語彙を増やすには

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「ウチの子、言葉を知らなくて~。だから国語ができないんだと思うんです!」

集団塾で、保護者の方からこのテの訴えを幾度聞いたことでしょう・・・。

語彙・・・ごい・・・すなわち!
自分が使いこなせる言葉の量!!!
ボキャブラリー!!!

生まれおちた赤ちゃんは、一語の語彙も持ち合わせません。
「おぎゃあ!」
という泣き声すら、それを言語としては知りませぬ。

話しかけられ、呼びかけられ、少しずつ少しずつ、混沌とした世界を言語で彩り、形作っていく・・・

年齢に比例してボキャブラリーは増えていく。

成人になるころには、個人差はあるにせよ、子ども時代とは格段に違う膨大な数の言葉やその言い回しを使いこなせるようになるのです。

社会で自立している大人で、小学生並みの語彙しか持ち合わせない人に私はお目にかかったことはありません。
ですから、あなたのお子さまも大丈夫!
大人になるまでは立派に言葉を覚えますよ~!

それじゃ、困るんです!
受験に間に合わないじゃないですか!!!
中学入っても、高校生になっても、国語の成績で苦しむじゃないですか!!!
無責任なこと言わないで下さい!!!

・・・というお叱りが想像できますので、上記のようなことは直接悩んでいらっしゃるお母さまにお話ししたことはございません。
では、実際お話しした解決策とは?!
春野「語彙をイキナリ増やすには、本人の言葉に対する意識づけが必要なんです」
ママ「それって、本人のやる気次第ってことですか?」
春野「やる気・・・というより、言葉に対する意識をもつ、ということにつきるんですよね。言葉って実際覚えたら、他の暗記モノと違って、即使ってみることができるでしょう?たとえば、興味ある分野の言葉に対しては敏感で、『こんな使い方するんだ』って、まねて使おうとするでしょう?言葉に対して、意識が向くようになったら、語彙は自然と増えていくんですね。
使い方もよくワカラン言葉をお勉強だからと無理やりつめこまれても、どんどんこぼれおちてしまう・・・言葉に対して意識が働かなければ、本人の語彙として定着はしません。」
ママ「では、具体的な方法は?!」
春野「方法は二つあります。」

語彙を増やす二つの方法

一つは、国語の読解で文章を読むとき、知らない言葉に印をつけさせるのです。
すると、知っている言葉と知らない言葉を区別しなければならない。
知らない言葉をいやでも意識して目に心に留めます。

これが大事。
とても大事。

野に転がった石ころは、見えていても存在に気づかない。
気にも留めませんね。
つまり、存在に気づかなければ、拾うこともありません。
石ころに気づいて、意識する。 石ころの形状に目をとめてもらう。
そういう意識の働きが、石ころを拾う行為、すなわち言葉を覚えることにつながります。

読みながら、「よくわからない」と思った言葉を○で囲む。
後でじっくり前後を読んで意味を類推してみる。

辞書を引くのはそれからでいいのです。
あらかじめ類推することで、辞書を引いた時心が動く。
心が動くと記憶に残る。

もう一つは、ボキャブラリーノートを作りましょう!ってことです。

ボキャブラリーノートは、自分が出会った言葉を書きとめていくノートです。

今まで私が指導した手順を書きましょう。

ボキャブラリーノートを推奨しても、ノートを作って、自ら積極的に書きこんでいくお子さんはほとんどいません。
初めは、半ば強制です。

ノートに書くのは次の3つ

    1. テストで意味がわからず、それがわかればかなり解きやすかったと思われる言葉
    2. テキストで出会った、意味のあいまいな言葉
    3. 授業中に教わった大事(そう)な言葉
        実際は指導の段階で書く語をいちいち指示することになります。

集団授業の場合、授業時に行うと、テキストの進度に支障が出るので、大切な語に印をつけさせ、使用例とともに意味を教え、帰宅後に、復習として、ボキャブラリーノートにそれらの語を書き写すことを指示します。
その際、授業中に覚えた意味をうろ覚えでもいいからとにかく書いてから、辞書で調べる、という手順を踏んでもらいます。(一度、見当をつけてから辞書を引いた方が、何も考えずに機械的に辞書を引くよりも、格段に記憶の定着率が上がるのです。)
ノートに書き出す語の数は少なくても構いません。3つも書ければ十分です。

