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投稿日:2023年08月25日

テーマ: その他

【よくあるお悩み】ミスを減らすには?③

皆さま、こんにちは!

「ミスを減らすにはどうしたらいいですか?」というお悩みについて考えている第3弾です。
今回も、私が実際に現場で遭遇した事例を使って、どのような対応をしているかをご説明します。
難しい問題を解きすぎたせいで生まれる、判断ミスについてが今回のテーマです。

 

ケース③ 簡単な問題を難しくとらえすぎている

私が2年前に指導したCくんについての話です。
Cくんは大手の中学受験塾の最上位クラスに在籍していた男の子でした。
いちばん上のクラスから落ちたことは一度もなく、開成中学を第一志望として勉強していました。
6年生の前期の模試で、開成中学の合格判定が80%出ており、順風満帆の受験勉強でした。
誰もが羨むような成績を取り続けていたCくんですが、6年生の夏に思わぬつまずきをしました。
6年生の夏期講習明けのテストで大きく成績を落としてしまったのです。
得意科目は算数でしたが、その算数の偏差値がはじめて50台になってしまいました。
夏期講習ではみっちりと勉強をしたはずでした。
しかし、結果として出た偏差値は今までに見たことがないような数字でした。
いったい何が起きたのか、状況がよくわからず、ご家庭は不安でいっぱいになりました。
そんな状態でお母様が受験Dr.に相談に来られたのが、6年生の9月末でした。

 
受験まであと半年を切っている状態です。
Cくんはお姉さんも受験Dr.に通われていたことがあり、女子の最難関中学に合格しています。
お母様は中学受験のこともよく熟知されており、受験Dr.にも信頼を寄せて頂いていました。
それでも、立て直すことが可能なのか、受験まで間に合うのか、お母様は心配でたまらないという感じでした。
実際にCくんの様子を見せて頂くまえに、お母様から夏の学習状況を詳しく教えて頂きました。
Cくんはとてもまじめな性格で、集団塾から出された宿題はすべて終わらせないと納得しないということでした。
夏期講習中はかなりハードな宿題が出ていたのですが、日によっては寝ないで宿題をやっていたそうです。
続きは明日やればいいから寝るように、とお母様が言っても、がんとして聞かなかったそうです。
小学6年生の話ですから、Cくんのまじめさがよくわかります。
しかし、そこまで頑張っていたのに、逆に成績は落ちてしまったのです。

 
お母様はお子様が夏にムリをしすぎたのではないかと考えられていました。
私もまったく同意見でした。
経験的に、算数の偏差値が急落するというようなことはあまり考えられません。
特に、70近い偏差値をいつも取っていたお子さんが50台に落ちるということは、そうあることではないです。
算数の実力が大きく下がっているはずはなく、何らかの理由でうまく力が発揮できなかっただけのはずです。
ただし、夏期講習明けのテストでいつもより成績が下がるということは、しばしばあります。

 
成績が下がった原因として、可能性は2つ考えられるとお母様にお答えしました。
ひとつの可能性は、夏の疲労からテストでミスを連発してしまったということ。
どんなに実力があったとしても、疲労が蓄積している状態では力を出し切るのは難しいです。
もうひとつの可能性は、夏に難しい問題をやりすぎたせいで、テストで解法選択のミスをしてしまったということ。
簡単な問題を難しく考えすぎてしまっているということは、勉強の仕方によっては起こりえます。
Cくんの場合は、どちらかというと後者が原因なのではないかと私は考えました。
いずれにしても、一時的な不調なので、そんなに心配しなくて大丈夫です、とお母様にお伝えしました。

 
数日後、Cくんがお母様と一緒に体験授業に来られました。
体験授業の教材として、私が用意したのは、とある中学校の入試問題でした。
非常にオーソドックスな問題が中心の学校で、Cくんの実力からすれば簡単すぎるといってもいいレベルです。
実際にCくんに解いてもらうと、苦もなくすらすらと解いていきます。
どんな風に考えたのか、解き方もすべて説明してもらいましたが、その説明も完璧です。
ただし、解き方に少し回りくどいところがあります。
やっていることは何も間違っていないのですが、そんな風に難しく解かなくても解けるのに、と感じました。
平面図形の問題を解いてもらったときも、やはり見事に解いているのですが、難しく処理しすぎていました。
それまでは何も口出ししないようにしていたのですが、もっと簡単な解き方をそこで初めてやってみせました。
それを見たCくんは、「あっ…、そっか、たしかに…」とつぶやいて、しばらく問題を見つめていました。
Cくんはとても優秀で、私が示した解法の方が、シンプルで計算も簡単であることをすぐに理解していました。
しかも、その解法というのは、中学受験の勉強をしていれば誰もが学ぶ、もっとも基本的な解法だったのです。

