2025 北鎌倉女子中学校|学校説明会レポート



北鎌倉女子中学校説明会レポート(2025年5月28日)


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本日は北鎌倉女子中学校の学校説明会を、受験Dr.算数・理科講師の澤田 重治がご紹介いたします。

■学校からのアピールポイント
●「のびやかな自立した女性を育む」という教育理念を支える4つの柱を、4人のリーダーがけん引してサポートする。
1.国際性……藤崎一郎理事長(元駐米大使)
2.発信力……柳沢幸雄学園長(東京大学名誉教授/前 開成中学校・高等学校校長)
3.創造性……田邊則彦理事長補佐(前 ドルトン東京学園副校長)
4.人間力……佐野朗子学校長(元神奈川県立高校校長/全国高等学校校長協会理事)

●これからの時代を生きていく上で必要となる「英語教育」と「ICT教育」に力を入れている
●様々な入試形態があるので入りやすい。また、入口の入りやすさの割に、高い進学実績を残せている。
●指定校推薦もとても多く、85%の生徒が4年制大学に進学している。海外の大学への指定校推薦制度もある。

■特徴的な施設
【壁のない職員室】
生徒の相談を受けるカウンターや個別指導ブースを設けて、気軽にコミュニケーションを取れる空間になっています。
また、理事長・学園長や校長の部屋も常に扉が開かれていて、生徒が気軽に話にいける環境になっています。

【音楽館】
音楽科を持っている北鎌倉女子学園には、各部屋にピアノが備わっているレッスン室もあります。防音性に優れ、講師からのマンツーマン指導や個人練習も快適に行うことができます。

【50周年記念館】
中には豊かな蔵書数を誇る図書室や、グループ学習なども可能な「話ができる自習室」があります。静かに学習をしたい人は図書室で自習ができます。

【千草庵】
大正時代に建てられた数寄屋造りの純日本家屋が、近代的な建物の並ぶ学校の敷地内にあります。日本文化部、箏曲部の活動や同窓会、保護者の懇親会などで利用します。

■JR横須賀線、JR湘南新宿ライン「北鎌倉駅」より徒歩約7分

2025年5月28日に行われた北鎌倉女子中学校の説明会での内容をまとめました。
この内容についてのご質問は北鎌倉女子中学校ではなく、受験Dr.までお願いします。

プログラム

理事長挨拶

理事長の藤崎 一郎先生より、ご挨拶と教育観についてお話がありました。
その中から一部を紹介いたします。

教育観について

●六年間の中高一貫教育の意義
中学・高校の六年間を通じて、生徒が将来について考え、自分の道を模索する機会を提供することが重要である。学校側はそのためのアシストや多様な可能性の提示を行う。
その一つが、今度行われる「宇宙と女性」というイベントで、向井千秋さん、山崎直子さんという2人の宇宙飛行士を招いて、ただの講演会ではなく、クイズをしたり、各宇宙飛行士たちに直接質問したりできるものにした。

●学力・学歴の大切さ
「日本の教育は詰め込みだから変えなきゃいけない」とか、「学歴偏重主義はおかしい」と言われるが、どこの国も学歴偏重。だから、チャンスをつかむためにも学力をつけた方が良いと話している。そして、勉強だけでなく、国際社会に出ていくという観点からは、英語とコンピューターを2つはどんな仕事に就くにしても身につけといた方がいい。また、国際社会に出ていく上で、日本人の生徒が一番苦手な「手を挙げて、自分の考えを発言する」ということについても訓練している。

●学校に来たくなる学校
もう一つ、一番大事なことは、「楽しくなきゃいけない」「子供が来たいと思わなきゃいけない」ということ。休みの日でも来たいと思ってもらえるように、休みの日に学校くるときは私服でいいことにした。いじめをなくすために、先生との距離を短くすることに力を入れ、何かあったらすぐ担任や他の先生と話せるようにしようと思っている。

