最新記事 2022年05月12日

テーマ: その他

【入試豆知識】1題にかけていい時間は?

皆さま、こんにちは!

今回は、6年生のご家庭から最近よく質問されることについて、ご説明しようと思います。
その質問とは、「家で勉強するときに、1題にかけていい時間はどのくらいですか?」です。
家でお子様の勉強の様子を見ていると、うんうんと考え込んで、下手すると1題に何十分も使っている。
宿題もたくさんあるし、これから過去問なども効率よくやっていかなくてはならないのに……。
こんな感じで勉強していて大丈夫なのだろうか?
同じような疑問をお持ちのご家庭も多いのではないでしょうか?
主に算数の勉強のやり方について、こういった質問が多いですね。
まず、6年生の算数ということに限定するなら、「1題は5分、どんなにかけても10分」と私はお答えします。
それ以上の時間を1題にかけるのは、あまり意味がないと思います。
理由はいくつかあります。

まず、1つ目の理由は、模試や入試本番で1題に何分使えるかということです。
例えば、とある塾の最近の模試の小問数をカウントしてみます。
6年生の算数、時間は50分で、小問数は28題あります。
50分で28題ですから、単純計算では1題に2分も使えないということになります。
もちろん、算数の場合は難しい問題を飛ばしたり捨てたりという判断は必要だったりします。
3問~5問くらいはできなくても大きな問題はないです。
また、問題によっては1分以内に解けるものもあるでしょう。
しかし、そのように考えたとしても、1題に5分以上をかけられるかというと、ちょっと厳しいですね。

ためしに入試問題も見てみましょう。
例えば、2019年の開成中は、60分で小問数は14題です。
2018年の女子学院中は、40分で小問数は26題です。
また、2019年の海城中は、50分で17題です。
学校や年度は、手元にある過去問から適当に選びました。
こうやって見てみると、やはり1題に5分以上はなかなかかけられないですね。
開成中ならば、問題によっては5分~10分かけても良いかもしれません。
しかし、女子学院中などは、単純計算では1題を1分30秒(!)で解かないといけません。
ということで、実際のテストの現場では、1題の問題にうんうんとうなって、考え込む時間はないのです。
ほとんどの問題がシンキングタイムなしで作業に入らないと終わらないです。
ですから、普段から実戦的な勉強を意識するなら、とにかく考えずに解けるレベルを目指すべきなのです。

では、なぜそんなに短い時間で考えることもなしに解けるのでしょうか?
その理由は単純で、要するに「その問題を知っているだけ」なのです。
つまり、知識です。
算数は、どちらかというと暗記科目ではないと考えられています。
しかし、実際には算数の実力のかなりの部分が、解法の暗記で支えられています。
私の実感では、7割~8割は知識で解いていると思います。
もちろん、解法の丸暗記ではダメですよ。
正しく理屈や原理まで含めて覚えているということです。
逆に、問題がスムーズに解けないときの原因の多くは「こんな問題は見たことがない」からなのです。
そしてこれが、1題に5分以上かけてなくいい、ということの、2つ目の理由です。

問題を前にして何十分も考え込んでしまうような場合、それは「解けない」というより「知らない」のです。
その問題を解く上での知識なりアイデアなりが、自分の中にはないというケースがほとんどです。
そんな状態で何分も考え込んだところで、うまい方法が思いつくことはまずないです。
「下手の考え休むに似たり」という言葉がありますね。
元々は将棋や囲碁の言葉だと思いますが、これは真実だと思います。
私は将棋の有段者ですが、どんなに考え込んだところで、自分の知識にない手は思い浮かびません。
逆にほとんどの場合、指すべき手は直感的に浮かんでいるのです。
プロの将棋指しが、何時間も長考に沈んだりすることがありますが、指し手の候補は直感のはずです。
ただ、直感で浮かぶ候補手がいくつかあるので、その比較検討をしているのが、長考の理由です。
あるいは、自分の直感の裏付けをとったり、勘違いがないか確認をしたりする時間をとっているだけです。
その証拠に、プロは一手5秒とか10秒という短い考慮時間でも、おそろしく正確な手を指します。
逆に言えば、その直感の精度を上げるために、日々努力しているのがプロなのです。

