【 自由が丘校長 】毛利 兼成(かねなり)先生(ペンネーム)

最後に過去問指導例を載せておきます。

過去問指導例

難関校

麻布中
2011年は、井上ひさしさんを追悼する意味なのか、以前麻布中で出題された井上ひさしさんの作品が、ほとんどそのまま出題された。扱われた場面もほとんど同じである。
従って2011年度に限っては、国語ではかなりの高得点が出ているのではないかと思われる。
言い換えれば、国語の力があまりなくても合格できた可能性が高いということである。
このような状況なので、合否を分けた一題を挙げろといわれても苦しいのだが、強いて挙げるとすれば、問十三の(1)、(2)だろう。
この問題は、それぞれの場面で出てきた「蛍」と「エゾ蝉」の意味を問うもので、暗示している内容を連想して答えさせる、麻布らしい問題である。

解くコツは、

蛍がいなくなった=祖父母のところで暮らすという希望を失った主人公の姿
普段の生活の場である山から下りてきて、捕まりそうになっているエゾ蝉の状況=住み慣れた孤児院を出て祖父母のところで暮らそうとしたが、失敗してしまった主人公の状況

という風に、象徴しているものと主人公のおかれた立場や心情の共通点を考えることである。
ただこの問題も、やや解答の方向性が重なっている部分があり、「蛍」の問題でしっかり連想できれば、「エゾ蝉」のほうは解答しやすかったのではないかと思う。
このことからも、上述したように、やはり麻布らしくない高得点の争いになったのではないかと予想される。


桜蔭中
これは物語文にも言えることだが、傍線部をしっかり読みとらせる問題が多い。
平成20年度では、傍線部3のから読み取れることを傍線部4から考えさせるという問題を出題している。これほどまでに、傍線部の正確な解釈を求めるのが、桜蔭中なのである。
対策としては、設問文が聞いていることや設問条件をしっかり押さえたうえで、傍線部やその前後の文をよく読み、傍線部の文で不明確な言葉や内容を具体化していくこと(例えば、傍線部に指示語や比喩があれば、何を指しているのか、前後の内容からはっきりさせていく。)が重要である。
そのうえで、キーワード(問われている言葉)をとらえ、それを具体的に説明しているところを探せば、解答の根拠が見つかる。
後は、因果関係に注意しながら、まとめていけばよいのである。

具体的な解き方の例
平成20年度  問三
傍線部「イラクで毎日人が死んでいることも知らない」について、何故知らないと言うのか、この傍線部に込められた筆者の思いを説明せよ。という問題。

まず、この設問が二段構えになっていることに注意する。
答えるべき内容は、
①「知らない」と筆者が言う理由
②①のように表現することで、筆者が読者に伝えたい思いは何か。
以上、二つである。
そしてポイントは、筆者の考える「知っている」とは何かということを押さえることである。(「知っている」という言葉の定義づけ)

次に、傍線部の前後の内容を確認する。
すると傍線部の直前の形式段落の内容から、「私」たちは、その対象物を知識として学習することによって、実際に見てもいないのに、「知っている」と錯覚しているだけであり、だから本当にその対象物を「知っている」とは言えないという筆者の考えが読み取れる。
つまり筆者は、知識としては知っているが、実際に見たり聞いたりしていないので、そういう意味で、「知らない」と言っているのである。

次に、②を考える。
上記のことから、自分たちが物事を情報だけで深く考えずに判断してしまう傾向があることが分かる。だから筆者は、あえて傍線部の直後に「自分が知っているのは目の前に寝ている猫たちが愛らしいということだけだ。」と傍線部の内容と対比させる文を書くことで、自分は情報として、それを(傍線部の内容)知っているだけであることを強調するとともに、それを「知っている」と錯覚してしまう自分たちへの戒めの意味もこめて傍線部のような表現をしたことが読み取れる。

後は、①を理由にして、②を文の最後に持ってくる形でまとめる。

附属人気校

実践女子学園中

この学校の国語の入試問題の難易度は意外と高い。
例えば、平成20年度第一回では、池田晶子さんの文章で哲学的なテーマ(将来と夢の違い→幸福とは何かを問うている文章)を扱った文章を出題している。
設問の難易度は抑えられているが、国語が苦手な生徒には手強い文章を出題する。
では、この題材の問題で、問十の解き方を説明していく。
筆者の考えと合うものを選ぶ問題である。

選択肢は、
ア 「人生の目標」は職業や生活の実現であるという内容
イ 「将来の夢」の実現が「人生の目標」につながるという内容
ウ 生活をお金で買うことはできないという内容
エ 幸福はお金で買えるという内容
オ 不幸は外から見てわかるものではないという内容
カ お金が幸福そのものだと思う人は単純であるという内容

以上の6つである。

本文と照らし合わせるのが原則だが、時間がないときは選択肢のグループ分けを行って、的を絞るとよい。
例えば、

ア・イ=人生の目標や将来の夢に対する考え方
エ・カ=幸福の定義づけ
オ=不幸の定義づけ(エ、カとつながる)
ウ=生活の定義づけ

と分けておくと、探すときに楽だし、根拠を一か所押さえれば、自動的にいくつかの選択肢が消えるので、選びやすい。
このような手順を踏まえたうえで、本文に戻る。

1段落の内容からア、イが両方とも間違い。
12段落の内容から、この選択肢と反対の内容なので、間違い。
13、14段落の内容から、ウ、エは間違いとわかるし、カは単純だと思っている内容が選択肢と違うので、間違い。
オは、14,15段落の内容から幸福は「内」にあり、外から見えないものと述べられているので、言い換えれば不幸かどうかは外からわからないといえる。したがって、オが正解となる。この「言い換える」ことによって、正解にたどり着くという手順はとても大切で、設問作成者の立場からすれば、本文に書いてあることをそのまま書くなんて単純なことはしないのである。実践女子の入試問題は、このように工夫されていて、さらに物語文の選択肢の文は三行にわたるなど、レベルの高い分析力を要求するし、知識問題も多く出題されるので、読解だけでなく知識問題もしっかり勉強していくなど、バランスのとれた国語の学習が必要である。

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