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　　　　　　■　異文化理解の重要性　■
　牛の生き血を飲む民族、魚の活造りを食べる日本人　
　　　　　　　　　【社会科】
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第174号　2013-04-29
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このところ北朝鮮の核問題や中国の地震・鳥インフルエンザの問題など、
東アジア情勢が騒がしく、今年も社会科では中国や朝鮮半島関連の出題が
多くなりそうな気配です。
社会科の出題予想は、また別の機会に任せるとしまして、今回は国語科の
視点から「異文化理解」のテーマの重要性について述べたいと思います。

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中学受験で問われる第一のポイントは論理性です。
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個々の説明文・論説文での筆者の主張は、問題を解くために必要な内容を
理解できればいいのです。
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ただし、受験国語には頻出のテーマがあります。
それに関しては予備知識を持っておくべきです。
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主なテーマとしては「言語論」「環境問題」「科学技術論」
「アイデンティティ論」などがあげられます。
これらの項目は大学受験現代文で頻出のテーマに重なります。
大学での勉強に必要な現代思想に関わるテーマでもあります。
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『中学受験に必要な現代思想』と呼んでもいいでしょう。
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ここに「異文化理解」のテーマも含まれるのです。

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　　　代表的な出題をご紹介しましょう。
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平成○年度の麻布中の問題です。文章は「アフリカ大陸のある部族が、
牛の首を少し切って流れ出た血を牛乳に入れて飲む」という話から始まります。
授業で扱うと多くの生徒は嫌な顔をしますし、何人かはキモイと叫びます。
日本人の子どもとしては当然の反応です。

文章はそこから牛の血を飲まねばならない風土的な事情
（農耕が不可能で野菜が摂取できない）へと展開していくのですが、
私は「日本人がまだピクピク動いている魚の活造りを食べるのを気持ち悪い」
と思う外国人もいるのだという話をして、人間は自分たちの常識を無意識に
「絶対化」してしまいますが、本当は自分たちの常識は「相対的」
なものでしかないという事を教えるようにしていました。
「絶対⇔相対」といった重要な概念語を教える事も、このテーマでは重要だからです。

中学受験の重要テーマに「異文化理解」が含まれる理由は、
グローバル化やボーダーレス化の進行といった現実的な事情ばかりではありません。
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受験国語の立場からすると、「異文化理解」をテーマとした文章は、
読み手を誤読・誤答に導きやすいからです。
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「牛の首を切って血を牛乳に入れて飲む」という状況に、
多くの日本人は吐き気のような生理的反応を生じるでしょう。
そうした状況では人間は、どうしても自分の感覚に流されやすくなります。

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その点で「異文化理解」の文章は文章を論理的・客観的に読解する
訓練が不十分な生徒をチェックする題材として適しているのです。
また、『中学受験に必要な現代思想』を学ぶにあたって、
そのテーマに関わる重要なキーワードや概念語を学んでおくことが必要です。
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　　　学　ぶ　べ　き　重　要　な　概　念　語
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■　相　対　的　■
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①時代や文化が異なると変化する（ある時代や文化だけで通用する）価値は相対的です。
（例）主君のために死ぬことは武士には誉れだが、
　　　今日では会社のために死ぬことはそうではない。

②他者との比較で成立する価値は相対的です。
（例）日本人は絶対的に幸福かといえば、そうではないだろうが、
Ａ国人に比べると、日本人は相対的に幸福である。

「相対的」と対になる概念語として以下の語があります。

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「絶対的」＝ほかのものと比較できない、それだけがすべてという価値です。
（例）キリスト教の神は唯一絶対の存在です。

「普遍的」＝時代や場所を問わず、どんな場合にも成り立つ、あてはまる価値です。
（例）科学的法則は普遍的なものでなければなりません。
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　　　　　　　　テ　ー　マ　研　究
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■　文　明　と　野　蛮　の　思　考　■
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昔、ローマ帝国の市民は、自分たちを文明人と呼び、
帝国外の異民族をバルバロイ（野蛮人）と呼びました。
また、古代中国では自分たちの国を中華と呼び、異民族を野蛮人とみなしました。
たとえば、日本人は「東の野蛮人」です。『後漢書』東夷伝の東夷がその意味です。
「文明と野蛮の思考」を古代人の偏見と笑うことはできません。
「牛の生き血を飲む」食習慣を私たちは野蛮で未開だと感じてしまいます。
自分たちの常識的基準を絶対化して、それに合致しないものを差別する思考は、
現代人の中にも強く働いているのです。
人種や民族の差別の根源には、こうした「文明と野蛮の思考」があること、
それが自分たちの中に働いて事を知るのも異文化理解のテーマでは重要です。

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