●リーダーも積極的に教育に関わる
学園長の柳沢先生はハーバードで教授をした後、開成の校長も務めてきた。校長も神奈川県立高校の校長を4校も務めてきた。そういう経験を通して得たものを、それぞれのチャンネルで伝えている。私も、理事長としてこの学校の姿形をつくっていくことはもちろんだが、決して時々スピーチをするだけではなく、実際に授業をもって子どもたちとも触れ合っている。

学校教育方針

広報部長の鈴木先生より、学校教育方針と教員体制・特色ある授業内容についてお話がありました。
その中から一部を紹介いたします。

教育方針・教員体制・授業内容

●教育目標
学校の教育方針として、国際性・発信力・創造性・人間力の4つを確実に育てて卒業させることを掲げている。
4人の核となるリーダーがそれぞれの分野を担当し、オープンな相談体制を整えている。
国際性:理事長が国際関係の授業や特別授業を担当
発信力:学園長が発信力を養う授業を担当
創造性:ICT専門家である副理事長がICT教育を担当
人間力:校長が生徒の人間力育成を担当

●国際性豊かな人に
英語力向上のため、複数のネイティブ教員による少人数グループレッスン、理事長の特別授業、イングリッシュルームの活用、ニュージーランド留学やカナダ研修など、校内外で多様な実践の場を設けている。また、観光地鎌倉の立地を活かした、円覚寺や鶴岡八幡宮で外国人観光客に英語でガイドを行うボランティア活動、海外留学・研修など、実践的な英語運用力と国際感覚を養う。

●自ら考え、発信できる人に
グループディスカッションやプレゼンテーションを重視し、発信力を養う授業を展開している。生徒が自分の考えを積極的に発言する力を身につけることを目指している。

●ICTを味方に、創造力あふれる人に
中学校では総合的な学習や精神的な学びの時間でICTを中心的に学び、高校では情報科目を最大六単位まで取得可能。2024年と2025年の2年連続でDXハイスクール認定を受け、WindowsとMacBook Proの高スペックPCを複数台導入し、両方の環境で学習できる体制を整えている。

●しなやかに生きる人に
鎌倉という立地を活かし、礼法や協働、訪問マナー、手紙の書き方など社会で必要な人間力を育成する教育を行っている。雅楽・能楽・歌舞伎の鑑賞会も実施し、鶴岡八幡宮の方が学校に来て演奏するなど、恵まれた環境がある。社会に出てから必要となる人との関わり方やマナーを、鎌倉の文化資源を活かして学ぶことができる。

●学校行事
体育祭・文化祭・合唱コンクールなどの行事はすべて生徒の実行委員や有志が主体となって運営している。そのため、体育祭は毎年種目も異なり、先生も参加して、生徒と一緒にイベントを盛り上げている。生徒の主体性を重視し、イベントの企画・運営を任せることでリーダーシップや協働力を育成している。

●部活動
部活動は週3日までと制限されており、他の習い事や勉強との両立がしやすい。先輩・後輩の距離が近く、部活動内での人間関係も良好。
活動の数が少ないからと言って力が入っていないわけではなく、短い中でも工夫して活動をしている。(バトン部は関東大会に出場)
部活動の活動日数を制限することで、生徒が多様な活動に参加しやすくなっている。

●コース編制(先進コース,国際コース,音楽コース)
先進コースは先進英語やICT・プログラミングなど特徴的な授業を展開。音楽コースは専門・副科レッスンが授業内で受けられ、設備も充実。国際コースは中学三年生から選択でき、英語授業が充実している。各コースの特色を活かし、生徒の興味や進路に合わせた学びができるようになっている。

●進路指導
キャリア教育や進路指導を中学から実施し、中だるみ対策も行う。大学入試では総合型選抜や論文・プレゼン対策を中学から行い、指定校推薦枠も多い。(2024年度実績は、125大学340学部)

