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投稿日:2024年04月08日

テーマ: 理科

中学受験理科から学ぶ発酵② 酵母を用いた食品―お酒、みそ、しょうゆ

こんにちは、受験Dr.の咲山です。

発酵食品、微生物を用いた加工食品。

中学入試では頻出とまでは言わないものの、
知っているかどうかで、ふと出題されたとき、問題の解きやすさが大きく変わるテーマでもあります。

今回はこの発酵食品を詳しく知るため

①発酵の中心―酵母のはたらき
②酵母を用いた食品―お酒、みそ、しょうゆ
③酵母以外を用いる発酵食品—乳酸発酵と酢酸発酵の利用

3回に分けて、発酵の仕組みとその代表例を紹介したいと思います。

今回はその第2回、酵母を用いた食品を扱います。
第1回をまだ読んでいない方は、こちらからご覧ください。

 
 


 
 

【1】お酒

お酒と聞くとどのようなイメージを持たれるでしょうか。
小学生にとって身近に感じるものではないかもしれませんが、ご家族の方が飲んでいる姿を見たことがあるかもしれません。また、調味料としての料理酒や、風味付けのためにワインが使われることもあります。

歴史は非常に古く、紀元前、はるか数千年前からその記録が残っています。
酵母の特徴である、アルコール発酵。アルコールと言えば、結びつきやすい食品かと思います。
種類も非常に多く、様々な発展をしてきました。歴史を深堀りすると長くなるので、今回は割愛します。

酵母がアルコールを作るためには糖が必要になるというのが、前回の復習です。
お酒の製造方法は基本的には共通して、下のようになっています。

(1)原料に含まれるでんぷんなどの物質を、糖に分解する(糖化)
(2)酵母を用いてアルコールを生成させる(アルコール発酵)
(3)ろ過、蒸留を行い、お酒と微生物を分け、飲み物を得る

また、このお酒の製法ですが、ご自宅で真似して作ろうとすると酒税法に抵触し、犯罪になります。勿論、未成年者の飲酒も禁止されておりますので、あくまでも食品の作られ方を知るものとして読んでください。

・ワイン
この中で最も歴史が長いのはワインです。
原料はブドウです。名前の通り多く含まれているブドウ糖を、そのまま酵母が用いることが出来ます。
ぶどうジュースの甘い部分を、酵母によってアルコールに変え、アルコール飲料としています。

・ビール
原料は麦を用います。簡単に言えば、麦茶をまず作り、麦茶に溶けているでんぷんを、アミラーゼによって分解します。このアミラーゼは、ヒトのだ液に含まれるものと、はたらきは同じですが、勿論だ液を集めている訳ではありません。でんぷんが消化されて出来る物質の名前にヒントがあります。

でんぷんを分解すると出来る物質、それは麦芽糖ですね。
麦も発芽する際に、でんぷんのままではなく、分解した糖から呼吸を通して発芽に必要なエネルギーを得ています。その際に用いられるのもアミラーゼです。麦芽に含まれるアミラーゼをそのまま利用し、甘い麦茶を作るということです。麦茶は温めて作るとおいしいといわれる所以がここにもあります。

そして出来上がった甘い麦茶を、酵母によってアルコールに変え、ビールを作っています。

・清酒(日本酒)
原料はお米です。製造方法は非常に複雑、かつ様々な種類があります。
ちなみに清酒と日本酒の違いは、原料のお米や生産地が純日本産であれば、日本酒と呼ばれます。

お米に含まれるでんぷんを糖に分解するのですが、ビールとは異なり自身の持つアミラーゼを用いません。これは、精米と呼ばれる、白米の表面を削り落とす工程があるため、ビールのように芽が残っていないからです。わざわざ白米を削り落とすのは、表層部にあるでんぷん以外の物質を取り除き、雑味が入らないようにすることが目的です。

ではどのようにアミラーゼを得るかというと、ここでもまた微生物が出て来ます。
麴菌(こうじきん)と呼ばれますが、酵母とはまた異なる、カビの仲間です。

まず麹菌が持つアミラーゼを用いて白米を糖化し、米こうじと呼ばれるものを作ります。あまり馴染みのない、得体のしれない物質に感じるかもしれませんが、「甘酒」はこの糖化までを行った食料品です。
「酒」とはあるもののアルコールは含まれていませんので、小学生でも飲むことが出来ます。個人的には甘くて独特の風味があり、私は好きです。健康にも良いのでぜひ一度お試しください。

そしてこの「甘酒」に、酵母を用いてアルコールを作っていきます。実はこの過程にも、麹菌や酵母だけでなく、乳酸菌も登場しますが、ここでは話が広がりすぎるので、ここは避けておきます。

 

【2】みそ・しょうゆ

この二つは実は、清酒の製造でも出てきた、「麹菌」が主役です。

先程の麹菌はアミラーゼを持っている、というものでしたが、種類によってはたんぱく質を分解する酵素を多く持っています。ヒトでは胃液に含まれるペプシンと呼ばれる酵素は中学受験でも出題されます。
タンパク質分解酵素をまとめてプロテアーゼと呼びますが、麹菌はこのプロテアーゼを用いてタンパク質をアミノ酸に分解し、大豆の味を引き出しています。

大豆をすりつぶして塩水と混ぜたものを、麹菌を用いて発酵させたものを「もろみ」といいますが、これを発酵させ続けたものが味噌、もろみを絞って液体を取り出したものをしょう油となります。

ただし、酵母も登場してきます。役割はやはり、アルコールを作ることです。このアルコールは香り消毒液に用いられるように、殺菌作用があり、発酵過程の微生物を殺す役割があります。そのまま放っておくと、延々と発酵が進んでいってしまうためです。

しょうゆにもみそにも、数パーセント程アルコールが含まれていますが、大量にみそやしょうゆを取ることはまずできないですし、未成年でアルコール摂取ということにはなりません。あくまでも風味を豊かにするために入っているものとして考えて問題ないので、その点はご安心ください。

 
 


 
 

以上の通りは酵母を使った食品を紹介しました。アルコール発酵はヒトには出来ませんが、

・でんぷんを、アミラーゼを用いて、麦芽糖に分解する
・タンパク質を、タンパク質分解酵素を用いて、アミノ酸に分解する

という点は、前回の「呼吸」に続き、人体の「消化」に結び付きがあるということです。
第1回と同じような話とはなりますが、知識は結びつけていくことで、覚えやすく、また深まっていきます。
身近なものへの興味関心を広げながら、知識を身に付けるきっかけになれば幸いです。

次回はまだ登場していない、乳酸菌、酢酸菌を使った食品の代表例を紹介します。

理科ドクター