最新記事 2017年09月07日

テーマ: 理科

なぜ鉄は冷たいの?~理科の最新入試傾向➀~

皆さんこんにちは。
受験ドクターの理科大好き講師、澤田重治です。

近年の理科の中学入試問題を見ていると、明らかに流行(?)していると思われる傾向があります。
それは、本で学んだだけの知識ではなく、身の回りの科学にまで落とし込めているかをみる問題です。

例えば、次の問題をご覧ください。

2017年度 女子学院中 大問Ⅲ 3

冬の寒い日、理科室の机に同じ大きさの鉄板と、発泡ポリスチレンの板をしばらく置いてから手のひらを押し付けたところ、鉄は冷たく感じ、発泡ポリスチレンは冷たくはなかった。この現象を説明している次の文章の[①]、[②]、[④]はあとの記号から選び、[③]、[⑤]にはことばを書きなさい。[⑤]は1つだけ書くこと。

手を置く前、鉄板の温度は発泡ポリスチレンの板と比べると[①]温度で、手のひらの温度と比べると[②]温度である。
鉄板が冷たく感じたのは、鉄は金属であり、発泡ポリスチレンより[③]という性質があるからである。同じ温度、大きさの氷を板の上にのせたときには、[④]。[③]という性質以外でも金属に共通の性質としては[⑤]ことなどがあげられる。

 ① ア 高い  イ 同じ  ウ 低い
 ② ア 高い  イ 同じ  ウ 低い
 ④ ア 金属板の方が早くとける  イ 発泡ポリスチレンの方が早くとける
   ウ どちらの上でも同じようにとける
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鉄の方が冷たく感じるというのは、おそらく誰もが経験していることなのですが、その理由を科学的に考えたことがあるでしょうか?
同じ環境に置いてあれば、鉄も発泡ポリスチレン(いわゆる発泡スチロール)も同じ温度になっているはずなのですが、大人の方でも、「鉄の方が、実際に温度が低い」という勘違いをしている場合が多いようです。

では、同じ温度なのに、なぜ鉄は冷たく感じるのでしょうか?
その秘密は、「熱伝導率」――つまり、熱の伝えやすさにあります。

調べてみると、鉄の熱伝導率がおよそ80(W/m・K)であるのに対して、発砲ポリスチレンの熱伝導率は0.02~0.04(W/m・K)程度だそうです。
単位の話は専門的になってしまうので割愛しますが、数値が大きいほど熱を伝えやすい物質です。
つまり、単純に考えると、鉄は発砲ポリスチレンの2000~4000倍も熱を伝えやすいことになります。

ここで、もし理科室の気温が体温(体表面の温度)より高ければ、鉄がもつ熱が手に伝わってくるので、触れると熱く感じることでしょう。
しかし、この問題の設定は「冬の寒い日」なのですから、周囲の空気と等しい温度である鉄の温度は、手の表面温度よりも低いことになります。
すると、手がもっている熱が鉄板に逃げてしまうので、触れると冷たく感じるのです。

一方、発砲ポリスチレンは熱を伝えにくいため、触れてもあまり熱を奪われることがありません。
だから、冷たくは感じないのですね。もちろん、温かくもありませんが……。

まとめると、触れたときに温かく感じるか冷たく感じるかは、物質そのものの温度の問題ではなく、手に熱が伝わってくるのか、手から熱が逃げていくかの問題だったということです。
難しいですね。

このように、小学生にも理解できる「身近な科学」の話題は、これからも様々な中学校の入試問題で狙われ続けることでしょう。
そこで、今回から入試直前まで、私たちの身近なところに転がっている科学の話を紹介していきたいと思います。

まったく同じ話が出題されなくても、目の付け所や考え方は、きっと役に立つと思います。
どうぞご期待ください。