2025 神奈川学園中学校|学校説明会レポート



神奈川学園中学校説明会レポート(2025年5月14日)


本日は神奈川学園中学の学校説明会を、受験Dr.算数・理科講師の澤田 重治がご紹介いたします。

今年度の入試では、全日程で受験者数が増加し、通常1学年5クラスのところ、2、30年ぶりとなる6クラスとなったが、特に大きな変更があったわけではない。受験生を対象に行ったアンケートで「期待すること」の回答と、在校生を対象に行ったアンケートの「神奈川学園のおすすめポイント」の回答が一致していることから、恒常的な取り組みが生徒の期待に応えられた結果であると捉えている。

① 生徒自治を基本とする自由な校風
たとえば、生徒の要望でアイスクリームの自販機を導入したが、ただ要望を聞くだけでなく、みんなが快適につかえるルールを生徒たちが自ら考えて導入したことがあった。

② 手厚い教育体制
二人担任制……目が行き届き相談しやすい環境が作れる
ダイアリー……生徒が立てた学習計画を二人の担当がすべてチェックし、コメントして返している。

③ 理系にも強い教育プログラム(卒業生の約4割が理系に進学する)
理科100実験……在校生アンケートで、好きな科目の第2位に「理科」がくる
その他…数学的活動,英語ラウンドシステム,自習室・メンター制度,全員参加の海外研修など

神奈川学園中学校の特筆すべき施設
① アカデミック・ハブ
複数名のメンターさん(全員女性)が常駐する自習室。放課後、中学生は19時、高校生は20時まで利用できる。登録制ではなく、在校生であれば誰でも使えるようにしている。

② 創立100周年記念ホール
2017年1月竣工。700席の固定椅子を備え、音響などの設備面でも学校施設としては最高レベル。

③ 教室
全HR教室に電子黒板を設置。生徒は1人1台のChromebookを持ち、授業でも使用している。

④ そうだん室
平日5日間、カウンセラーが常駐している。

2025年5月14日に行われた神奈川学園中学校の説明会での内容をまとめました。
この内容についてのご質問は神奈川学園中学校ではなく、受験Dr.までお願いします。

プログラム

校長からのメッセージ

校長の及川 正俊先生より、神奈川学園中学校についてお話がありました。
その中から一部を紹介いたします。

2025年度入試結果

前年度比較で、2/1午前が+71名、2/1午後が+121名、2/2午前が+9名、2/4午前が+15名と、すべての入試日程で受験者数が増加。2月1日午後の入試に1教科受験を新設したが、それ以外の日程でも増えていることを考えるとそればかりが理由ではない。確定的な要因は分からないが、複数の要素が影響していると考えている。合格者アンケートの「本校に期待していること」の回答と、在校生アンケートの「本校のおすすめポイント」の回答が一致しているので、期待に応えられている結果であると分析している。

生徒自治と自由な校風

生徒の要望を丁寧にヒアリングし、全校生徒が納得できる形でルールを策定している。たとえば、生徒の要望から指定の靴下に紺色を増やしたり、今年の6月からポロシャツを導入したりしている。アイス自販機を導入したときも、みんなが快適に使えるルールを生徒自治で作成した。もし新たな要望が出た場合、全校生徒の意見を集約し、合意形成を図るプロセスを重視する。また、学校行事(入学式、歓迎集会、フィールドワーク等)が生徒の成長や学校生活への意識向上に寄与している。2025年4月7日の入学式では美術部の黒板アートや書道部のフォトスポットが準備された。

手厚い教育体制と姿勢

「二人担任制」や「ダイアリー」、「一人一人に寄り添うようなさまざまな取り組み」というのが合格者アンケートの「期待すること」に挙がった。この「二人担任制」や「ダイアリー」というのは、ずっと本校がやってきたことで、昨今、初めて始めたことではない。そういう意味では、本当にこういうことが期待されているということを改めて感じる。

カリキュラム・教育プログラム

「理科100実験」「数学的活動」と最初に書いてあるが、毎年卒業生の4割前後が理系に進んでおり、その土台になっているのが、「理科100実験」だったり「数学的活動」だったりするのだと思う。また、「英語ラウンドシステム」というのは、横浜市立南中学が始めたものだが、本校なりにアレンジして導入をしている。この英語ラウンドシステムを導入した一期生が、今は高校三年生になっている。他にも、「自習室」や「メンター制度」、あるいは「海外研修」などが期待されているようだ。

実体験を重視する学校行事

中2から高2まで毎年宿泊学習があり、これらの行事は生徒が夢を見つけるきっかけにもなっている。また、コロナで一時期中断したものの、20年以上続いている全員参加のオーストラリア研修のように、こちらから積極的に海外に出るだけでなく、海外からの交流来校も受け入れている。岩手・宮城方面への国内フィールドワークでは、震災の経験を横浜でも活かしてほしいという声を受け、生徒たち自ら何ができるかを考えて「チーム防災」が組織されたこともある。

