みなさん、こんにちは。
受験Dr.算数・理科科の川上です。
本日はタイトルにある通り「バイオミメティクス」についてお話しいたします。
そもそも「バイオミメティクス」ってなに?となった子も多いのではないでしょうか。
バイオミメティクスとは、「生物の構造や機能、生産プロセスを観察・分析し、そこから新しい着想を得て新しい技術の開発やものつくりに活かす科学技術のこと」だそうです。
簡単に言うと、様々な生き物のつくりをまねして、新しくてすごいものつくろうぜ!ってことです。
実際の入試問題から、いくつか紹介したいと思います。
【問題】私たちの暮らしには生物にヒントを得て発明されたり、改良されたりしたものが多くあります。
次はどのような効果をヒントにしたか、それぞれ1つずつ選びなさい。【学習院中等科2024より抜粋】
1 カワセミのくちばしにヒントを得た、新幹線の先頭部分の形状
1. しょうげきをやわらげる
2. 雨水をつきにくくする
3. 美しい形状にする
4. 乗り心地をよくする
さて、答えはどれだと思いますか?
正解はアの「しょうげきをやわらげる」です。
新幹線はすさまじい速度で走行するため、トンネルに入った際には空気が圧縮され、出口付近で大きな音が鳴ってしまっていたのです。(ちなみに日本は騒音基準が世界一厳しいそうです)
そこで着想を得たのがカワセミです。カワセミは水中の獲物を捕らえる際に、空気中から水中に高速でくちばしを入れるのですが、その際に生じる水しぶきの量が極めて少なかったそう。
研究の結果、カワセミのくちばしは最も空気抵抗が小さい形をしていることがわかり、新幹線の先頭部分の形状に応用し、問題を解決したのです!
発見した方の洞察力、観察眼にただただ驚かされた記憶があります。
さて、次の問題です。
2 カの口先にヒントを得た、ごく少量を採血するための針
1. 血が固まりにくい
2. 血が止まりやすい
3. さされても痛くない
4. ささったらぬけにくい
さて、今度はどれが答えでしょう。
正解はウの「さされても痛くない」でした。
確かに、カに刺されて気付くのってかゆくなってからのことがほとんどですよね。カの針は先が細かいギザギザになっており、皮膚との接触面積が小さく細胞の損傷を最小限にして皮膚に入り込んでくるため痛みを感じにくいのだそう。
注射が苦手な子たちも無痛に近い状態であれば短時間で採血が済みそう。
ものすごい発明です。
さて、次に進みましょう。
3 ハスの葉の表面にヒントを得た、ヨーグルトのふたの裏
1. つるつるしてヨーグルトがつきにくい
2. 断熱効果に優れ、中のものがくさりにくい
3. 光を通しにくい
4. ふたを加工しやすい
さあ、どれだと思いますか?
正解はアの「つるつるしてヨーグルトがつきにくい」でした。
ハスの葉は非常に撥水性が高く、水は葉の上で丸い水滴となりコロコロ転がっていきます。これはハスの葉の表面の超微細な突起物があり、さらにその先に水に溶けにくいワックスがついているためです。その構造をヨーグルトのふたの裏に施すことで、ふたの裏にヨーグルトがつくことを防いでいます。
私が小さい頃はスーパーから帰ってくるとヨーグルトがふたにくっついてしまっていることがありましたが、確かに最近は見かけないと思っていました。
まだまだ続くバイオミメティクス。
また次回お会いしましょう。
受験Dr.川上亮