松田 吉郎先生
社会科では知識の暗記は欠かせません。しかし、「暗記科目」と言われるわりに、具体的な方法がつかめないまま学習を進める状況が多いのではないでしょうか。ここでは、テストでの得点力につなげていくための学習方法として、早期に身につけてほしい学習習慣を紹介します。これらを身につけていただくことを私なりの基本的な指導法としています。
①見るだけ、読むだけ、という学習で終わりにしない。
②問題演習は、必要知識の確認と解きなおしまでが1セット。
③なんでも聞きやすい関係性の構築
①見るだけ・読むだけ、という学習で終わりにしない。
大人の皆さまは「あたりまえ」と思うかもしれませんが、特に中学受験の世界に足を踏み入れたばかりのお子さんは、見るだけ、読むだけにとどまっている学習習慣になってしまっていることが多い印象です。
学習方法は、見る、読む、書く、声に出す、調べる、ノートにまとめる、問題を解く、他人に説明する、など多岐にわたります。大切なのは、その中から状況にあった学習方法を選択することです。しかし、迷いながら進めてしまったり、わからないから立ち止まってしまったりして時間ばかりが過ぎ去り、見るだけ・読むだけというお手軽な学習方法にとどまってしまうケースも少なくありません。
系統立てておぼえる必要がある内容は作図してもらい、複数の知識を正しく組み合わせる必要がある場合は声に出しながら何度も練習します。そして、できるようになったことはその場でしっかりとほめてさらなる定着を促します。このように、本人の反応や理解度を見ながらリアルタイムで最適な学習方法を示せることは個別指導の利点だと思います。
②問題演習は、必要知識の確認と解きなおしまでが1セット。
まずは「問題演習のあとに本当の勉強がスタートする」という意識を持てるように働きかけます。そして、その問題を正解するための必要知識や周辺知識を示し、形式の異なる問題を解けるように総合的な力をつけていけるように指導していきます。集団塾での演習中心授業のあとの復習や、過去問演習のあとの振り返りなどをスムーズに進めていけるように、しっかりサポートしていきます。
③なんでも質問しやすい関係性の構築
学習には「安心して質問できる環境」が欠かせません。わからないことをそのままにせず、一緒に考え、納得して前に進む。そうしたやり取りの積み重ねが、真の理解につながります。
担当することになったお子さんには、「わからない、ということに対して怒ることは絶対にない」と宣言してから授業を始めています。それぐらい、わからないことはわからないと言える関係性をつくることは重要と捉えています。少しでも疑問に思うことがあれば質問してみてください。わかるようになりたいという気持ちと姿勢さえ持っていれば、こうしたやり取りのなかから真に理解するための糸口を見つけられることでしょう。
≪地理≫地方別・都道府県別に知識を広げる
地理の学習でつまずくお子さんの多くは地方別・都道府県別の知識が区別できない状態になっています。例えば「信濃川は長野県から新潟県に流れる川です」と説明したときにすぐに地図から見つけられないお子さんは、長野県と新潟県がどの地方のどのあたりにあるのかわからないということ念頭に指導にあたることを意識しています。
地方ごとに都道府県の名前と位置が身につくと、頭の中で次第に知識同士が有機的につなげる学習ができるようになります。授業や問題演習などの場面で『信濃川』と聞けば、流域の野辺山原ではレタスやはくさいの高冷地農業が…、長野盆地ではりんごなどの果樹栽培が…、越後平野では暗渠排水により乾田化が…、という具合に、知識を関連づけて理解しようとすることで、思い出す機会が増えて記憶の定着率もアップします。
■チェック!■
問:都道府県のうち、漢字の『山』が使われている都道府県を6こすべて答えなさい。
答:山形県、山梨県、富山県、和歌山県、岡山県、山口県
この問題に対して3分以上答えがでなければ、まずは地方ごとに都道府県を暗唱するところからスタートしてみるのがおすすめです。地理分野では、山・川・島などおぼえる地名がたくさんありますが、都道府県ごとに整理していくことが基本になるため、今後の学習のベースの知識になっていくでしょう。
≪歴史≫
歴史の学習でつまずいてしまうお子さんがまず確認すべきことは、時代の順番と各時代の重要年号です。入試本番までに最終的に100~200ぐらいの歴史年号暗記が目標になりますが、まずは時代の境目からおぼえていくことによって、解けるようになる問題が格段に増えていくはずです。
■チェック!■
問:鑑真が唐招提寺を建立した759年、なに時代?
