最新記事 2018年07月10日

テーマ: 理科

鏡の中には誰もいない ~左右反転の謎~

算数・理科担当の大木快です。
先日街を歩いている時、こんな太陽が見えました。

鏡 左右逆転1

「日暈(ひがさ)」と呼ばれる現象で、氷の結晶内に入った太陽の光が屈折して見られる現象です。虹に似ていますね。この時期の真昼の太陽なので、気づいている人は少ない印象でした。なぜか? ほぼ真上にあるからです。写真のアングルでわかると思います。
実際には、広範囲で観測されていたようで、しっかりニュースになっていました。

今回は身の回りに見られる題材をネタにしたこんな問題から紹介します。

慶太君は、(1)救急車の車両の前側に書いてある文字に興味を持ちました。これは、車を運転している人が(       )ときに、緊急車両がそばに近づいているとすぐにわかるようにするための工夫だそうです。
下線部(1)は下図ようになっていました。
鏡 左右逆転2 

 

(     )に当てはまる状況を15字以内で書きなさい。
(H28 慶應普通部)

文字が反転していますね。鏡に映すと、こうなります。

鏡 左右逆転3

したがって空欄には、鏡で後ろを見た、という趣旨のことを書けばよいことがわかります。ちなみに、この問題は社会の問題です。念のため。

ところで「鏡に映った像は、上下は逆にならないが、左右が逆になる」
というのを聞いたことがあるでしょうか。

なぜ左右だけ?
昔から疑問に感じていましたが、どう理解すればいいのか悩ましい。
鏡に向かって「右手を」上げると、鏡の中の自分が「左手を」上げている…
だから、左右が逆になっていると。
しかし何でしょうか、この違和感。
だって、宇宙空間に行ったら、重力系から解放されるので、
そもそも上下も左右もないはず!!
この長年の疑問、いろいろ調べてみると、この感覚は間違っていなかったことがわかってきました。
今回は鏡の左右反転の謎について解き明かしていきます。

まず、左右反転の状況を検証します。
例えば、こんな時計。

鏡 左右逆転4

これを鏡に映すと、

こうなります。

鏡 左右逆転5

文字盤の12と6の向きは変わっていません。
3と9の向きだけが、確かに逆になっています。
うーん、左右だけが反転している?

そこで、次のようなことを考えていきます。
まず、透明な板に描いた絵だったらどうなるかを考えてみましょう。こんな感じ。

鏡 左右逆転6

この図の面を表面と呼ぶことにします。
この「表面」を自分の方に向けたまま鏡の前に立つと、どう映るでしょうか。

鏡の中には、

鏡 左右逆転7

はい。自分が見ている表面と、全く同じ像が鏡に映っていますね。
何も反転していません。
では、この表面が鏡の方に向くように、(1)持っている板を裏返すことにします。
自分から見た板は、このように見えています。

鏡 左右逆転8

これを板の裏面と呼ぶことにします。このとき鏡に映る像はどのように見えるでしょうか。

鏡 左右逆転9

こうなります。予想通りでしたか。
何も反転していません。
つまり、「反転して」見えたのは、
時計の絵の裏面を見ている
ということであって、
鏡に映ったものはやはり基本的に反転していないのでありました。

それでもまだ、上下が反転せず、左右が反転しているじゃないか、と思う方もいらっしゃるでしょう。

ではここで質問です。

傍線部(1)持っている板を裏返すことにします。とありますが、
どのように裏返したでしょうか。
①垂直方向の中心線を軸に「左右に」180度回転させた
②水平方向の中心線を軸に「上下に」180度回転させた

先ほどの図を並べてみます。どのように反転していたでしょうか。

鏡 左右逆転10

こうでしたね。
もうお分かりかと思いますが、この時見ていた像は
①垂直方向の中心線を軸に「左右に」180度回転させていた
ものだったわけです。
ですから、もしそのとき②の水平方向の中心線を軸に「上下方向に」180度回転させていたら、こうなったはず。

鏡 左右逆転11

ですね。したがって、このとき鏡に映って見える像は…

鏡 左右逆転12

ということになります!
左右を変えずに、上下だけ「反転」することに成功しました!!
つまり、左右だけが入れ替わって見えたのは、元の像を反転するときに横方向に回転させていたから、ということなのです。
これで、「上下は反転しないが、左右は反転する」と思われていることの真相が明らかになりました。

それでは今回のまとめです。
鏡に映る像は上下も左右も反転しない。透明版の後ろから見ると、まったく同じ像が映っている。
右手を上げると、鏡の中の私の左手が上がるように見えたのは、実際には、
自分の右手が、同じ右側に映っている
だけのことだったのです。
実際、鏡の向こうに人はいません。鏡に映った自分を見ているわけですから、頭が上、足が下、に見えるのと同様に、右側に右手が映っているのは、当然と言えば当然ではないでしょうか。

余談ですが、スマートフォンで自撮り(地鶏ではありません)にするとき、撮影前に画面に表示されているのは「鏡像」です。右手を上げると、画面の表示は向かって右側の手が上がっています。実際に撮った写真を見ると、向かって左側の手がしっかり上がっているのがわかります。
目的は、お化粧直しで鏡の替わりに使うためでしょうかね(笑)。

それではまたお会いしましょう。