理数系教育

生徒に対して好きな授業科目をアンケートした結果、1位は英語英会話、2位は理科であった。理科が2位になるのは珍しい傾向であり、英語はやり取りができる点、理科は実験が多い点が魅力として挙げられている。アンケートの記述部分から、生徒が授業の中で魅力を見つけていることが分かる。教員側も生徒が前向きに取り組める授業作りを意識し、オリジナルカリキュラムで努力している。

今、なぜ女子校か

本校はこのまま女子校で行こうと思っている。改めて女子校の意味を考えると、「女の子だから」とか「女の子なのに」とかということにとらわれず、感性豊かな六年間、自分の個性に向き合えるということが一番大きい。先ほども、理系の大学に4割前後が進んでいると話したが、巷では「女子は理系が苦手」と言われている。もちろん入ってきた時から理数が得意という人ばかりではないが、様々な取り組みをする中で理科数学に興味を持ち、自分と向き合う中で理系を選んだ生徒が4割ぐらいいるということ。自分は何に向いているのか、何ができるのか、自分自身の個性に正面から向き合うことができるのが女子校の良さだと思う。

神奈川学園について

中学入試責任者の藤澤先生より、神奈川学園についてお話がありました。
その中から一部を紹介いたします。

神奈川学園の概要

・創立111年(1914年創立) 無宗教
・中高6カ年一貫教育(中学募集のみ)
・学年 4~6クラス (1クラス33~39名,中学2人担任制)
・3学期制 土曜日は通常授業
・横浜から徒歩10分
・通学地域 横浜市70.4% 川崎市12.6% その他県内9.8% 県外7.0%(2024年度データ)
・専任教諭67名 非常勤講師38名 計105名(男女比 約2:3)
●2025年は約2、30年ぶりに6クラス編成となり、入学生は214名。1クラスの最大人数は36名で、生徒一人ひとりをしっかり見るために担任2名体制を導入。東京都からの入学生の割合が増加している。
●校則は最小限にとどめ、生徒の判断に委ねる部分が多い。生徒自身が生活をスムーズに送れるようなルールのみを設定し、細かい規則は設けていない。生徒や保護者からも共感を得ている方針であり、生徒の判断力や自律性を育むことを重視している。
●2025年6月からポロシャツを導入。夏の暑さ対策として、生徒や保護者の声を受けて新たに導入された。

神奈川学園の生徒の一日

●朝の読書時間(15分)を東北大学の脳科学の先生のアドバイスを受けて再導入。学年アドバイザーとして昨年から協力を得ている。
●昼食時は席替え後の周囲で食事をとることで、様々な生徒と交流を深める。中学生はおよそ2週間に1回、多いクラスでは1週間に1回席替えを実施。誰とでもつながれる力を育むため、昼食時の交流を重視している。
●高校2年生の授業の3分の2は選択制。ホームルームクラスは理系・文系で分けず、ホームルーム終了後は授業ごとに分かれる。
●自習室の完全運用は3年目。中学生は19時、高校生は20時まで利用可能。登録制ではなく全員使える。試験1週間前には3桁の生徒が利用するので、必要に応じて自習スペースを拡大。生徒の学習意欲を支えるため柔軟に自習環境を整備している。
●自習室の運営は外部団体を導入してスタート。大学生や卒業生の女性メンター3人程度が18時以降に自習室管理や質問対応を行っている。卒業生メンターも年々増加している。生徒にとって年齢の近い女性メンターが親近感を持たれ、良好な関係構築に寄与している。
●毎日学習内容や感想を記入し、先生がコメントを返す「ダイアリー(学習計画)」を活用。中学生は毎日ダイアリーに学習内容やコメントを書き、朝のホームルームで提出。2人の担任のいずれかが確認しコメントを返す。保護者からも好評。生徒の自立と先生との関係構築を図る。生徒が趣味や困りごとなども自由に書ける欄があり、直接言いにくいことも書きやすい。生徒の心理的ハードルを下げ、気軽に相談や報告ができることで、先生が早期に生徒の変化や問題に気づきやすくなる。生徒間のトラブルや問題が発生した場合、早い段階で対応し、一緒に解決することを重視している。

授業以外の様々な活動

●実体験重視の教育方針。生徒が実際に体験し、学んだことを表現する場として宿泊行事やホームステイを設けている。中学3年生全員参加のオーストラリアホームステイでは、事前に現地での会話の練習やシミュレーションも丁寧に行い、成功体験や課題を持ち帰ることで自信や成長につなげている。
●生徒が興味や関心を持つ分野に挑戦できるよう、多様なクラブ活動を用意。現在30クラブが存在し、週最大4日までの活動制限を設けて学習との両立を図っている。全国大会出場クラブもあり、初心者からでも挑戦できる環境を整えている。