2026年度入試概要

入試担当の上田先生より、2026年度入試概要についてお話がありました。
その中から一部を紹介いたします。

2026年度入試概要

●2026年度入試日程・区分
【先進コース】
2026年度入試は2月1日から2月4日まで4日連続で実施し、2月6日にエッセイ入試を追加。2科・4科・1科・プログラミング・エッセイ・英語プレゼンなど多様な入試区分を設けている。
2/1…(午前)2科入試① (午後)4科入試①
2/2…(午前)2科入試② (午後)エッセイ①,英語プレゼン,プログラミング
2/3…(午前)国語1科①,算数1科① (午後)4科入試②
2/4…(午前)国語1科②,算数1科② (午後)エッセイ②
【音楽コース】
2/1…(午前)2科入試①
2/2…(午前)実技試験

●2026年度入試概要
【4科①②】 4科合わせて60分・100点満点
4科入試は2025年度入試から実施しているが、以前の総合入試ではなく、4科の基礎的な学習で受験しやすくした
 ▼国語(25点)… 漢字、ことわざ、接続語、文法などの知識問題
 ▼算数(25点)… 計算の問題、1行問題などの基礎的な問題
 ▼理科(25点)… 物理・化学・生物・地学のうち2分野を出題(1回目と2回目は異なる分野から出題)
 ▼社会(25点)… 地理・歴史・公民それぞれから出題

【2科①②】
▼国語 45分・100点満点
 [1]漢字、接続語、文法、文学史などの知識問題
 [2]文学的文章(2025年度入試から読解は1題だけにした)
▼算数 45分・100点満点
 [1]計算の基問題(35点)
 [2]一行問題(35点)
 [3]図形問題(10点)
 [4][5](各10点)※毎年違う単元から出題

【1科①②】 60分・100点満点
▼算数
問題の傾向は2科の算数と同じだが、途中式の記述がある
▼国語
漢字などの基礎問題、文章を読んで問いに答える問題とともに、文章と資料を見比べて答を導き出すといった論理的思考力を問う問題も出題する。
▼備考
どちらか1科目の受験もしくは2科目受験の選択が可能(出願時に「国語」「算数」「国語・算数」のいずれかを選択)
2科目受験をした場合、どちらか1科目が合格点に達していれば合格とする

【エッセイ①②】
テーマはあらかじめ数題提示される(例年1月初旬)
当日30分でエッセイを書き、その後質疑応答。
質疑応答は柳沢学園長が担当する予定。

【英語プレゼン】
テーマはあらかじめ数題提示される(例年1月初旬)
プレゼンにはICT機器(iPadやPC)や画用紙などを使用可能。(必ずしもICT機器などを使用しなくてもOK)
英語でプレゼンをした後、その内容について日本語と英語で質疑応答。

【プログラミング】 解説・課題60分 プレゼン10分
当日プログラミングの基本を解説し、その後、指示された手順のプログラムを完成させる課題に取り組む。
使用言語は「Scratch」
これまでのプログラミング経験などを配付された用紙に記入した後、組んだプログラムを実行し、工夫したところなどを簡単にプレゼンする。
※当日の流れをまとめた動画を、秋口に学園HPに公開する予定。

【音楽コース】
2月1日午前に2科入試を受験(学科試験は国語・算数の高得点一教科で判定)
2月2日午前に実技試験を実施。
実技の出来が重要なため、希望者は音楽科の個別相談への参加を推奨。

座談会方式での質疑応答

学園長の柳沢 幸雄先生より、座談会方式での質疑応答がありました。
その中から一部を紹介いたします。

質疑応答

●日本とアメリカの学生の発言文化の違い
日本の学生は自分から手を挙げて発言することが少なく、周囲の顔色をうかがう傾向がある。
一方、アメリカや他の国の学生は、議論の中で自分の発言のタイミングを積極的に狙い、自分の存在感を示すために発言する文化がある。

●自分から働きかける教育の重要性
生徒が自分から行動し、質問し、学びに積極的に関わることを重視する教育方針。
体育祭では、自ら手を挙げて出場する種目を決める。(1人2種目には参加する)
学園が混在する種目に参加する中で先輩とも交わることになる。
チューター制度があり、自習室にはOGがいる。直接経験談を聞くことができる。
SIMクラブ(S=science/I=information/M=mathmatics)というものをやっていて、週2回放課後、ICT教室に理系の先生が2人以上待機していて、何を質問しても良いという場にしている。

