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投稿日:2017年10月05日

テーマ: 理科

ヒアリを知ろう~2018年度入試「理科時事問題」対策①~

皆さんこんにちは。
受験ドクターの理科大好き講師、澤田重治です。
夏の暑さが過ぎ去ると、一気に入試が近づいてきますよ。
受験生の皆さん、頑張りましょう!

さて、入試が近づいてきているのは、受験生だけでなく、受け入れる学校側にとっても同じことです。
そろそろ、入試問題を完成させていかなければなりません。
中学校では、入試問題は夏休み中に作られていることが多いようですね。
実際、ミスがないようにチェックする時間を考慮すれば、遅くとも9月中には原型はできているはずでしょう。

つまり、入試の「時事問題」の題材は、この時期にはすでに出そろっているということです。
一体、今年は何が出題されるのでしょうか?

今回のブログでは、数ある時事問題候補の中から「ヒアリ」について掘り下げたいと思います。
覚えておいた方が良いキーワードは赤文字で示していきますので、学習の参考にしてください。

なぜこんなに大騒ぎになったの?

人の活動によって本来の分布域以外の地域に移動された生物のことを外来種、本来の分布域に生息している生物のことを在来種といいます。
つまり、もともと日本に生息する生物であっても、例えば沖縄にしかいなかった生物が北海道に運ばれれば外来種ということになります。

さて、知っての通り、生物界には食物連鎖と呼ばれる生物同士のつながりがあり、食物連鎖によってつながった生物の世界は生態系と呼ばれています。
生態系は、それぞれの生物に対して天敵がいることで、個体数のバランスが保たれるようになっています。

しかし、今までいなかった生物が入ってくると、その生物には天敵がいないため、生態系のバランスが崩れてしまいます。
場合によっては、在来種が絶滅してしまうこともあるのです。

特に、人体や生態系、農林水産業などに深刻な被害を与えることが予想され、「特定外来生物被害防止法」という法律で指定されている生物のことを特定外来生物と呼びます。

そして、今回問題になっているヒアリは、南米中部原産の外来種で、特定外来生物の一つなのです。
さらに、定着した国での被害状況から、環境省が「特に日本に入れたくない生物」としてマークしていた生物の一つがヒアリだったのです。

では、なぜ環境省はそこまでヒアリを恐れていたのでしょうか?

ヒアリの何が恐ろしいの?

① 数が多い
ヒアリは、スズメバチの仲間に入る昆虫です。
そして、ハチやアリの仲間(ハチ目)の昆虫は、多くの個体が集まって社会生活をするという特徴があります。
そのため、数年前に話題になったセアカゴケグモ(同じように毒を持つ外来種で、結局日本に定着してしまった)に比べて、遥かに多くの個体が生息することになるのです。
当然、私たち人間がヒアリに遭遇する可能性も高くなるでしょう。

② 攻撃性が高い
自分たちの縄張りに入ってきた生物に対して、猛然と襲いかかる性質があるそうです。
雑食性で、他の昆虫などの節足動物や、小型の脊椎動物までえさとしてしまいます。
人間は、直接ヒアリの毒で死ぬことはほとんどないそうですが、アレルギーによるアナフィラキシーショックによる死亡例は報告されています。
ヒアリが定着してしまった他の国では、確認せずに草むらなどに座ることはできないそうですよ。

③ 電気配線をかみ切る
ヒアリが電気配線をかみ切る事故は、すでに定着してしまった国ではよく起こることだそうです。
また、それが原因で火災になることもあるようです。

④ 植物や家畜への被害
ヒアリは雑食性なので、植物の種子苗木を食べてしまいます。
また、小型の脊椎動物もえさとするので、鶏のひなを食べてしまうこともあります。
さすがに、牛などの大型哺乳類まではえさにできないようですが、ヒアリの毒は牛にとっても大きなストレスになるらしく、乳牛の乳の出が悪くなるなどの被害も報告されています。

対策は?

ヒアリが定着してしまった国や地域の中にも、その被害が大きく出ているところと、あまり大きな被害が出ていないところとがあるようです。
その一番の違いは、ヒアリの天敵となる生物がいるかどうか。

そこで、ヒアリの対策のために、あえてヒアリの天敵である「ノミバエ」という寄生バエを繁殖させた地域もあるとか。
このノミバエには、「ゾンビバエ」というあだ名があるそうですよ。
それはそれで恐ろしいですよね。

では、日本ではどうでしょうか?
現在、もっとも活躍が期待されているのは、日本の在来種である「クロオオアリ」や「サムライアリ」です。
ヒアリが大群になってしまったら勝てないかもしれませんが、数が少ないうちなら十分勝機があると言われています。
がんばれ、日本の「普通のアリ」たち!

しかし、ヒアリを恐れるあまり、その天敵となる可能性のある「普通のアリ(クロオオアリ)」まで駆除してしまう人がたくさんいるそうですよ。
ヒアリ発見のニュースの後、アリの駆除剤が飛ぶように売れたということです。
正しい知識を持って、正しく対処することが大切なのですね。

そして、最近の入試では、知識を活用する問題が流行しています。
これらの現状を知った上で、自分なりの意見や考えを持っておきたいものです。

理科ドクター