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投稿日:2019年05月20日

テーマ: 算数

中学受験生でも解ける!?東大入試2019年版~解説編

みなさんこんにちは。受験ドクターの桑田陽一です。
5月の講師ブログをお届けします。

令和元年が始まったと思ったのもつかの間、まもなく1か月が過ぎようとしています。
塾での新年度である2月、学校の新年度である4月に加え、今年は5月にも改元という気持ちを新たにする機会がありました。
元号の変わり目に際して、目標を立てた受験生もたくさんいるでしょう。そのときの気持ちは続いていますか?

私も、5月1日から小さな目標を2つ立てて、これまで何とか続けることが出来ています。小さな目標から、コツコツと頑張っていきましょうね。

さて今回は、前回お届けした「中学受験生でも解ける!?東大入試2019年版」の解説編をお送りします。

まずは、問題を確認しておきましょう。

2019年度 東京大学 文科 数学 第3問(改)

正八角形の頂点を反時計回りにA、B、C、D、E、F、G、Hとします。また、投げたときに表と裏が等しい確からしさで出るコインがあります。
点Pは最初に点Aにあります。
コインを投げ、表が出れば点Pを反時計回りにとなり合う頂点に移動させ、裏が出れば時計回りにとなり合う頂点に移動させます。
このとき、次の問いに答えなさい。

(1)コインを10回投げたとき、点Pが点Aにあるようなコインの表裏の出方は何通りありますか。
(2)コインを10回投げたとき、途中で点Pが少なくとも1回点Fに移動した上で、10回目には点Aにあるようなコインの表裏の出方は何通りありますか。

では、さっそく解説を。

(1)コインを10回投げたとき、点Pが点Aにあるようなコインの表裏の出方は何通りありますか。

最初、点Pは点Aにあって、コインの表裏によって下図のいずれかの矢印のように動きます。

kuwata1

したがって、1回目のコインを振ったとき、Bにいるような出方とHにいるような出方がそれぞれ1通りずつ。
これを図に書き込んでみましょう。

kuwata2

このあと、2回目のコインを振ると点BまたはHから下図の矢印のように移動します。

kuwata3

点Aに戻ってくるようなコインの出方は、点BまたはHからの2通り。
点Cに進むのは、点Bからの1通り。点Gに進むのは点Hからの1通りであることが分かります。
図には、2回振ったときの場合の数を赤で、前回の場合の数を灰色で示してあります。

3回目はどうなるでしょうか?

kuwata4

灰色で示した2回目の数値を経て、点B、D、F、Hのいずれかに移動します。
この中で、たとえば点Bに移動する場合には、2回目の時点で両隣のAかCにいたはずです。
したがって3回目にBに来る場合の数は、前回Aに書かれた2通りとCに書かれた1通りを加え、3通りです。
他の点についても同じように、両隣の点に前回書かれた場合の数を加えれば、今回の場合の数となります。
このあたり、「道順の問題」(受験ドクター イメージde暗記 根本原理ポイント365 基礎編096)と似たところがありますね。

さて、要領がつかめれば、あとは単純作業です。一気に行きましょう!

4回目。今回の赤い数値が、両隣の灰色の数値(前回3回目の値)の和になっていることを確認してください。

kuwata5

5回目。

kuwata6

6回目。

kuwata7

7、8、9回目。

kuwata8

そして10回目!

kuwata9

と、これでようやく計算完了!図の点Aに書かれた272通りが答えです。

(2)コインを10回投げたとき、途中で点Pが少なくとも1回点Fに移動した上で、10回目には点Aにあるようなコインの表裏の出方は何通りありますか。

「(1)の解説を読んでみたら、(2)を考えられそうな気がする!」と思った人は、ここで読むのを止めてぜひ自力で挑戦してみてください。東大入試の問題を考えるなんて、ワクワクしませんか?




では、解説です!

「少なくとも1回点Fに移動」ということは、点Fに移動したのは2回かも3回かもしれません。
こんなときには、逆に「途中で点Fに移動しなかった場合」を考え、すべての場合の数から引いて求めるのが定石です。

kuwata10

(1)と同じような図ですが、点Fに移動しない場合を考えるので、点Fに×印をつけておきます。

kuwata11

2回目の図までは(1)と変わりませんが、3回目から×印の影響が現れます。
点Fは通れないので、3回目の図で点GからFに伸びる矢印はありません。

kuwata12

4回目と5回目。×印の影響で、(1)のときよりも小さめの数値が書き込まれることになります。

と、ここまで同じような図がたくさん並んでいるので、敢えて6~9回目の図を省略し…

kuwata13

10回目まで作業を続けると、このような図が出来上がります。
意欲のあるみなさんは、自分でも確認してみてください。

よって、(2)の答えは図のAに書かれた206通り…ではありませんね。
いま求めたのは、「途中で点Fに移動しなかった」場合の数です。求めたかったのは、「少なくとも1回は点Fに移動した」上で10回目に点Aにあるような場合の数でした。
(1)の答えである272通りがすべての場合の数に当たるので、ここから引いた272-206=66通りが(2)の答えということになります。

今年も東京大学の入試問題を楽しんでもらえましたか?
また何年後かに、同じテーマでブログを書けるときが来るかもしれません。そのときをお楽しみに。

今回はここまで。

算数ドクター