みなさん、こんにちは。
受験Dr.算数・理科科の川上です。
中学受験の理科では、近年「環境問題」が頻出テーマとして注目されています。
その中でも特に出題が増えているのが生物多様性と外来種問題です。
これは単なる理科の知識ではなく、社会やニュースとも強く結びついており、子どもたちにとって理解の深まりやすいテーマです。
ここでは、背景知識と家庭でのサポート方法を紹介します。
1.なぜ「生物多様性と外来種」が入試で出るのか
外来種問題は、地球温暖化やごみ問題に比べると、一見身近に感じにくいかもしれません。
ですが、日本の自然や暮らしに直接影響を与えるテーマであるため、社会的関心が高まっています。
中学入試では「アメリカザリガニ」「ブルーギル」「アライグマ」など、子どもたちが耳にしたことのある生き物が題材となることが多いです。
こうした具体例は、暗記ではなく「なぜその生き物が問題になるのか」を考える力を試す出題につながります。
2.外来種がもたらす影響
外来種とは、本来その地域にいなかったのに、人間の活動によって持ち込まれた生物を指します。外来種が増えると、次のような影響が出てきます。
1. 在来種との競合
外来種がエサやすみかを奪い、元からいた生物(在来種)が減少する。
例:ブラックバスによって在来の小魚が食べられる。
2. 生態系のバランスの崩壊
ある一種が増えすぎると、食物網全体が崩れてしまう。
例:外来植物が広がり、昆虫や鳥のすみかが失われる。
3. 人間生活への被害
農作物を荒らしたり、病気を媒介するケースもある。
例:アライグマによる農作物被害。
これらはニュースや地域の話題でも取り上げられるため、子どもにとっても実感を持ちやすい領域です。
3.よく出るキーワードとポイント
入試でよく問われるのは、次のような観点です。
- 生態系:生態系とは、生物とそれを取り巻く環境(光・水・空気・土など)が互いに関わり合い、一つの仕組みとして成り立っているものです。森や川、池、海、草原など、あらゆる自然の場がそれぞれ独自の生態系を持っています。その中では「生産者(植物)→消費者(草食動物・肉食動物)→分解者(菌や微生物)」というエネルギーや物質の流れが循環し、バランスを保っています。たとえば、落ち葉が分解されて土に戻り、それを植物が利用し、また動物に食べられる――この循環があってこそ生命はつながっています。外来種は、この流れのどこかに入り込むことで、在来の生物を減らしたり、循環のバランスを崩したりします。入試では、この「全体の仕組み」が崩れると何が起きるのかを考える力が問われます。
- 食物連鎖・食物網:ある生物が減ると、他の生物にどんな影響が出るかを考えさせる問題。
- 生物多様性:生物の種類が多様であることが自然環境を安定させる理由。
- 具体例:アメリカザリガニ、セイタカアワダチソウ、ヒアリなど。
こうした知識を覚える際には、「名前を暗記する」のではなく「その生物が入ると何が変わるのか」を筋道立てて考えることが重要です。
4.家庭でできる学びの工夫
保護者の方ができる工夫は、難しい知識を教えることよりも「話題にすること」です。
- ニュースを一緒に確認する
「ヒアリが発見された」というニュースを見たら、「どうして問題なの?」と問いかけてみる。 - 公園や川での観察
子どもがザリガニや外来植物を見つけたら、在来種との違いや影響について調べてみる。 - 図鑑や本を活用する
写真やイラストで見ると、外来種と在来種の違いが直感的に理解できます。 - 家庭の会話に取り入れる
「もしある生物がいなくなったらどうなる?」と仮定の話をするだけでも、子どもの思考力は大きく育ちます。
5.環境問題から「考える力」を育てる
外来種問題は、単に「悪いもの」と決めつけるだけでは解決できません。ペットとして持ち込まれたもの、輸入品と一緒に入ってきたもの、人間の便利さを求めた結果など、背景には必ず「人間の行動」があります。
この点を子どもと一緒に考えることで、受験の枠を超えて「社会と科学の関わり」を実感できます。
中学受験の理科における「生物多様性と外来種問題」は、点数を稼ぐための暗記単元ではなく、身近な自然から社会全体を考える入り口です。保護者の方が日常の中で会話を広げてあげることで、子どもの理解は格段に深まります。
それでは今回はこれで失礼します。
受験Dr.川上亮

