第5回 図形問題に強くなる③(図形の移動)|受験Dr.が「算数」の偏差値をアップさせる奥義を伝授!

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第5回 図形問題に強くなる③(図形の移動)

今後の目次

第5回 図形問題に強くなる③(図形の移動) ← 今週はココ!
第6回 規則性に強くなる
第7回 速さの文章題を得意単元にする

第3回から図形問題を取り上げており、前回は三角形・四角形・多角形を題材に、相似形の発見と設問から解法を導く解法について説明いたしました。
今回は、図形の移動という作図を伴う問題の解き方を説明してまいります。作図はきちんと段階を踏んで正確に捉えることが求められます。
正しい作図ができるということは図形のイメージが捉えられているということであり、正しいイメージなくして正解にはたどり着けません。
今回は②解答にたどり着くまでの作業量(作図)が膨大で、効率良い解き方(作図の仕方)が見つかりにくく難しい、になります。
それでは、この「②解答にたどり着くまでの作業量(作図)が膨大で、効率良い解き方(作図の仕方)が見つかりにくく難しい」を解決するポイントを、お子様に身につけさせましょう!

ポイントが身につく問題実践講座

問題
三角形ABCを三角形A’B’C’の位置まですべることなく転がしました。
このとき三角形ABCが通った範囲の面積を求めなさい。円周率は3.14とします。
算数オリンピックトライアル問題の図
(1998算数オリンピックファイナル問題)

【解くための考え方】
まずは、先ほどの問題を直接お子様に解かせてみてください。

正解はこちら

どうでしたか?正解にたどりつけたでしょうか?
正解できなかった場合、どこまで解き進めることができたのかが重要です。
今回はまず三角形ABCが転がった様子がきちんと作図できているかがポイントです。
次に、その面積を求めるために補助線を引けましたかが2つ目のポイントです。
難しそうな図形の問題こそ、ポイントに基づいて解いていくことができます。

今後受験Dr.では、「難問攻略イメージde暗記ポイント」カードを作成する予定です。
今回は、その中から「効率よく調べていくためのポイント」を2つご紹介します。

今回使うポイント

【ポイントNo.12】「図形の移動は点→線」

図形は辺に囲まれ、辺は点が集まったものです。
したがって、移動などの作図の際には、まず頂点がどのように移動し、どこに来るのかをとらえ、移動した後の頂点と頂点を結ぶことによって辺の移動が完了します。
そして全ての辺の移動が完了すれば図形の移動が完了します。

また、回転移動は動かない点を中心に円を描くように移動します。
360°回転することはあまりありませんので、出来上がる図形はおうぎ形になります。
よって、中心・半径・中心角を必ずおさえて作図していきましょう。

AとCがBを中心に回った図
まず、AとCがBを中心に回ります。

C’を中心にAとBが回った図
次に、C’を中心にAとBが回ります。

この2つを合わせると、
この2つを合わせた場合の図
となり、求める部分は
求める部分を色分けして整理
となります。

まずは頂点だけを1つずつ動かし、それらを結ぶことで全体図を理解していきましょう。
この作図方法は立体図形・影でも使われます。

【ポイントNo.13】「角度の和・差は近づけて解く」

しっかり作図することで、求めるべき図形が見えてきました。
2つのおうぎ形と1つの直角二等辺三角形です。

直角三角形は面積が容易に求められます。
20×20÷2=200㎠

問題はおうぎ形です。左側は半径20㎝はわかっていますが、中心角がわかりません。
右側は半径の長さも中心角もわかりません。
一体どうすればよいでしょう?

とりあえず記号を用いて式を立ててみましょう。
左側のおうぎ形の中心角をア°、右側の中心角をイ°とします。すると、

20×20×3.14×AC×AC×3.14×
360360

となります。

ここで下の図を見てください。
正方形の面積
正方形の面積は、1辺×1辺で求める以外に、対角線×対角線÷2でも求めることができます(正方形をひし形とみなす)。
AB=20より、20×20=AC×AC÷2となり、
AC×AC=800となります。これを先ほどの式にあてはめます。

400×3.14×800×3.14×
360360
400×3.14×1×(ア+イ×2)
360

これであとはア+イ×2の大きさを求めるだけになりました。
そこで、次の図のように角度に記号を振り分けます。
角度に記号を振り分ける

ア+イ×2を求めるために、ウとエの角度を近づけます。
2つの三角形に同じ24㎝の辺がありますので、ここを重ねて並べます。
2つの三角形を重ねて並べる

すると、SQ=32-7=25、QT=25より、三角形SQRは二等辺三角形になります。
したがって、角QRS=角QSR=エとなります。
ウ+エ×2=180-90=90°
ア+ウ+(イ+エ)×2=90+135×2=360°
ア+イ×2+(ウ+エ×2)=360°
ア+イ×2=360-90=270° となります。

したがって、

400×3.14×270300×3.14=942
360

となります。
先ほどの直角二等辺三角形の面積と合わせれば答えが求まります。

【正解】

1142㎠

開成・筑駒・灘の問題で今日のポイントを使う

問題 灘中学校(1日目) 2016 

図のような直角三角形ABCがあります。この直角三角形が斜線部分の外側を、①の状態から矢印の方向にすべることなく転がって、②の状態まで移動します。
このとき、辺ABが通過する部分の面積を求めなさい。
灘中入試問題の図

