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投稿日:2018年06月19日

テーマ: 算数

つるかめ算は面積図で解くな!(真相編)

どうもこんにちは。
受験ドクター算数科のRS講師です。

雨の日は家をでるのが億劫になるんですが、
アジサイの定点観測のために、毎日欠かさず写真を撮りに行っています。
その花が先日見事にさいてくれました。
次のブログでご紹介したいと思っていますが・・
今回は、前回の続き。

「つるかめ算は面積図で解くな!」(真相編)
ということで、面積図を使うことによるマイナス面のお話をしたいと思います。

前回は、つるかめ算とは何か?というお話と、面積図の使い方をご紹介しました。問題を長方形の面積の問題に置き換えてしまうという部分で面積図は、非常に便利な解法であるというお話でした。

が、前回のお話をしっかり読んで頂くと見えてくる結論なんですが、
面積図には、本来つるかめ算で学ぶべき要素が決定的に抜けていることにお気づきでしょうか?

つるかめ算とは、換言すると「ある状態Aから別の状態Bへ、一定の数量ずつ変化していく性質を利用して、正しい答えを求める」という考え方です。これは、前回のブログでも最初にご紹介したとおり、表などを利用したアプローチが基本になるわけです。
ところが、面積図を書いてしまうと、「少しずつ変化させる」という操作は不要になってしまい、イキなり結論の状態を面積によって表現し、ただ逆算で□を求めるだけの「面積の問題」へ単純化してしまいます。
つまり、つるかめ算を面積図で解くことが当たり前になってしまうと、本来身につけるべき考え方が身に付かずに、面積の問題を解くという作業に終始してしまう危険があるのです。
面積の問題を解けるようにするためには、面積の問題をちゃんと練習すればいいのであって、つるかめ算である必要がありません。

さらに、面積図にはもう一つ致命的な欠陥があります。
それは次のような問題の場合です。

〈問題〉Aくんはコップを運ぶ仕事をすることになりました。1個運ぶ毎に100円もらえますが、途中でコップを割ってしまうと、100円はもらえないだけでなく、代金として300円を弁償しなければなりません。Aくんは20個のコップを運んで1200円もらうことができました。途中で割ってしまったコップは何個ですか。

つるかめ算 面積図 8

いわゆる「弁償つるかめ算」と言われるこの問題は面積図では解けません。
面積図で表すことが出来るのは、2種類の量がどちらも「正(プラス)」である場合です。
「50円の切手と80円切手」や「分速60mと分速80m」は2種類の長方形として表すことが出来ますが、「弁償」のように、「負(マイナス)」として働く量は、面積で表現することができないわけです。(※平均面積図を用いる場合はこの限りではありません)
この問題は、つるかめ算の基本通り、全てのコップを運んだ場合にもらえる金額と、1個壊す毎に変化する金額を求め、1200円にするためには、何個コップを割ればいいのか?を考えなければいけません。

つるかめ算 面積図 9

1つ壊すごとに400円ずつもらえるお金が減ることがわかります。
(100円がもらえない事で、100円減り、さらに弁償代として300円支払うので、100+300=400円ずつ減る)
2000―1200=800、800÷400=2 → 壊れたコップは2個と分かります。

以上のように、面積図はつるかめ算を解く上でとても便利なツールである一方、4,5年の間に学ぶべき重要なポイントを見過ごしてしまうという点において、また弁償つるかめには利用できない点においても、最初に身に付けるべき解法ではないということがおわかりいただけると思います。
もちろん面積図は非常に有効な場面もたくさんあり、受験までにはかならず身に付ける必要がありますが、それは6年生になって一通りの考え方をしっかり身に付けた後に発展的な考え方として習うぐらいでちょうどいいのです。逆に6年生になって、つるかめ算の基本が身についていないという生徒の方が問題になります。
面積図による解法は教える側からすると、魅力的なツールになります。なぜなら理解の悪い生徒もとりあえず、これで教えたら出来るようになるからです。でも、それはつるかめ算を理解させたということにはなりません。
塾の授業では大勢に理解させなければいけないという事情もあって、面積図を使った場しのぎ的なやり方になっていることもあるので注意が必要です。

算数には、それぞれの単元・文章題がもつ「理解させたい考え方」があります。
つるかめ算を学習の初期の段階から面積図で解いてしまうこと事は、そのような意図を無視し、「とりあえず答えがあえばいいんでしょ」というやっつけ的な学習方法なのです。

以上が、今回のブログのタイトルの理由ということになりますが、
あえて言うなら「初学者のうちは」、ということです。
学習が進んで、平均算や割合に関連する他の単元を一通り終えた後は、積極的に面積で表すということに慣れていく必要があります。

これをお読みなった保護者の方で、4年生修了以上のお子様をお持ち方はいちど
お子様に普通のつるかめ算と、弁償つるかめ算をミックスにして、解かせてみてください。
もし、ひっかかるようなら前回記事と合わせて参考にして頂きながら、もういちどつるかめ算という考え方の本質についてお子様と一緒に取り組んでみてはいかがでしょうか。

それでは今回はこのあたりにて(^_^)/~

算数ドクター