理数教育

●ここ数年、理系進学率は約4割で推移しており、特に理学部・工学部志望者が増加している。薬学・看護・医療系志望は例年多いが、今年は理工系が最多だった。理科実験や観察などの体験的学習が理系志望者増加の要因と考えられている。数Ⅲまで履修する生徒も増えている。ただし、理系進学を強制してはいない。
●「理科100実験」と銘打ち、中学3年間で100件以上の実験観察を実施。週1回以上の頻度で行っている。実験後はレポートまとめや発表も行う。
●中学数学は中1・中2の2年間で履修し、オリジナルテキストを使用。習熟度別授業や数学的活動(トランプ・すごろく・魔法陣・小町算等)を多く取り入れ、算数が苦手な生徒でも取り組みやすい工夫をしている。
●近年、理系大学(東邦大学看護学部,麻布大学,東京薬科大学)との連携を協定し、大学訪問や大学教員による授業参加などを実施している。

ラウンドシステムを活用した英語教育

●市立南で始まった「ラウンドシステム」を部分的に活用。ラウンドシステムを週3時間、文法授業を3時間、英会話を週1時間実施している。ラウンドシステムは2020年(現在の高校三年生が中一の時)から導入され、コロナ禍の影響も受けつつ継続されている。
●ラウンドシステムは、英語を使う機会を増やし、アウトプットを重視することで生徒の実践的な英語力を高める。リスニングから始まり、内容理解、セットアップ、最終的に自分の言葉で話すリテーリングまで段階的に進める。家庭での言語習得プロセス(絵本の読み聞かせ→自分で読む→自分で話す)のと同様の流れを意識している。導入後は英検取得率や学習意欲の向上が見られる。
●2025年度入試から英語資格入試を導入し、英語資格を持つ生徒は入学時から取り出し授業(習熟度別授業)を受けられる。定期試験ごとにクラス移動が可能で、努力次第で資格を持たない生徒も上位クラスに入れる。中2の段階で資格保有者が14名から56名に増加、中1新入生では資格入試の影響で最初から35名に増加している。

大学進学実績

●マーチ系や早慶上位校への合格数は2024年から2025年にかけて減少しているが、一人で複数の学校に合格する生徒が減っているため実数はほぼ変わらない。大学側の合格の絞り方や基準が変化しているようにも感じている。昨年は英検順位や国語・社会の成績で合否が大きく変わったが、今年は同じ数値でも差が出る傾向があった。
●進学者数が多い学校でも10名程度と進学先は多岐にわたり、マーチ系や理系大学も含まれる。進路指導は複数の教員が関与している。生徒が秋入試で志望理由書や小論文、面接が必要な場合は、進路指導部が主体となり、担当教員を割り当ててチームでサポートしている。

2025年度中学入試の結果と2026年度入試

●中学入試は2月1日・2日・4日に実施。1日午後には2科・1科選択制を新設。合格最低点は午前58.5%、午後63%、1科入試は午後2科の基準に+5%と宣言していたので68%。
●合格判定は国語と算数の合計点で定員の8割程度の合格を決定。足切りはほぼなし。
●2025年度から英語資格入試を導入。英語資格入試は2月2日のみ実施、英検スコアを換算し、国語・算数・英語資格換算点のうち高得点2科目で合否を判定。38名が出願し、24名受験、20名合格となった。英語資格換算点については、英検に新しい級が追加されるという話もあるため未確定。もし新しい級が導入された場合には、スコア換算方法を変更し、確定次第受験生に通知する。今年度の換算点基準は以下の通り。
100点 ⇒ 英検2級合格以上  CSEスコア 1980以上
90点 ⇒ 英検準2級合格    CSEスコア 1980以上
80点 ⇒ 英検準2級合格    CSEスコア 1728~1979
70点 ⇒ 英検3級合格     CSEスコア 1728以上
60点 ⇒ 英検3級合格     CSEスコア 1456~1727
50点 ⇒ 英検4級合格     CSEスコア 622~1455 
●複数回受験優遇制度は、ボーダーラインから10点以内で不合格だった場合、それ以降に受験した2科目(国語・算数)の合計点に10点加算。A日程午後の1科入試については、ボーダーラインから5点以内で不合格だった場合、それ以降に受験した2科目(国語・算数)の合計点に10点加算する。

学校訪問を終えて

1クラス40名未満で二人担任制をとっているので、とても面倒見がよさそうな印象を受けました。また、女子校で理系進学率がおよそ4割あるというのはかなり高い比率だと思います。理科100実験など、実体験を興味・関心につなげる教育方針には、理科講師としてとても好感を持てました。事前の準備、実験中の安全管理、事後のレポートや発表の指導も含めて、実験授業は相当手間がかかるはずなのに、それを週1回のペースで行うという取り組みには頭が下がります。