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投稿日:2024年01月18日

テーマ: 理科

熱気球ってなんで浮くの?【中学受験 理科ポイント (浮力)】

こんにちは。
受験Dr.の坂井です。

 

今回は熱気球のしくみについて考えていきます。気球は風船部分と人が乗ったゴンドラ部分で構成されています。
風船部分とゴンドラ部分をあわせて100㎏以上あります。
そんな重いものが、風船部分に入っている空気をあたためることにより、浮かび上がるのです。
気球のイラスト

 

みなさんの中には、物体を水の中に入れたとき、物体に浮力がはたらくことを学習したことがある人もいるでしょう。
「物体がどかした液体の重さ分」だけ浮力がはたらくというものでした。

 

実は熱気球も浮力がはらたくことによって浮かび上がっているのです。
発生する浮力の大きさは、「熱気球がどかした空気の重さ分」です。
この浮力と熱気球が浮かび上がる原理について考えていきましょう。

 

熱気球が浮かびあがる原理

空気を除いた風船部分と人が乗ったゴンドラ部分の重さの合計が350㎏の熱気球があります。
気温を20℃とします。空気1㎥あたりの重さは、20℃で1.2㎏,80℃で1.0㎏,85℃で0.88㎏とします。熱気球の風船部分の体積は常に1200㎥で一定であるとします。

 

≪熱気球の風船部分の空気を80℃まで暖める≫

20℃の空気1200㎥の重さは、1.2㎏/㎥×1200㎥=1440㎏ です。
これが「熱気球がどかした空気の重さ分」の浮力です。(上向きの力)
ここから熱気球の風船部分の中の空気を温めたところ80℃になりました。
このときの熱気球の中の空気1200㎥の重さは、1.0㎏/㎥×1200㎥=1200㎏ となります。(下向きの力)
また、空気を除いた風船部分と人が乗ったゴンドラ部分の重さの合計が350㎏(下向きの力)あるので、上向きと下向きの力の様子は図1のようになります。

 

図1

上向きの力(1440㎏)< 下向きの力(1200+350=1550㎏)となるので、熱気球の風船部分の空気を80℃まで暖めてもまだ熱気球は浮かび上がることができないことがわかります。

 

 

≪熱気球の風船部分の空気を85℃まで暖める≫

20℃の空気1200㎥の重さは、1.2㎏/㎥×1200㎥=1440㎏ です。
これが「熱気球がどかした空気の重さ分」の浮力です。(上向きの力)
ここから熱気球の風船部分の中の空気を温めたところ85℃になりました。
このときの熱気球の中の空気1200㎥の重さは、0.88㎏/㎥×1200㎥=1056㎏ となります。(下向きの力)
また、空気を除いた風船部分と人が乗ったゴンドラ部分の重さの合計が350㎏(下向きの力)あるので、上向きと下向きの力の様子は図2のようになります。

図2

 

上向きの力(1440㎏)> 下向きの力(1056+350=1406㎏)となるので、熱気球の風船部分の空気を85℃まで暖めたら熱気球は浮かび上がることがわかります。このとき、上向きに34㎏(1440-1406)の力でゆっくり上昇していきます。

 

以上のことから、熱気球が浮かび上がる原理について説明すると次のようなことがいえます。

(1) 空気を温めると1㎥あたりの重さは軽くなるので、熱気球内の空気の重さが軽くなる。これにより、熱気球内の空気の重さ+空気を除いた風船部分の重さ+ゴンドラ部分の合計の重さ(下向きの力の合計)は軽くなる。
(2) 熱気球の風船部分の体積が一定であるとき、熱気球のまわりの温度が一定である限り、熱気球内の空気の温度に関わらず浮力(上向きの力)の大きさは一定である。
(3) ①②より熱気球の風船部分の中の空気の温度が高くなると、下向きの力が小さくなり、浮力の方が大きくなることによって熱気球は浮かび上がる。

 

では、浮かびあがった熱気球を降下させるときはどうでしょうか。
上昇させるときの原理の逆を考えればわかりますね。
熱気球内の空気の温度を少しずつ下げてくればよいわけです。

 

それでは、みなさん
またお会いしましょう。

理科ドクター