【解説】

まずは移動の様子を作図しましょう。←ポイントNo.12
移動の様子1
移動の様子2
2つを重ねます。
1と2の重ね合わせ
このうち辺ABが通過する部分の面積は、頂点Aが動いた軌跡(赤色)と頂点Bが動いた軌跡(青色)と3本の辺ABで囲まれた部分になります。 辺ABが通過する部分の面積
辺ABが通過する部分の面積を色分け
ここで気をつけなければいけないのが、直線(辺AB)が通れない部分です。
辺ABが回転する様子を15°ずつ重ねてみます。
辺ABが回転する様子を15°ずつ重ねる
すると内側にも直線が通過している部分があることがわかります。
これを正確に図にするため、「回転の中心に最も近い直線上の点」を考えていきます。

点Pが動いた部分より外側も含まれる
斜線部分の角をOとします。Oに最も近い辺ABの点は、辺ABの真ん中の点Pで、ABとOPは垂直に交わります。
この点Pが動いた部分より外側(赤い部分)も辺ABが通過する部分になります。

いよいよ通過した部分の面積を求めましょう。
今回も全体から白い部分を引いて求めます。
<全体>
直角三角形(大)+おうぎ形(大)+おうぎ形(中)①
全体の面積
<白い部分>
おうぎ形(中)②+台形+直角三角形(小)+おうぎ形(小)
白い面積
ここで、白い部分の台形と直角三角形(小)を合わせると、全体の直角三角形(大)と同じ形になります。
したがって、おうぎ形(大)+おうぎ形(中)①-おうぎ形(中)②-おうぎ形(小)を計算します。
三角形ABCの角Cは60°になりますので、

おうぎ形(大)

4×4×3.14×12016×3.14
3603

おうぎ形(中)①

4×4×3.14×1201×3.14
360

おうぎ形(中)②

2×2×3.14×1204×3.14
3603

おうぎ形(小)

1×1×3.14×901×3.14
3604
(161 - 31)×3.1419×3.14 = 14.915
3344

答え 14.915㎠

前回のチャレンジ問題の答え

問題

下の図のような正六角形ABCDEFがあります。辺BC,CDのまん中の点をそれぞれG、Hとします。
正六角形ABCDEF
(1)三角形AGEの面積は正六角形ABCDEFの面積の何倍ですか。

(2)FGとAHが交わる点をI、FGとADが交わる点をJ、FGとAEが交わる点をKとします。
次の長さの比を、最も簡単な整数の比で表しなさい。
①BGとAJ
②AKとKE

(3)正六角形ABCDEFの面積を12㎠とするとき、三角形AIKの面積を求めなさい。
FGとAHが交わる点をI、FGとADが交わる点をJ、FGとAEが交わる点をK
(2016 駒場東邦中 

【解説】

(1)

まずは、三角形AGEの面積が全体の何倍になるかを考えます。
きれいに分割した形にはなっていませんので、全体から三角形AGE以外の部分を除いていく方法を取ります。
三角形AEF、三角形CDEはともに全体の1/6

角形AEF、三角形CDEはともに

全体の1です。
6

GがBCの真ん中の点になる

三角形ABCも全体の1ですが、
6

GがBCの真ん中の点になりますので、

三角形ABGは全体の1×11です。
6212

三角形GCEが全体に占める割合
四角形BCEFは

全体の42になりますので、
63

三角形GCEは

全体の2×1×11です。
3226

したがって、三角形AGEの面積は、

1 - (1×3 + 1) = 5
61212

になります。

答え 5
12


(2)

正六角形の1辺の長さを④とした場合の図
正六角形の1辺の長さを④とします。Gを通りBFに平行な直線とADの交点をMとすると、図より、AM=MD=④となります。
また、三角形BGLと三角形JMLは相似なので、BG=②よりJM=①になります。
よって、AJ=⑧-⑤=③
BG:AJ=2:3になります。

答え 2:3

正六角形の1辺の長さを④とした場合の図
また、AJとFEが平行なので、三角形AJKと三角形EFKも相似です。
AK:KE=AJ:EFとなるので、
AK:KE=3:4です。

答え 3:4

(3)

AI:IHの比を求める
AEとBDは平行で、またGとHはともに辺の真ん中の点なので、
AEとGHも平行になり、GHはAEの半分の長さです。
(2)よりAK:KE:AE=3:4:7、AE:GH=2:1
AK:KE:AE:GH=6:8:14:7となり、
AK:GH=6:7です。
三角形AKIと三角形GHIは相似なので、AI:IH=6:7になります。

三角形AEGの面積と三角形AEHの面積は等しい
AEとGHが平行なので、三角形AEGの面積と三角形AEHの面積も等しくなります。

これは正六角形の5倍なので、
12
12×5=5㎠です。
12

三角形AIKの面積
三角形AIKの面積は、

三角形AHE×AI×AK
AHAE

で求められますので、

6×390
13791

になります。

答え 90
91

今日のポイントを使って問題にチャレンジ!

問題

図のような長方形PQRSと角Bが直角である直角三角形ABCがあります。
長方形PQRSのまわりを、三角形ABCを次のように回転させます。
ただし、はじめ点Aは点Pに、点Bは辺PS上にあるものとします。
開成中の大問1(2)

①三角形ABCを点Bを中心に、点Cと点Sが重なるまで時計回りに回転させる。
②次に三角形ABCを点Cを中心に、点Aと点Rが重なるまで時計回りに回転させる。
③次に三角形ABCを点Aを中心に、点Bが辺QR上にくるまで時計回りに回転させる。

この回転を通して、三角形ABCが動いた部分のまわりの長さは何㎝ですか。
ただし、答えは小数第2位を四捨五入して、小数第1位まで求めなさい。

(2007 開成中 (2))

※解答解説は次回掲載いたします。