答:奈良時代
710年の平城京遷都よりあと、794年の平安京遷都より前なので奈良時代。
問:日本の歴史において存在した3つの幕府を、長く続いた順に並べ替えて答えなさい。
答:江戸幕府(264年間)→室町幕府(235年間)→鎌倉幕府(およそ140年間)
江戸時代は1603年~1867年、室町時代は1338年~1573年、鎌倉時代は1185年(1192年)~1333年。
時代の名前と境目をおぼえることから始めて、上記のような考え方をマスターしましょう。

※特に江戸時代以前の時代区分・年号については諸説あります。ご了承ください。
≪公民≫
公民分野の学習が始まると、意味のわかりづらい言葉がたくさん出てきます。地理・歴史と比べて言葉の意味が分かりづらくなったと感じるお子さんは増えるのではないでしょうか。おそらく最初に苦労するのは用語を階層ごとに分類(カテゴライズ)することでしょう。例えば、基本的人権にふくまれる5つの分類を問われて、平等権、自由権、社会権、参政権、請求権とサラっと挙げることができるでしょうか。また、頻出の自由権の内容(身体・精神・経済の自由)、社会権の内容(生存権・教育に関する権利・勤労に関する権利)の違いを理解しているでしょうか。このように知識階層が複雑なものは公民分野でたくさん扱うことになり、文章としておぼえるよりも図にまとめて系統立てたほうがいいと思います。

■チェック!■
問:次のうち、社会権について説明したものはどれ?
ア だれでも自由に意見を発表することができる。
イ すべての人が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利をもつ。
ウ 不当な逮捕や拷問を受けない権利をもつ。
エ 選挙に参加して政治に意見を反映させることができる。
答:イ
アの表現の自由(集会・結社・表現の自由)は自由権、イの生存権は社会権、ウの意に反する苦役の禁止は自由権、エは参政権。正確に分類できたでしょうか。
≪過去問対策・問題演習からの学び≫
各集団塾で演習授業が中心になり、過去問演習が始まっていく6年生ごろになると、日々の学習のなかで問題演習から知識を学び取り、蓄積していく方法を確立していくことがとても重要になります。しかし、多くの受験生は『解答』の内容を知っていたかどうかのみ注目し、そこに至るまでの過程や、必要な知識の補充は意識から抜け落ちてしまいがちなのではないでしょうか。
今回は、特に正誤選択肢の問題をひとつひとつ丁寧に振り返っていくことの必要性をお伝えするために、次のような問題を用意しました。正解の選択肢を探し出してみましょう。
■チェック!■
問:次のうち群馬県の説明としてふさわしいものを1つ選び、記号で答えなさい。
ア こんにゃく芋の都道府県別生産量がもっとも多い。
イ 県庁所在都市の前橋市には高等裁判所がある。
ウ 東海道新幹線と上越新幹線が分岐する大宮駅がある。
エ 世界遺産に登録されている日光東照宮がある。
答:ア
手順①ふさわしい選択肢であるアの文が正しいことを確認する。
ア…工芸作物のこんにゃく芋は、下仁田などで有名。地図帳でも確認する。
手順②イ・ウ・エの文の誤っているところを確認し、誤りを正す。
イ…高等裁判所は8地方それぞれに1つずつ。札幌市、仙台市、東京、名古屋市、大阪市、広島市、高松市、福岡市。県庁所在地の前橋市にあるのは地方裁判所・家庭裁判所(全都府県庁所在都市に1つずつ、北海道には4つ)である。
ウ…東海道新幹線は東京駅から南西方向に出発するため群馬県高崎駅を通る上越新幹線および北陸新幹線との供用区間はない。大宮駅は埼玉県さいたま市にある駅で、東北新幹線と上越・北陸新幹線との分岐駅である。
エ…日光東照宮は栃木県にある。江戸幕府初代将軍の徳川家康を神としてまつる世界文化遺産「日光の社寺」にふくまれる。群馬県にある世界遺産といえば「富岡製糸場と絹産業遺産群」である。
手順③必要知識をノートに残し、知識を蓄積していく。
メモ例(知らなかった!と思う知識を書き出してみよう。)
・群馬県はこんにゃく芋NO.1。
・高等裁判所は8か所、地方ごとの中心都市。
・群馬県にあるのは高崎駅。
・日光東照宮が栃木県にある。
実際の授業の現場でも、ここまで追求していこうと思います。
必要性はわかっていてもここまでやる時間がない、面倒くさがってやりたくない、というお声が聞こえてきそうですが、どのような形式で出題されるかわからない入試問題に向けて知識に広がりを持たせて学習してほしいとおもっています。そして、このような丁寧な振り返りは個別指導だからこそ実現できると考えます。
私たちと一緒に、あなたに合ったがんばりかたを見つけにいきましょう。