 
この時点で、体験授業前に私が予想したことは、ほぼ当たっているという実感を持ちました。
つまり、Cくんは難しい問題を解きすぎたせいで、簡単な問題も難しくとらえるようになっていたということです。
野球の練習に例えるなら、難しい変化球を打つ練習をしすぎてフォームが崩れしまったような感じです。
以前なら簡単に打てていたストレートが、むしろまっすぐに打ち返せなくなっているのです。
そうだとするなら、やるべきことは以前のような基本のフォームを取り戻すことです。
私はCくんとお母様に2つのことを提案しました。
ひとつは、集団塾の宿題の中で、いま取り組んだ方がよい問題を取捨選択すること。
取捨選択は私がするので、それ以上はムリにやりすぎなくてよいと伝えました。
もうひとつは、オーソドックスで簡単な問題を私が宿題として出すので、それに取り組む時間を作ること。
基本的な解法の反復練習をおろそかにせずに取り組むことが、成績回復の一番の近道であると伝えました。
一時的に勉強量が少なくなり、難易度も下がっているように感じるかもしれないが、それで問題ない。
必ず以前のような偏差値が出るから、信じて一緒にやっていこうとCくんに伝えました。

 
その後、正式な授業が始まって1か月ほどで、Cくんの算数の偏差値は以前のような数字に戻りました。
開成中学の合格判定も、70%の数字が出ていました。
ともすると、Cくんは頑張りすぎるところがあるので、適切な勉強量に調整することに私は集中しました。
この感じであれば、絶対に入試では良い結果が出ると確信していました。
結果として、Cくんは開成中学に無事に合格しました。
しかも、チャレンジで受けた筑波大学附属駒場中学にも合格するという嬉しいおまけつきでした。
2月の都内入試は全勝、という素晴らしい結果で中学受験を終えたのでした。

 
このCくんのケースから学べることとして、以下のようなことが挙げられます。
①勉強量を増やしたからといって、それがそのまま成績の上昇につながるとは限らない
②難易度の高い問題を解きすぎた結果、逆に簡単な問題を難しくとらえるようになる可能性がある
なぜそういうことが起こるかというと、勉強をすればするほど、解法選択という問題が生じるようになるからです。
勉強を続けていくと、ひとつの問題に対して、複数の解法が思いつくようになります。
それ自体は悪いことではなく、より高いレベルを目指すならむしろ必要なことです。
しかし、目の前の問題に対して最も効率の良い解法は何かということを、逆に考える必要が出てもくるのです。
ここが整理されていないままテストを迎えてしまうと、問題を前にして迷いが生じることになります。
これでも解けそうだし、このやり方もありそうだし…と考えているうちに、時間がたってしまいます。
そこで慌てて問題を解いてしまい、計算ミスをするということは十分ありえます。
また、複数の解法が考えられる問題で、簡単な解法が選択できずに、処理に手間取ったということもありえます。
これは解法選択について、判断ミスをしたということができるでしょう。

 

困ったときは基本に返る

新しい技術を習得しようと努力をした結果、一時的に成績を落とすという現象はスポーツなどでも起こります。
いわゆるスランプという状態です。
受験勉強では、夏期講習明けの時期にこのような状態に陥る可能性が高いです。
しっかり勉強したはずなのに思わしい結果が出ないときは、本当にがっかりします。
そんなときは、結果が出ていない理由を冷静に分析することが大切です。
ご家庭で判断がつかないときは、プロの先生に見てもらうというのもひとつの手です。
適切な解法を選択できているかチェックしてもらい、混乱している部分を整理してもらうということが重要です。

 
次回は、また違ったケースについてご紹介します。
では、また次回お会いしましょう!

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