

皆さま、こんにちは!

今回は、算数の学習で陥りがちな混乱について解説します。
勉強量や勉強時間に比例して成績が上がるのが理想なのですが、実際にはなかなかそうはなりません。
勉強をたくさんしたのに、逆に成績が下がってしまった、ということすらあります。
特に、夏休みの夏期講習などでかなりの時間を勉強に充てたのに、なぜか直後の模試で成績が下がる。
これは精神的にかなりこたえる状況で、モチベーションも大きく下がります。
勉強したはずなのに、どうして…?
こういうお悩みは多いと思います。
今回はなぜこういったことが起こるのか、その一例を考えてみます。

まず、次のような問題を考えてみてください。
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この問題に対して、一般的には2つの解法が考えられます。
ひとつは「速さの差集め算」で考える解法で、もうひとつは「速さと比」で考える解法です。
それぞれの解法で解いてみましょう。

最初に「速さの差集め算」で解いてみましょう。
この解法のポイントは、2つ速さのそれぞれで、どちらも始業時刻まで歩いたとしたら? と考えることです。
毎分80mで進むときは始業時刻の4分前に着くわけですが、そこで止まらずに4分間歩き続けるとします。
すると、学校を通り過ぎて、さらに320m先まで進むことになります。
また、毎分60mで進むときは、始業時刻に2分遅れますが、この場合はこの時点でひとまず止まるとします。
すると、毎分60mであと2分かかるわけなので、学校まであと120mの地点にいることになります。
これを図に整理してみると、以下のような感じになります。
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このときに、2つの速さそれぞれで歩いている時間は変わらない、という点がポイントです。
同じ時間を歩いたときに、2つの間でついた距離の差は320+120=440で、440mです。
毎分80mと毎分60mでは、1分間で20mの差がつきます。
この差が集まって、440mになる時刻が始業時刻だということです。
ですので、440÷20=22から、家を出発してから22分後が始業時刻ということになります。
家を出発するのは午前8時3分ですから、22分を足して、午前8時25分が正解です。
1分間で20mの差を集めたら? と考えている部分が、「速さの差集め算」に分類される理由ですね。

次に同じ問題を「速さと比」の問題と捉えて考えてみましょう。
この解法をとる場合は、家から学校までの距離は変わらない、という点に注目します。
2つの速さの比は、80:60=4:3です。
同じ距離に対して、速さの比が4:3で進むなら、かかる時間の比は逆比で3:4です。
ここで、2つの速さで進んだときの時間差を確認します。
毎分80mでは始業時刻の4分前、毎分60mでは2分遅刻ですから、その時間差は6分です。
図に表すと以下のようになります。
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この6分というのが、3:4の差の1にあたります。
よって、毎分80mのときは3×6=18で18分かかり、毎分60mのときは4×6=24で24分かかります。
どちらも出発時刻は午前8時3分ですので、毎分80mのときは午前8時21分に学校に着くということです。
一方で、毎分60mのときは午前8時27分に学校に着きます。
毎分80mでは4分前、毎分60mでは2分後ですから、どちらも始業時刻は午前8時25分になりますね。
ということで、正解は午前8時25分となります。
距離が一定なら、速さ比の逆比が時間比、という「速さと比」の基本的な考え方を利用している解法です。

さて、解説した2つの解法のうち、どちらが良い解法でしょうか?
これに関しては、どちらでも良いと思います。
「速さと比」で考えた方が、少し処理が楽で速いかなと思いますが、絶対というほどではないですね。
自分のわかりやすい方法で解き、それで早く正確に答えにたどり着けるなら、特に問題はないと思います。
ただし、自分が何を考え、どの解法をとっているかということを、はっきりと自覚していることが大切です。
そこがいい加減だと、テストの際に大きな混乱を生むことになります。
これが、冒頭で述べた「勉強をしたのに成績が下がる」ということが起こりえる、ひとつの理由です。

つまり、ひとつの問題に対して複数の解法が思いつくようになる、ということが実は大きな問題なのです。
もちろん、複数の解法が思いつくようになること自体は、良いことです。
レベルアップするためには、解法の幅を広げることを目指すべきです。
しかし、今まで思いつかなかったような解法が使えるようになったことにより、混乱や迷いも生じます。
それまではそもそも選択肢がなかったので自然に選んでいた解法が、急にひとつの選択肢になるのです。
解法選択という、新しい問題が生じるということです。

先ほどの例でいえば、一般的には「速さの差集め算」の解法を先に教わります。
その後で「比」についての学習があり、さらに「速さと比」についても学習します。
ここまで来てはじめて、先ほどの問題を「速さと比」で解くということが可能になります。
ここで、以前は「差集め算」として解いていた問題が、「比」でも解けるようになったという認識が大切です。
そこが曖昧だと、「あれ? これは差集め算だっけ? それとも比を使うのだっけ?」という状態に陥ります。
どちらで解いても何も問題はないのですが、そこがわかっていないと不必要な混乱や迷いが生まれます。
問題の意味をあまり考えずに解法の丸暗記的な勉強をしてしまっている場合は、特に注意が必要です。

また、図を書く場合も、その違いに注意することが大切です。
「差集め算」は距離についての図を書いていて、「速さと比」は時間についての図を書いています。
速さの問題を解く際には、距離についての進行図を書くことの方が多いです。
ですので、いま書いている図が時間についての線分図であることをはっきりさせておかないといけません。
ここも混乱が生まれやすいポイントです。
同様に、「速さの差集め算」は時間をそろえているのに対して、「速さと比」は距離の方をそろえています。
これもしっかり意識ができていないと、「あれ、何をやっているのだっけ?」となってしまいます。

ということで、勉強を続けていると、解法の幅は自然と広がっていくことになります。
これはとても大切なことであり、レベルアップには絶対に必要なことです。
しかし、選択肢が増えることによって、混乱や迷いが生まれることもまた事実なのです。
ですから、体系的な学習というのがやはり大切で、いま自分が学んでいることの位置付けを意識しましょう。
「差集め算」とか「速さと比」とか、きちんと解法に名称がついていることは、実はとても大切なことなのです。
そして、新しい解法を使う際は、今までとは別の解法を使っているということを意識して練習しましょう。
ちょっとした意識の持ち方で、結果が大きく変わることも多いです。
そして、最終的にはどんな解法でも解ける、状況によって解法が使い分けられる、となれば理想的です。
長い道のりですが、頑張ってください!

では、また次回お会いしましょう!