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投稿日:2019年05月02日

テーマ: 算数

0.999999999…=1を証明せよ!

みなさんこんにちは。受験ドクター算数科の久米です。

前回のコラムでは、受験校によって大きく問題のタイプが異なるということをお話ししました。
大学付属や系属校では知識や計算力を問うシンプルな問題が多く出題され、
系列の大学を持たない受験校では思考力や記述力を問う問題の割合が高いというお話です。
では、最近の中学入試ではどちらのタイプの問題が増えているのでしょうか。
そう、みなさんご存じですね。明らかに受験校タイプの問題が増えています。

このタイプの問題が増えている理由は大きく分けて二つあります。
一つは思考力・記述力を重視する共通テストが導入される大学入試改革の影響です。
もう一つは公立中高一貫校の入試問題の影響です。
公立中高一貫校の入試問題では、問いの条件に沿って手順を考える問題や作文など、
答えが一種類に限定されない問題が多く、
その影響が徐々に私立中学校の入試問題に表れています。

そこで今回のコラムでは、答えが複数存在する問題の筆頭格、
証明問題に挑戦してみたいと思います。

分数の分子÷分母をすると小数になるということは皆さんご存知ですね。
例えば、kume2を小数に直すと、1÷2=0.5となるので、kume2=0.5です。
kume4を小数に直すと、4÷5=0.8となるので、kume4=0.8です。

しかし、全ての分数を小数に直すことはできません。
例えば、kume5を小数に直すと、1÷3=0.333333333…となり、いつまでも3が続いて割り切れません。
kume6も小数に直すと、1÷9=0.111111111…となって割り切れませんし、
kume7は小数に直すと、2÷7=0.285714285714…となって、同じ数字の繰り返しになります。

こういう割り切れない数の存在って、不思議ですよね。
そしてなんとなくモヤモヤしませんか?
数字をいくら並べても表せない数があるなんて。
私は小学生のころ、ずっとモヤモヤしていました。
そして、そんな私を最もモヤモヤさせたのが、表題にもある0.999999999…なのです。
1になりそうでならない、この絶妙なギリギリ具合がもどかしくてたまりません。

しかし、なんということでしょう、実は現代数学の世界では、
0.999999999…=1であることが証明されているんです。

えーっ!信じられない!
そう思った皆さんのために、小学生の使う分数と小数の知識をもとにして、
「0.999999999…=1」を3つの方法で証明してみたいと思います。
どの証明が最も分かりやすいか、みなさん最後まで読んで判定してください。

最初は分数のかけ算で証明する方法です。
kume8を3倍すると1になります。そしてkume5=0.333333333…です。
だから、0.333333333…を3倍しても1になるはずです。
0.333333333…×3の答えは0.999999999…です。
したがって、0.999999999…=1が証明されました。
どうでしょう?納得していただけましたか?
これはア=イなら、ア×3=イ×3になるという、算数でよく使う考え方をもとにしています。

次は引き算で証明する方法です。
1-0.999999999…を計算します。そうすると、答えは0.0000000000…となり、
ひたすらゼロが続いてしまい、どこまで書いても1が出てきません。
引き算をして差がゼロとなるので、この2つは同じ大きさです。
したがって、0.999999999…=1が証明されました。
いつまで経ってもゼロが続くのでゼロというのは、興味深い考え方ですね。
この理論は高校で詳しく学習する考え方なので、
小学生で感覚的にわかる人は多くないかもしれません。

最後に、消去算を使って証明する方法です。
まず、0.999999999…=㋐とします。
次に、㋐を10倍します。そうすると、㋐×10=9.999999999…となります。
0.999999999…のずっと続く9を消すために、
㋐×10=9.999999999…から、
㋐×1=0.999999999…を引き算します。
式の左側を計算すると㋐×10-㋐×1=㋐×9です。
式の右側を計算すると9.999999999…-0.999999999…=9です。
筆算すると、
㋐×10=9.999999999…
㋐×1 =0.999999999…
㋐×9 =9
したがって、㋐=9÷9=1 
㋐=1であり、㋐=0.999999999…でもあるので、
0.999999999…=1が証明されました。
㋐=㋑であり㋐=㋒であるなら、㋑=㋒になるという証明方法です。
永遠に続く9を消すために、元の式を10倍して引き算するという発想が面白いですね。

みなさんはどの証明方法が一番納得できましたか?
個人的には最後の消去算の説明がすっきりしていて一番好みです。
最初は㋐=0.999999999…と書いたのに、
いつのまにか㋐=1に変わっている驚き。
この気づきこそが、算数の醍醐味だと思います。
このような新鮮な感動を、一つでも多く生徒さんに与えたい。
そう思っていつも授業に臨んでいます。

それではまた。受験ドクター、久米でした。

算数ドクター