最新記事 2019年04月09日

テーマ: 理科

宇宙に飛び出してみよう④ キャッチボール編

皆様こんにちは。大木快です。

先日、はやぶさ2がリュウグウの表面にタッチダウン(着陸)する映像が私たちに送られてきました。
着地の衝撃で周囲の岩石が飛ばされてゆっくりと空高く舞い上がるさまは、前回跳躍運動をシミュレートして自分が描いた世界観そのもの。
タッチダウン寸前のはやぶさ2の速さは、なんと7㎝/秒だったそうです!
あれらの岩石の滞空時間はどのくらいになるのでしょうね。

前回は宇宙で跳躍運動を行いましたが、一回8時間越えとなってしまい、疲れる展開でした!
これに懲りることなく、むしろ、これに味をしめて(?)今回も宇宙ネタ。

まずは今回のお題。

今回の試みは…
キャッチボール。

キャッチボールをシミュレートするための「根本原理」は、
運動量保存の法則

簡単に言うと

衝突の前後で、運動量=質量×速さ の和が保存される

ということ。
式で説明すると、
m1 × v1 + m2 × v2 = m1 × v1′ + m2 × v2′

ここからは、具体的に見ていきましょう。
今回キャッチボールをするのは、純粋な宇宙空間。

さて、宇宙では踏ん張りがききません!!
地面で下半身を使ってパワーを得ることができないので、
上半身を使って全力で投げます。
設定は本格的に野球をやっている大人。ということで、
・体重=80kg
・ボールが飛び出す速さ=90km/h=25m/s
ボールの重さはルールに従うことして、
・ボールの質量=145g
として計算してみますね。

ボールを投げました!!

さて、投げた人の動きはどうなるでしょうか。運動量保存の式を立てるとこうなります。
人間×速さ=ボール×速さ
これに先のデータを代入すると、
80×v=0.145×25
となり、人間の後ろ向きの初速vは

v=0.045m/s 。つまり、
秒速4.5㎝。
おおっ、結構速い。空気抵抗による減速がないので、ゆっくりではありますが確実に一定方向に運動し続けます。

さて、25m/sで投げられたボールを、今度はもう一人のプレイヤーが…
ナイスキャッチ!
取り損ねると、ボールとは永久におさらばですからね。怖い怖い。
ボールを受け取る側ついての運動量保存の式は
ボール×速さ=(人間+ボール)×速さ
で表されます。キャッチした人の初速を計算しますと、
0.145×25=(80+0.145)× v
v=0.045m/s
先ほどの投げ手とほぼ同じ速さ。
ということは、
2人がだんだん離れながらキャッチボールをすることになります。
一球受けて、一球投げるごとに、
4.5+4.5=9cm/sずつ加速します。10球往復すると、
90cm/秒に。

これで2人は何もしなくても
どんどん離れていく状態になるのです。

【入試ではこうきかれる】

運動量保存は名前こそ出てきませんが、入試には
こんな形で出されるので、知っておくとよいでしょう。

宇宙ステーションから2メートルほど離れた場所で、100キログラムの実験用具を使って実験していたところ、トラブルによって安全のために宇宙ステーションと体をつなげていたロープが外れてしまいました。手を伸ばしても宇宙ステーションやロープには手が届きませんが、実験用具は手元にあります。この状況で、宇宙飛行士が自力で宇宙ステーションに戻るためにはどうしたらよいですか。30字以内で答えなさい。(芝浦工大柏中)

先ほどのキャッチボールを思い出してください。
「実験用具を宇宙ステーションと反対の方向に思いきり投げつける」
といった答え方ができそうですね。

【はやぶさ2と運動量保存】

はやぶさ2が搭載しているエンジンは次のうちどれか。マイナスイオンエンジン
イオンエンジン
ナトリウムエンジン
無酸素エンジン
イオンビームエンジン
キセノンエンジン
スペースエンジン

選択肢を作りすぎました…
さて、正解は、
イオンエンジン。
キセノンという物質の粒子(イオン)を、高速で発射することで、反対方向への推進力を得ているのです。
どうです、やはり、野球のボールと同じでした。

ところで、宇宙空間には多くの「スペースデブリ」と呼ばれるゴミが高速で飛んでいて、問題になっていますので、よい子のみなさんは宇宙空間でキャッチボールをしないほうがよさそうですね。
それではまたお会いしましょう。