●開成中との違い
開成のように偏差値の高い学校に入学した生徒は、入学時の自己肯定感は高いが、入学後の成績順位や競争によって自信を失うことがあるので、先輩とのつながりや部活動を通じて自己肯定感を維持する工夫が必要だった。
一方、北鎌倉女子学園の場合には、試験に合格してもなかなか自己肯定感が高まらないので、入学後に「自分の意見を表明できる力を育てることが、将来社会で生きていく上で最も重要である」と伝えていく。
生徒が自分の意見を持ち、発信できるようにすることで、10年後、20年後の社会で自立して生きていく力を養う。

●男子校と女子校の違い
男性と女性では、友達の作り方が違うと思う。
例えば女子校では、たまたま席が隣同士で一番最初に言葉を交わした人とそのまま喋りやすくなり、だんだん仲良くなっていくが、席が離れているところではなかなかしゃべる機会がない。
そこで、中学生にも高校生にもペアで学習させるようにしている。

●グローバル探求授業の内容と目的
高校一年生を対象に、グローバル探求授業で文章構造の習得や社会で役立つ表現力の育成を指導している。
受験対策だけでなく、将来会社で企画書を作成する際にも役立つような、わかりやすい文章構造を身につけさせることを重視している。

校長挨拶

校長の佐野 朗子先生より、ご挨拶がありました。
その中から一部を紹介いたします。

校長挨拶

●学校の教育理念と自立した女性の育成
学校の教育理念として「のびやかな自立した女性を育む」を掲げており、自分の意見を持ち発信できる力を重視している。
その成果により、例えば生徒が自発的にいじめ撲滅運動(ピンクリボン運動)に参加したいと提案してきたこともある。
また、本校卒業の県会議員を招いて、まずどういったことを考えたらいいか、視点等を聞きたいというふうに、子どもたちの方から意見やアイデアを出すようになってきた。
今までは割と厳しい学校だったが、今はガラリと変わって、本当に子どもたちが活発になってきたというのが最近の現状。

●入試の多様性と進学実績
北鎌倉女子学園は入試形態が多様であり、子どもたちが自分にあった試験を選びやすく、入りやすい学校である。
また、入りやすさの割に、高い進学実績を残せていると思っている。
女子校では、男子生徒がいないことで女子生徒が自分らしさを出しやすく、困った時には助け合うことができる環境が整っている。

●国際コースの設立と運営状況
今年度より、国際コース(中学3年生以上)を設置した。
現在、中学3年生の国際コースは13人。高校は17名で運営されており、スウェーデンとアメリカからの留学生2名が在籍している。
中学では音楽コースや先進コースと同じクラスで学び、高校では国際コース単独で運営されている。

●英語教育
文部科学省は、2027年までに中学3年生で英検3級を6割、高校3年生で準二級を6割取らせるという数字目標を掲げているが、本校の中学3年生は6割も達成しているし、高校2年生の段階で準一級6割も達成している。
また、国際コースが立ち上がったので、その子たちには準一級を取らせるということも考えているので、今後の英語教育にも期待してほしい。

学校訪問を終えて

元駐米大使の藤崎理事長が大改革を掲げ、開成学園の校長を引退した柳沢先生を学園長に迎えたり、神奈川県立高校のベテラン校長だった佐野先生を校長に迎えたりと、すごい人材を集めている北鎌倉女子学園ですが、一番驚いたのは、その先生方が実際に教壇に立って直接指導をしているということでした。実際に、この数年間で学園の雰囲気も大きく変わってきているようですし、進学実績にも変化が表れてきていると思います。鎌倉という立地を生かした独自のものも含めて、施設や教育内容もとても充実していますので、それらの取り組みが知られてくれば、今後どんどん人気が高まっていく学校だろうと感じました。