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投稿日:2016年05月19日

テーマ: 算数

○の数だけ算数が好きになる!計算問題を〇に!

はじめまして、中学受験ドクターで算数を担当していますY. K.です。

 

さっそくですが質問です。お子さんは算数がお好きですか?それともお嫌いですか?おそらく「算数が好き!」「算数の授業が楽しい!」というお子さんは算数が「得意な」お子さんです。そして算数が「得意な」お子さんは、「テストで点数がとれる」お子さんです。そして、「算数大嫌い!」「算数なんてなくなればいいのに!」というお子さんはその反対でしょう。

 

これは人間として当然のことです。誰でも得意なものは好きに、苦手なものは嫌いになりやすいものです。「苦手なものだからこそ反骨心を燃やしてがんばれ!」というのは、大人でも簡単ではないことですので、それを小学生のお子さんに要求するのは酷なことだと私は思います。

 

さて、はじめに少し申しましたように、小学生のお子さんのある教科に対する「得意」「不得意」の感覚は、ほとんど「テストの点数」で決まります。つまり、テストの点さえ良ければ、「○がいっぱい!」⇒「算数得意かも…」⇒「算数好き!」⇒「もっと勉強する!」という良いサイクルが簡単に作れてしまうのです。といってもテストでいかに点数をとるのかというのが最大の問題です。

 

たしかに、全く理解の及ばなかった問題がテストでは解けたということや、ある日突然算数の解法が閃くようになることは非常に稀です。しかし、どのご家庭でもお子さんのテストが返却されたあと、ミスの数を数えてあと何点とれていたか計算したことがあるはずです。そして、その「失った」点数の何割かだけでもあれば、目標の得点・偏差値に届いたはずです。「○の数を増やす」ことは同時に、「×の数を減らす」ことです。全ての間違いには原因があり、ほとんどの場合にはその対策や防止策が用意されています。以上、前置きが非常に長くなってしまいましたが、このブログでは今日からすぐ実践できる「○を増やす」、「×を減らしていく」方法を紹介して参ります。

 

第一回目の今回は、「計算問題を○に!」というテーマで、計算問題にどう取り組めばミスが少なく且つ早く解けるのか、答えを求めていく過程ではどんなことを考えるのかをお話しさせて頂きます。

 

では、問題です。

 計算ミス なくす1

最初に手をつけるのは括弧の中の掛け算です。ここで、大胆なお子さんは印刷された問題の数字に重なるように計算を始めます。もちろん文字が見辛くなり、計算ミスや見間違いの原因になるので良くないことです。また慎重なお父様、お母様は、少しずつ数字を変形させた式全体を問題の下に書くかもしれません。非常に丁寧で大人であれば最もミスの少ない方法ですが、小学生のお子さんにとっては「数値をたくさん書き写すこと」、「同時にいくつかの操作を行うこと」は容易なことではなく、これも間違いの原因となってしまいます。ですので、ここでは「計算する部分だけを取り出して」計算を行います。すなわち、だけを問題の式の少し下に書き写して計算します。このときの2.8の処理がポイントです。掛ける数が分数ですので2.8も分数に直して計算するのが定石であり、分数と小数が混ざった計算では全て分数に揃えて計算するように指導を受けているはずです。しかし、この場合2.8は小数のままで計算するのが最も速く、最も正確な計算方法です。ここでは「2.8は小数点がなければ28。そして28は7で約分できる!」と考え、敢えて少数の状態で残します。

計算ミス なくす2

2.8を分数で計算した場合とも比較してみましょう。

計算ミス なくす 3

このあと) をすることを考えても、上のやり方がいかに速いか分かって頂けると思います。そして、その計算結果4.8は以下のように式の下に記録します。

計算ミス なくす4

このように式の上下のスペースは途中の計算結果を記録するために使います。計算が1つ終わるたびに必ずすぐに記録してください。この方法のメリットはどこまで計算が完了しているかが一目瞭然であることです。1つ1つの計算の答えは合っているのに最後の計算をし忘れた、というのも非常によくある間違いの1つです。続きの計算を順に進めていきます。

計算ミス なくす5

答えは9/8なのですが、答えが出た時点ではじめの式は次のようになっています。

計算ミス なくす6

このように計算する部分を次々と連結していくイメージで計算を進めていきます。では先程の①から④までの計算についても触れておきます。

 

①は暗算可能な範囲ですので、該当部分を取り出さず式に直接書いてもよいです。

 

②は該当部分を取り出しながら、左側を約分された分数にし、右側の分子分母を入れ替えることもできるでしょう。ただし、この作業はミスが起きやすい部分でもあります。大切なのはテストでも宿題でも同じようにやることです。提出する宿題だからといって丁寧にやりすぎてはいけないですし、テストだからといって焦って雑になってはいけません。

 

③は取り出した式の中で通分を行いました。この程度の数の大きさであれば、元の数字を利用して計算した方が時間短縮になりますし、書き写す際のミスの可能性も防ぐことができます。

 

④は0.75が次の式ではすぐに3/4へと変わっています。この数字は分数小数計算の暗記事項です。0.75程度であれば、75/100から約分しても大した作業量ではありませんが、0.375を375/1000から約分していたのでは時間がかかりすぎてしまいます。分数小数の計算で暗記しておきたい数は以下の7個です。お子さんが何個覚えているか確認してみてください。

計算ミス なくす7

お子さんはいくつ覚えていたでしょうか。5年生以上であれば全てすらすらと言える状態が望ましいです。もちろん、ここで答えられることだけでなく、実際に「テストで使ってみよう!」という気持ちが大切です。この他、3.14の掛け算の答えも少なくとも1×3.14から9×3.14までは覚えておきたい数字です。

 

最後に手順とは別のお話を2つほどさせてください。1つは見直しです。ここでの見直しはテストの最後に全体を振り返る見直しとは別のものです。計算ミスが起こりにくい人は、「計算が1つ終わる度に自分の式・筆算を読み返す」ことを必ずと言っていいほどやっています。1つの計算の答えが出たら、「本当に合っているかな?」という気持ちで自分の式や筆算を読み返します。計算のミスが見つかればラッキーですし、見つからなくても安心感に繋がります。また、手を止めて一呼吸置くことで問題解決への新たな糸口がつかめることもあります。

 

もう1つは「答えは複雑な数になりにくい」ということです。数の性質や円に関する問題等の一部を除いて、算数の問題の答えはある程度簡潔な数字になるように作られています。計算問題はまさにそうです。算数において問題の数値設定は作問者の手腕が最も問われる部分です。作問者の周囲の算数の講師も皆それを知っていますから、とんでもなく複雑な数が答えになるような問題は非常に作りにくくなっています。お子さんが計算問題で大きな桁数の分数などで×になっているときは、「とっても計算大変だったでしょ?大変過ぎるなぁと思うときは少し戻って自分の式を見直してごらん。」とお声かけください。

 

では、「計算問題を○にするまとめ」です。

①    計算したい部分を取り出して計算する。

②    途中の結果は式の上下に線で繋いで書いておく。

③    宿題もテストも同じように計算する。

④    暗記すべき数字は覚えておく。

⑤    1つ計算が終わったら式・筆算を読み返す。

⑥    答えは複雑な数字になりにくい。

 

たくさん申し上げましたが、全てのことが一気にできなくても構いません。毎回のテストに1つ目標を決めて少しずつできるようになってくだされば十分です。全てのお子さんが算数を好きになることを願って今回のブログを締めくくらせて頂きます。また次回お会いしましょう。

算数ドクター