御三家の求める力 part2 ~桜蔭・JGの国語を通してみる学校生活~ 【vol.245】



第245号 2016-05-24


こんばんは!
今日は、初夏らしい一日となりましたね。
これを書いているのが16時過ぎ。
陽が落ちると多少は肌寒くなるのでしょうか。

さて、
本日は予告しておりました、
御三家の求める力 第二弾
桜蔭中学の国語を通してみる学校生活でございます。
JGはまた来週!となります。

本来、この2校は傾向が全く異なるものとして扱われます。
実際、求められている力がちがうんですよね。

桜蔭中学は、(誤解を恐れずに言うなら)自分で解答を創りだす力。
JGは、的確に問題を処理する力。

ですから、桜蔭中学は、スピードはさして重要ではありません。
逆に的確に処理できることの必須条件として、
JGはスピード重視の学校です。

両校とも受験者平均点も合格最低点も発表がなく、
よく集団塾などで8割の得点がないと不合格、
などとまことしやかにささやかれているようですが、
断言します!
両校ともに、「それはない」。

よくて7割5分、年度によっては6割5分でも合格ラインに乗ることはある。
平均して約7割の得点が合格最低点とみています。

そのあたり含め、詳しく見ていきましょう。

【御三家の求める力】part2

中学受験で、国語が難しい学校は?
この質問に対して必ず上がる学校名が桜蔭中学。
それに異論はございません。

ただ、女子学院。
こちらは桜蔭中学とはまた異なる難しさがあります。

女子学院の国語は簡単だから、
受験者平均は8割近く、などと
これまたまことしやかに言われていますが、
あの分量、あの難度で、
受験者平均が8割なんてありえないことは
ちょっと考えればわかること。

JGの詳細は来週に回して、
今週は、まずは桜蔭中学から
国語をとおした学校生活を伺いみてみましょう!

< 桜蔭中学の国語から >
年度によって、かなり難度が異なるのが
桜蔭中学。

最近で見れば、
平成26年度は簡単でした。
逆に翌年の平成27年度は、前年度の反省からか、
難度が跳ね上がっています。

では、一体、
桜蔭中学の国語の難しさはどこにあるか?

もちろん、素材文自体の難しさもあります。
平成27年度の物語文の読みづらさは小学生の心をくじくには簡単なくらい
「意地の悪い」出題でした。

でも素材文以上に
桜蔭中学の国語をむずかしくしているのは、
記述解答の「範囲」です。

どこまで書けばいいのか。
どこまで「くわしく説明」しなければならないのか。
どこまで抽象化すればいいのか。
どこまで具体的な記述を残すのか。

国語という教科は、
設問が解答を規定していさえすれば、
「論理的に明快に解答を出せる」科目です。

ところが、
敢えて言います。
桜蔭中学の国語の設問は解答を規定していないのです。
いや、
している場合も、その縛りが「弱い」のです。

たとえば簡単であったはずの平成26年度の物語文の最後の問い、
問五に関して、
「二百字以内」「くわしく説明」という規定のみです。
「恭介」が書いた「レポート」を読んだ「監督」が
彼を「詩人」に喩えるセリフに傍線が付き、
「このように言う理由」を「二百字以内でくわしく説明」するよう
求められています。

まず、「詩人」の喩えをひも解く必要がありますね。
「監督」の言う「詩人」とはどのような人なのか。
これについての本文の情報は多くはありません。
「感性」「捉え方」くらいです。
「感性をもって物事を捉えることができる人」。(①)
私が小学生なら、上記の情報から記述できるのはこの程度です。

次にどのような点が「詩人」に喩えられるのか。
「詩人」の作る「詩」と「恭介」の書いた「レポート」との共通点を探ります。
「マウンドの捉え方はまさに一編の詩」。
「マウンドとの一体感を知ってこそ」「詩人」。
「見事だ」という「監督」の言葉。
そして「しっかりとマウンドを踏む」「そうすれば、マウンドがお前を支えてくれる」という「恭介」の言葉の反復。

このあたりをまとめると
「マウンドとの一体感を見事に捉えた恭介の感性の鋭さ、豊かさは、まさに詩人のそれだから」。(②)
くどいようですが、
私が小学生なら、
上記のようにまとめます。

①+②
詩人とは、感性をもって物事を捉えることができる人であり、うまくいくときのピッチングの際のマウンドとの一体感を見事に捉えた恭介の感性の鋭さ、豊かさは、まさに詩人のそれだから。

これは、私からすると、本文の情報を十分に汲んだ「正解」です。
では、桜蔭中学から出ている模範解答と比べてみましょう。

お手元にお持ちですか?

お分かりですね。
私の解答では、おそらく10点満点中、6、7点もらえればいいところ。でしょう。

それでも、私は声を大にして言います。
私の解答は必要十分な要素を満たしています。
唯一、200文字以内、という点、および「くわしく」という点で、
設問の規定を無視しているだけです。

そうなのです。
上記の私の解答は、
設問の規定である「200文字以内」「くわしく説明」という文言によって、
自分の言葉でふくらませる、というひと手間をかける必要がある、
ということです。

これは、模範解答を見てからわかること。
つまり、桜蔭中学の傾向、というファクターを通さなければ、
国語の自立した問題としてはきちんと成立しない、
ともいえるのです。

桜蔭中学の国語のむずかしさは、ここにあります。

国語としての難しさ以上に、
記述の解答の幅を決める際のむずかしさ。

例年の桜蔭中学の記述の模範解答の傾向を知ったうえでないと
完全記述解答が書けない、という点。

ここから伺いみる桜蔭中学は、
芯のある良い意味でのプライドの高さを感じます。

うちに合わせてください。
というきりっとした姿勢に
女子最高峰の矜持を見る思いです。