私は、算数のトレーニングもこれに近いと思います。
算数が名人級にできる人は、問題を見たときに浮かぶ直感の精度がおそらく高いのです。
では、その直感はどうやって鍛えられているのかというと、それは今までに解いた問題の知識や経験です。
その中には、教えてもらったことや、解説を読んで学んだことも当然含まれています。
ですから、10分考えてもダメなら、それはもう知らない問題だと諦めて、解説を見た方が良いのです。
もちろん、解説を読んだだけで、できるようになるわけではありません。
そこで学んだ知識を本当に自分のものにするためには、何度も解き直して反復練習する必要があります。
それを繰り返すことで実力として身についていきます。
そしてこれが、1題に5分以上かけてなくいい、ということの、3つ目の理由でもあります。

つまり、算数に関わらず、トレーニングというのは時間がかかります。
反復練習する時間も必要ですし、ある程度の問題量に触れる時間がどうしても必要です。
極論を言えば、解いた問題の数と量で実力は決まります。
しかし、入試というのは、入試日という絶対の締切りがあります。
2月1日が入試日なら、2月1日までに実力を身につけなければいけません。
ですので、一番重要なことは時間効率なのです。
限られた時間の中で、どこまで効率よくたくさんの問題に触れて、それを自分のものにできたかです。
そのためには、1題に費やす時間をできるだけ短くして、問題をこなす回転数を上げなくてはいけません。
とにかく、「時間」が最重要のファクターなのです。
ということで、こうやって考えると、「1題は5分、どんなにかけても10分」という結論になるわけです。

もちろん、1題をじっくり考えて取り組む、ということを否定しているわけではありません。
1題を考えに考えて自力で解けた経験というのは、自信にもなりますし、得るものは決して少なくないです。
そういったことを経験する時間というのはとても大切です。
ただし、それをするには6年生の1年間というのはあまりにも短いのです。
ですから、じっくりと問題に取り組むというようなことは、4年生や5年生の余裕があるうちにやるべきです。
そのためにも、できれば受験勉強を早めに始めて、時間的な余裕を作っておくのも大切ですね。

ちなみに、先ほど算数の入試問題の時間と小問数をチェックしましたが、これが国語ならどうでしょうか?
例えば、先ほど算数でも挙げた、2019年の海城中の国語を見てみましょう。
海城中の国語は選択肢問題が中心ですが、この年度も選択肢問題だけで18題あります。
すべてが、長文読解の内容に関する、4択の選択肢問題です。
この他に、中型の記述が2題と、小型の記述が1題、漢字の書き取りが5題です。
では、選択肢問題1題にかけられる時間は、一体何分でしょうか?
制限時間は50分で、もちろん物語文・論説文の2つの長文を読む時間もこれに含まれます。
すると、1題に許されるシンキングタイムは1分以内(!)です。
もし、1題に3分かけていたら、それだけで54分かかることになります。
ですから、かけられる時間は1分、どんなに考えても2分で答えるということが必要です。
国語は、算数のようにわかりやすい捨て問というのはないので、全問完答するのが基本です。
この年度の合格平均はおよそ7割なので、合格者はこのスピード感で7割以上を得点できるということです。
すごいですね!

ということで、科目が変わっても、中学受験で磨かなければいけないことはあまり変わらないのです。
典型問題に関しては、見た瞬間に解法や方針が定まり、すぐに作業に入れる必要があります。
そのためには、自分にとっていま必要なトレーニングにしつこく取り組み、反復練習することです。
これしかできるようになる道はありません。
いつも時間を意識して、正しいトレーニングに時間を使うようにしましょう。

最後に、先ほど将棋について少し書きましたが、私が高段者になるために何度も解いた問題集があります。
その問題集の帯にはこう書かれています。
「考えればわかるでは、競り合いに勝てません!」
ここまで読んでいただいた方なら、意味はわかりますよね?

では、また次回お会いしましょう!