さらに、テストの後の振り返り作業の際、テスト内から大事そうだが、意味をはっきり知らなかった語をピックアップして、同じようにノートに書いてもらいます。
意外に盲点ですが、役立つのが、選択肢の中の語彙。
選択肢の語彙は入試頻出語が多いのです。

日付とどこから引き出した語か(テストの回数、種類)は明記した方が記憶に残ります。
これまた少なくてもOK。
大事なことは続けることなのです。

ところが、集団授業でノートを推奨し、保護者会で告知しても、ノートを作って実行するお子さんは、全体の4/1程度です。

個別指導の場合は当然横についているので、実行率は100%。
大事な語が出たら、その場で書かせ、例文を出して語感をつかんでもらいます。
ところが、個別指導とはいえ、こちらもやはり家庭学習の際にお子さんが自主的に書きこんでくることはありません。
宿題として予定表に書きこんで初めてやってくる。

なぜか。

語彙を覚える必然性が、動機づけが、乏しいからです。
国語のできるお子さんはたいていの場合、新しい語彙が出てきたらおもしろがります。
あからさまではなくとも、心が動くのが見て取れます。
国語に特に好意的感情を持たない場合のお子さんだと、ノートは苦行とまではいかなくとも、無駄・義務としてイメージされています。

子どもの無意識のイメージとはなかなかやっかいでして、結構手ごわい。
そのイメージを払しょくして必然性・重要性を理解させるのは、至難の業。
第一、 それがたやすくできるならば、世のお子さんのほとんどは自ら学習しますよね。
ボキャブラリーノートの作成は、
強制作業。 受け身の作業。 指示待ち作業。
でもそれでいいのです。
大事な言葉を残していく、義理だろうと義務だろうと、はたまた強制であろうと、出会った言葉を書きとめていく。
そして一週間に一回、ノートの見返しをさせ、あいまいなところは再度辞書を引かせる、質問させる、例文を作らせる。
どうなるでしょうか?
受験が近づくとこれが活きてきます。
さあ、国語で過去問がとれない、思ったより言葉の意味が問われる、どうしよう、となったときに、せめてこのノートに書かれたことは覚えてしまおう、と思う。
お尻に火がつくとわらにもすがりたくなる。
このノートはわらよりよほど役立つ丸太です。
印刷ではない、生の字で書かれた情報は頭に入ります。
しかも、過去テストやテキスト、授業内で出てきたいわば「よく出るハズの実戦型」語彙集・・・。一度覚えようとしたものだから、確実に覚えるのに時間はかからない。
たとえ、ノートが10ページにも満たなくとも、密度は濃い。(10ページでも100語近くになります。)即戦力となるのです。

春野流 語彙の増やし方

        1. 家庭学習で・・・文章を読む際、意味があいまいな語に○をつける。読み終わった後に、前後の文脈から意味を類推。その後、辞書を引いてみる。正しい意味を○をつけた語彙の横に書き入れる。設問にとりかかる。
        2. ② ボキャブラリーノートを作る。 授業、テキスト、テストで出会った意味のわからない大事そうな語を書き出し、意味を類推してから辞書を引き、意味を書き入れる。 できたら例文を作って書きこむ。一日数語でOK。 ただし、毎日続けること。 一週間単位で見返すこと。

私の提案はいつもコレ。大事なコトほど、地道に持続。ちりも積もれば山となる。
一つ一つは小さなエネルギーでも集まれば最強の敵でも倒せてしまう・・・積み重ねの力を信じましょう!

余談
例年、「先生、○○○校(の入試)で、これ(ボキャブラリーノート内の語)が出た!」という声を聞きます。嬉しい限りです。
(「でも思い出せなかった~ア! あそこ、あそこに書いた!ってわかってたんだけどねえ・・・」 というオチがつくこともしばしば・・・いいのですよ。 まったく知らない語ではないことがわかれば、文脈類推も自信をもってできるのですから。)

春野 陽子のプロフィール

日能研国語講師として、昨年度までの約10年間、主に6年生の中学受験指導を担当。
その間、長男(SAPIX)、次男(日能研→SAPIX→市進)の中学受験を体験。
2012年度から中学受験個別指導塾ドクターの株式会社ドクターに非常勤講師として勤務。

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